部分入れ歯は、一部の歯が残っている場合に欠損した歯や歯肉を補うために用いられる装置です。
使われている素材により、装着しているのが目立ちにくい部分入れ歯もあり、治療の選択肢が増えてきています。
年齢に関係なく若い方でも、健康な歯が残っている場合に部分入れ歯を使用した治療が可能です。
この記事では、部分入れ歯のメリットや目立ちにくい部分入れ歯について解説します。部分入れ歯が気になっている方はぜひ最後までご覧ください。
部分入れ歯は若い人も使っている?
入れ歯と聞くと、年配の方が使うものというイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。
しかし、部分入れ歯は、若い世代の多くの方にも利用されています。若い方が入れ歯を使う理由は、事故・転倒・むし歯・歯周病などが挙げられます。
一本だけ歯がない場合から一本しか歯が残っていない場合まで、歯が一本残っていれば部分入れ歯で治療が可能です。
年齢に関係なく健康な歯が残っている場合には、欠損した歯を補う治療法として、部分入れ歯も1つの選択肢です。
部分入れ歯は、決して恥ずかしいものではありません。お口の健康を守るためには、大切な治療の1つです。
歯の欠損を放置すると歯並びが悪化し、周囲の歯に負担がかかります。また、噛み合わせや発音にも悪影響がおよびます。
早い段階から部分入れ歯を使用すると、将来起こりうるお口のトラブルを未然に予防し、健康な生活を送れるでしょう。
部分入れ歯のメリット
部分入れ歯は、失われた歯を補うために用いられる治療法のひとつです。
見た目を改善するだけではなく、噛む力を取り戻せるため、日常生活の質の向上や口腔内の健康維持にも役立ちます。
さらに、取り外しができるため、メンテナンスしやすいという特徴もあります。ここでは、部分入れ歯の4つのメリットを詳しくみていきましょう。
治療期間が短い
部分入れ歯の治療は、ほかの補綴治療に比べると短期間で完了するのが一般的です。
インプラント治療では、骨と結合させるために歯茎に土台を埋め込む外科的処置を行うため、インプラントを装着するまでに一定の期間が必要です。そのため、治療が完了するまで約3ヵ月~1年と長くなる場合がほとんどです。
部分入れ歯の場合は残っている歯や歯茎の状態により異なりますが、抜歯や型取りを行った後、部分入れ歯の作成を行います。作成には時間がかからないため短期間での装着も可能です。
保険適用の部分入れ歯は、通院が約4回程で平均1~2週間で治療が終了します。自由診療の場合は、噛み合わせや装着感などを何度も行い調整するため、治療終了まで平均5週間程かかる場合が多いです。
抜歯した場合でも、すぐに入れ歯の作成ができるため、早い段階で食事をしたり会話したりという日常生活を取り戻せます。
治療期間を短くしたい・早く自分の歯で食事がしたい・見た目を早く改善したいという方は、部分入れ歯を検討してみるとよいでしょう。
費用が安い
部分入れ歯は、インプラントやブリッジなどのほかの歯科補綴方法に比べると費用が抑えられます。
インプラントやブリッジは自費診療となる場合が多いのに対し、部分入れ歯は保険適用になる種類があります。
詳しい費用は後述しますが、保険適用の場合は3割負担で5,000円~15,000円(税込)程度です。
一度に多くの歯を失った場合には、まずは入れ歯を選択すると費用を抑えながら日常生活の質を向上させられるでしょう。
また、修理や調整がしやすいため、長期的なメンテナンスにかかるコストも抑えられるのがメリットです。
経済的負担を抑えながらお口の健康を回復させたい場合には、部分入れ歯を検討するとよいでしょう。
外科的手術が必要ない
先述しましたが、部分入れ歯を装着するためには、インプラントのような外科的手術を受ける必要がありません。
手術による痛みやダウンタイムがないため、身体に与える負担が少ない点はメリットです。
ブリッジや補綴治療では、周囲の健康な歯を削る必要がありますが、部分入れ歯ではその必要がなく、残っている歯を自然なままにでき余計な負担をかけずに治療できます。
また、手術が困難な高齢者や健康状態に問題がある方にとって、部分入れ歯は適している治療法です。
できるだけ身体への負担が少ない治療を受けたい方は、部分入れ歯を選択するとよいでしょう。
歯磨きがしやすい
部分入れ歯は、取り外しができるため歯磨きがしやすく、口腔内を清潔に保ちやすいことがメリットです。
