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歯を失った高齢者が入れ歯を入れないとどうなる?入れ歯の役割や慣れるためのコツを徹底解説!

歯を失った高齢者が入れ歯を入れないとどうなる?入れ歯の役割や慣れるためのコツを徹底解説!

「歯がなくなると、食事が楽しめない…」そんな悩みを抱えている高齢者の方は多いのではないでしょうか。入れ歯は失われた歯の機能を補い、快適な食事や会話を取り戻すための大切なツールです。
しかし、入れ歯が合わなくなったり、違和感があったりするトラブルも少なくありません。

本記事では高齢者の方が入れ歯を入れないとどうなるのかについて、以下の点を中心にご紹介します。

  • 高齢者の方が入れ歯を入れないと起こりうるリスク
  • 入れ歯の使用感に慣れるためにできること
  • 入れ歯の種類について

高齢者の方が入れ歯を入れないとどうなるのかについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

噛むことによる効用

噛むことによる効用

歯を失ったときにまず問題となるのは、うまく噛めなくなることです。噛む動作には心身の健康にさまざまな効用があるとされており、公益財団法人8020推進財団は、ひみこの歯がいーぜという効用の頭文字を取った標語を使用し、以下の8つの効用を訴求しています。

  1. 肥満予防
    よく噛むことで満腹中枢が刺激され、食べすぎの予防を助けます。
  2. 味覚の発達
    しっかり噛むことで食べ物の味を十分に感じられ、味覚の発達を助けます。
  3. 言葉の発音がはっきり
    噛むことでお口の周りの筋肉が鍛えられ、表情の豊かさにつながり、発音も明瞭になるとされています。
  4. 脳の発達
    咀嚼運動は脳細胞を刺激し、子どもの知育に役立つだけでなく、高齢者の方は認知症予防にも効果が期待できます。
  5. 歯の病気を防ぐ
    噛むことで唾液の分泌が増え、むし歯や歯周病の予防に役立ちます。
  6. がん予防
    唾液に含まれる酵素が発癌物質を消す働きを持ち、がん予防に貢献します。
  7. 胃腸の働きを助ける
    よく噛むことで消化酵素が分泌され、消化がスムーズになり胃腸の負担が軽減されます。
  8. 全身の体力向上と全力投球
    噛みしめることで力が湧き、全身の体力向上にもつながります。

8つの効用により、噛むことは単なる食事の一部に留まらず、全身の健康を支える重要な役割を果たしています。

入れ歯の役割

入れ歯の役割

入れ歯は失った歯を補うだけでなく、咀嚼や嚥下、発音といったさまざまな機能をサポートし、生活の質を向上させる重要な役割を果たしています。

まず、入れ歯は咀嚼機能を回復し、食べ物が噛み砕けるようになります。咀嚼機能が改善すると消化酵素の働きにもつながり、消化や栄養吸収がスムーズになるため、誤嚥のリスクを軽減します。

次に、発音や会話の改善も効果が期待できます。歯を失うと発音が不明瞭になりやすいですが、入れ歯を使うことで歯・舌・唇のバランスが整い、明瞭な発音を取り戻せるとされています。

さらに、入れ歯は口腔内の健康維持にも役立ちます。歯がないままだと周囲の歯が移動してしまうケースがありますが、入れ歯はこれを防ぎ、顎の骨の変形も抑えます。

最後に、入れ歯を入れることで自然な笑顔を取り戻し、自信を持てるようになる可能性があるため、精神的な安定も得られるでしょう。

以上のように、入れ歯は単なる歯の代替品ではなく、全体的な健康と幸福感を支える大切な存在です。

高齢者が入れ歯を入れないとどうなるのか

高齢者が入れ歯を入れないとどうなるのか

ここまで噛むことの効用や、入れ歯がどのようなことに役立つのかを紹介しました。
それでは、入れ歯を入れなかった際に起こりうるリスクは何でしょうか。以下で解説します。

認知症のリスクが高まる

歯を失ったまま入れ歯を使わないと、認知症の発症リスクが約1.9倍に増加するといわれてます。噛む動作は脳を活性化させる重要な役割を持ち、噛む力が弱まると脳への刺激が減り、結果的に認知機能の衰えにつながりやすくなるからです。
また、うまく噛めなくなると食事が偏って栄養バランスが崩れ、身体全体の健康状態が悪化することも認知症リスクの一因となるとされています。

入れ歯を使用すると、たとえ歯がほとんどない方でも認知症の発症リスクを約4割抑える可能性があるとされています。
技術の進化により、現在では見た目や機能が自身の歯に近い入れ歯も増えています。高齢者の方だけでなく、40代前後で入れ歯に抵抗がある方も、歯を失っている場合は早めに入れ歯を検討し、噛める状態を維持することが大切です。