部分入れ歯を固定するクラスプは、接している歯との間に汚れが溜まりやすいため、健康な歯がむし歯になったり歯周病になったりする可能性が高くなります。
毎日の歯磨きの際に入れ歯を外して洗浄できるので、汚れが溜まるのを防ぎ、口腔内環境の清潔を保ち周囲の歯や歯茎の健康維持につながります。
部分入れ歯自体も歯ブラシで洗え、また付け置き洗浄剤を利用すれば手軽に洗浄可能です。
部分入れ歯のデメリット
部分入れ歯は、費用やメンテナンスがしやすいなどのメリットがある一方、デメリットもあります。
治療を選択する際には、デメリットがあることも理解しご自身に合った治療法であるか考慮することが大切です。
ここでは、部分入れ歯のデメリット3つを詳しく解説します。
金具(バネ)が目立つ
部分入れ歯は、残っている健康な歯に金具(クラスプ)で固定します。そのため、笑ったりお口を開けて会話をしたりするときに、金属部分が見えてしまう場合があるでしょう。
特に、前歯の近くに金具がかかっている場合には、金属が見えてしまい見た目が気になる可能性があります。
審美性が気になる方は、ほかの治療法を検討してみるとよいでしょう。
噛み心地の違和感
部分入れ歯は、天然歯と比べると噛み心地に違和感を覚える場合があります。
特に部分入れ歯を装着した直後は、異物感や不快感があり、慣れるまでに時間がかかるかもしれません。
また、部分入れ歯の装着具合により噛む力が十分に伝わらず、食べ物が噛みにくいと感じる場合もあるでしょう。
お手入れの手間
部分入れ歯は、取り外しできるのがメリットである一方、取り外しをして毎日ケアする必要があります。
部分入れ歯を装着したままにしておくと装着部位に食べ物が残り、口腔内に細菌やプラークが蓄積され、むし歯や歯周病などを引き起こす可能性が高まります。
そのため、入れ歯自体を洗浄するのはもちろん、装着している歯茎や周囲の歯を常に清潔に保つことが大切です。
また、部分入れ歯を洗浄する際には、本体や金具を破損しないよう丁寧に扱う必要があります。
お手入れに手間がかかるため、負担に感じる場合もあるでしょう。
若い人も使いやすい目立ちにくい部分入れ歯とは
部分入れ歯は、金属のクラスプが目立つイメージがありますが、審美性に優れた種類もあります。
特に、ノンクラスプデンチャーやホワイトクラスプデンチャーは目立ちにくく自然な仕上がりになるため、若い方にも使いやすい部分入れ歯です。
ここでは、それぞれの特徴やメリットについて詳しく解説します。
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーとは、通常は金属でできているクラスプが歯茎と同色の樹脂でできている部分入れ歯です。
金属ではないクラスプがついているため、ばねが目立ちにくく見た目がきれいなのが特徴です。噛み合わせの制限が軽減され、金属アレルギーのリスクが解消されるというメリットがあります。
弾力性が高い特殊な樹脂やシリコンを使用し、歯茎や歯肉の色に合わせて土台を作成するため、自然な見た目と噛み心地を実現できます。
また、金属のクラスプだと固定する歯を傷つけるリスクがありましたが、ノンクラスプデンチャーはそのリスクが軽減されるため口腔内のトラブルを減らすことが可能です。
保険適用外のため、通常の部分入れ歯よりも費用がかかる点がデメリットでもあります。2〜3年の使用で徐々にゆるくなるため、調整や修理により長期間利用が可能です。
ホワイトクラスプデンチャー
ホワイトクラスプデンチャーとは、歯に固定する部分が歯の色と似ている白色のプラスチックでできている部分入れ歯です。
ノンクラスプデンチャーと同様、保険適用外になり、目立ちにくい入れ歯として選択されます。
入れ歯自体は、保険適用の入れ歯と同じプラスチックでできているため、装着時の違和感や噛みにくさを覚える場合があります。
ホワイトクラスプデンチャーにしたい場合、使用している部分入れ歯の金属のクラスプ部分をホワイトクラスプに取り替えることが可能です。
新しく作り直す必要がなく作成工程は短くなりますが、保険適用外となるため気になる方は費用について歯科医師に相談するとよいでしょう。
強度が弱いため修理が難しく、ゆるみが生じた場合は作成し直す必要があるため注意しましょう。
部分入れ歯の費用相場
部分入れ歯を作りたいけれども、費用がどのくらいかかるのか気になる方は多いのではないでしょうか。
欠損歯の本数や素材の選択によって、費用は変わってきます。
保険適用になるものと自由診療のものがあるため、予算やお口の状態に合わせて治療法を選択することが大切です。
ここでは保険適用の場合と自由診療の場合の費用相場を解説します。
保険適用の場合
保険適用の部分入れ歯は、主にプラスチック製です。治療期間も短めで、通院や治療にかかる費用も抑えられています。
保険適用の部分入れ歯の費用は、5,000~15,000円程で、初診料・レントゲン代・検査代などは別途必要です。
部分入れ歯は作って終わりではなく、使用していくうちに破損したり、緩んできたりするため、その都度メンテナンスが必要です。
修理や作り直しなどの対応に、受診料や作成費用がかかることも考慮しましょう。
自由診療の場合
自由診療で作成できる部分入れ歯には、前述したノンクラスプデンチャーやホワイトクラスプデンチャーのほかに、さまざまな種類があります。
- ノンクラスプデンチャー
- ホワイトクラスプデンチャー
- 金属床義歯
- シリコン義歯
- マグネットデンチャー
上記以外にも、歯科医院によって取り扱いがある部分入れ歯があります。
自由診療の部分入れ歯は、保険適用のプラスチック製のものよりも審美性に優れ、噛み心地に違和感が少ないなどのメリットがあります。
素材・歯の本数・義歯の設計により費用はさまざまです。そのため相場には幅がありますが、だいたい150,000~500,000円(税込)程です。
保険適用の部分入れ歯と同様に、初診料・検査代・レントゲン代・メンテナンス代などは別途かかる場合があります。
治療を始める前に、治療方法や総合的にかかる費用などについて歯科医師とよく相談し、選択するようにしましょう。
歯を失った場合の部分入れ歯以外の選択肢は?
失った歯を補う方法として、部分入れ歯以外の治療法はあるのでしょうか。
部分入れ歯は取り外しが可能ですが、固定式のブリッジやインプラントという治療法もあります。
ここでは、ブリッジとインプラントの特徴を解説します。治療法の選択をする際の参考にしてください。
ブリッジ
ブリッジとは、欠損した隣にある左右の健康な歯を削り、人工歯を装着する方法です。健康な歯を支柱にして、橋をかけるようにして人工歯を設置します。
義歯を固定するため装着する違和感が少なく、金属のクラスプがついていないタイプを選択すれば目立ちにくく自然な見た目にできるでしょう。
人工歯を支える健康な歯に負担がかかるため、歯の寿命を縮めてしまう可能性がある点や、ブリッジの設置場所により空気がもれることで発音しにくくなる点がデメリットとして挙げられます。
欠損した歯の本数・土台となる歯が健康であるか・ブリッジの素材をどれにするかにより、保険適用で治療できる場合があります。
お口の状態によりブリッジによる治療ができない場合があるため、歯科医師とよく相談しましょう。
インプラント
インプラントとは、顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。
土台がしっかりするため、自然な噛み心地と長い期間使用できる点がメリットとして挙げられます。
治療には外科的手術が必要となり、身体に負担がかかります。また、治療期間も3ヵ月~1年くらい時間が必要です。
インプラントは自費診療のみで、治療工程が複雑であるため費用がかかります。初診料・検査代などのほかに、追加で手術が必要になる場合もあります。
インプラントの1本あたりの費用相場は300,000~500,000円(税込)程です。インプラントの素材や本数などにより、費用は大きく変わってきます。
メリット・デメリットを把握したうえで治療法を選択しましょう。
まとめ
部分入れ歯には、保険適用のものと自費診療のものがあります。
プラスチック製で金属のクラスプがついたタイプは保険適用で費用が抑えられる反面、装着した際に金属が見えてしまい、審美性に欠けてしまうのがデメリットです。
自費診療の部分入れ歯はクラスプを歯茎や歯に似た色で作成するため、装着したときに目立ちにくく、審美性を考慮したい方に適しています。
欠損した歯を補う治療法には、部分入れ歯以外にブリッジやインプラントがあります。
治療法の選択肢はありますが、残っている歯の状態や健康状態により、希望する治療法が受けられない場合があるかもしれません。
歯科医師とよく相談し納得したうえで、自分に適した治療を選択しましょう。
参考文献