残っている歯の寿命が縮む

高齢者の方が入れ歯を使わずに歯を失った状態を放置すると、残っている歯も失ってしまうリスクが高まります。
歯を失った際、その部分の負担をほかの歯がカバーすることになるため、周囲の歯には大きな力がかかります。過剰な負担によって残存する歯が傷みやすくなり、結果として寿命が短くなってしまうのです。

全体の噛み合わせが乱れることで、咬合圧が一定の歯に集中し、健康だったはずの歯にまでダメージを与え、結果的にその寿命を縮めてしまいます。入れ歯の使用はこのような問題を防ぎ、残りの歯を長く健康に保つことにつながります。

歯並びが悪くなる

歯はそれぞれが均等に力を分散して機能し、互いに支え合って位置を保っています。歯を失ったまま放置すると、その力のバランスが崩れ、隣接する歯が空いたスペースに傾いたり、反対側の歯が伸びてきたりすることがあります。
バランスが崩れた状態が続くと噛み合わせのズレを引き起こし、歯並びを悪化させる要因となります。そして、歯並びが乱れると食べかすなどが挟まりやすくなり、むし歯や歯周病のリスクも増加します。

顔が変わる

歯を失った状態を続けると顔の形が変わり、老けた印象を与える原因にもつながります。歯は顔の輪郭を支える重要な役割を果たしており、なかでも前歯を失った場合、口元がくぼんでしわが増え、全体的にハリを失った顔立ちになりがちです。
また、奥歯を失うと頬や顎のラインが内側に寄り、顔の輪郭そのものが変形してしまう可能性があります。さらに、噛む力が弱くなることで顔の筋力も低下し、しわやたるみが増えやすくなり、実年齢以上に老けた印象を与えてしまうでしょう。

入れ歯を使うと、顔全体にハリを取り戻した顔立ちにつながります。入れ歯を入れない期間が長くなると歯茎が痩せ、さらに入れ歯が合わなくなりやすいため、早めに歯科医院で適切なケアを受けることが大切です。

身体のバランスが崩れる

噛む力は体全体のバランスを保つうえで重要な役割を果たしていますが、歯がなくなると咀嚼能力が低下し、なかでも奥歯の噛む力が不足すると、下顎が不安定になり体のバランスを取りにくくなります。その結果、入れ歯を使用しない高齢者の方は転倒するリスクが約2.5倍に増加するとされています。
また、歯並びの乱れや噛み合わせのズレが原因で顎関節症を引き起こし、さらには頭痛や肩こり、腰痛など全身の不調にもつながる場合があります。

以上のような影響を防ぐためにも、入れ歯を使用して噛み合わせを維持し、身体のバランスを保つことが大切です。入れ歯は全身の健康を守るためにも欠かせない存在です。

入れ歯に慣れるためには

入れ歯に慣れるためには

歯を失ったまま放置すると、さまざまなリスクが生じる可能性をみてきました。入れ歯は失った歯を補う選択肢となりますが、初めて使用する際は、慣れるまでに時間を要するでしょう。
以下では入れ歯に慣れるために行えることをご紹介します。

咀嚼と嚥下の練習をする

入れ歯に慣れるためには、咀嚼(噛むこと)と嚥下(飲み込むこと)の練習をすることが重要です。最初から本物の歯と同じ感覚で噛もうとすると違和感を感じやすく、ギャップに悩む場合も少なくありません。そのため、ゆっくりと練習を重ねることが必要です。

まずは、水を飲む練習から始めましょう。最初のうちはむせてしまうこともありますが、徐々に慣れていきます。
次に、やわらかい食べ物から噛む練習を始め、少しずつ硬めの食べ物に移行していくことで効果が期待できます。無理に硬いものを噛もうとすると顎を痛めてしまう可能性があるため、焦らず少しずつ進めることが大切です。

以上のような練習を通して、入れ歯に適応しやすくなり、日常生活へのスムーズな復帰へとつながるでしょう。

発音の練習をする

入れ歯を装着した際には、発音に違和感を覚える場合がありますが、これは異物に対する身体の自然な反応です。まずは、入れ歯をお口に馴染ませることが重要です。鏡の前で自身に向かって挨拶をしてみたり、発音しづらい言葉を繰り返し音読したりすることで、お口の動かし方を調整していきましょう。
なかでもサ行やタ行は発音が難しい場合が多いため、これらの音の練習を重点的に行うと、スムーズな会話につながります。
また、自身の声を録音して聞きながらトレーニングすると、発音の改善点を確認しやすくなります。こうした練習を続けることで、徐々に入れ歯への違和感が減り、自然な発音ができるようになるでしょう。

手入れをしっかりと行う

入れ歯に慣れるためには、毎日の手入れをしっかりと行うことも大切です。入れ歯も歯と同じように食べカスや歯垢が付着しやすいため、お手入れを怠ると細菌が繁殖し、口内トラブルの原因となります。
以下のポイントを押さえて、入れ歯を清潔に保ちましょう。

  • 食後の洗浄:食事後には入れ歯を取り外し、水でよくすすいで歯垢や食べカスを除去しましょう。熱すぎるお湯は変形の原因となるため避けてください。
  • 入れ歯の磨き方:入れ歯全体を歯間ブラシや専用ブラシで優しく磨き、細かな隙間まできれいにしましょう。洗浄液を使う場合も、洗浄後に水でしっかりすすいでから装着してください。
  • 保管方法:入れ歯を外した後は、入れ歯ケースに水を入れて保管しましょう。こうすることで変形を防ぎ、乾燥によるひび割れを防ぐことができます。

これらのお手入れを習慣化することで、入れ歯の寿命が延びるだけでなく、口内衛生を保てるようになり、快適な入れ歯生活につながります。

慣れるまで継続して使い続ける

継続して入れ歯を使い続けることは、入れ歯に慣れるための基本的なコツのひとつです。
最初の1週間程度は特に違和感を覚えるケースが多いとされていますが、1ヶ月程度経てばほとんど気にならなくなるといわれています。最初の段階で焦らず、入れ歯に対する感覚に慣れる時間を持ってみましょう。

まずは短時間から始めて、徐々に装着時間を延ばしていくと無理のない適応につながります。慣れないうちは無理をせず、食事や会話以外の時間に少しずつつけることで、違和感を減らしていくことにつながります。
また、入れ歯の付け外しを繰り返し行い、お口のなかでの存在感に慣れるよう心がけましょう。しかし、無理な力を加えると入れ歯が変形する恐れがありますので、慎重に行いましょう

ただし、痛みを無理に我慢して使い続けると、歯茎や粘膜を傷つける可能性があります。そうすると口内環境を悪化させるだけではなく、入れ歯に対してネガティブな印象を抱く原因にもなります。その結果、入れ歯を使うこと自体が嫌になってしまう場合もあるので、注意が必要です。
痛みを感じた場合は無理をせず、医師への相談を行い、歯茎の傷が治ってから再度装着するようにしましょう。時間をかけて入れ歯を使い続けることで、自然と生活に馴染んでいきます。

自費の入れ歯と保険の入れ歯の違い

自費の入れ歯と保険の入れ歯の違い

入れ歯の種類にはいくつかの選択肢がありますが、自費と保険適用の入れ歯で、メリットとデメリットは異なります。

自費の入れ歯

自費の入れ歯は素材や製作方法を自由に選択できるため、自身のお口に合った入れ歯を作れる可能性が高い特徴があります。また、ほかのメリットに、耐久性やフィット感が期待でき、違和感が少ない点も挙げられます。

自費の入れ歯は、製作工程が丁寧で精密な傾向があるため、口内にしっかりとフィットし、装着時の不快感を軽減します。例えば、金属床義歯を選んだ場合は入れ歯が薄く仕上がり、食べ物や飲み物の温度を感じやすく、食事をより楽しめるでしょう。
見た目の美しさにもこだわりたい方には、留め具がないノンクラスプデンチャーなども選択肢のひとつとして、自然な仕上がりが期待できます。

しかし、自費の入れ歯は費用が高く、素材によっては修理が難しいケースもあるため、事前にしっかり説明を受けることが大切です。費用はかかるものの、耐久性や審美性、機能性を重視したい方は、長期的に満足のいく選択のために、自費の入れ歯を検討してみてはいかがでしょうか。

保険の入れ歯

保険の入れ歯は、健康保険の対象となるため費用が安く、短期間で製作できるというメリットがあります。構造がシンプルで、万が一不具合が生じた際にも修理が簡単に行える点も魅力です。

しかし、デメリットとして使用できる素材がレジン(プラスチック樹脂)に限定されているため、強度が低く壊れやすい傾向があります。
また、強度を確保するために厚みを持たせて作ることが多く、装着時に口内で違和感を覚えやすくなる場合があり、食べ物や飲み物の温度を感じにくく、食事を楽しみにくいこともあります。
さらに、部分入れ歯の場合は金属の留め具を使用するため、見た目に入れ歯だとわかりやすく、審美性に欠けるという点もデメリットのひとつです。

保険の入れ歯は費用を抑えられる反面、快適性や自然な見た目を求める方には向かない選択肢といえるでしょう。

まとめ

まとめ

ここまで高齢者の方が入れ歯を入れないとどうなるのかについてお伝えしてきました。高齢者の方が入れ歯を入れないとどうなるのかについての要点をまとめると以下のとおりです。

  • 高齢者の方が入れ歯を入れないと、認知症リスクが高まったり、残っている歯の寿命を縮めたりするほか、噛み合わせが悪くなる可能性もある
  • 入れ歯の使用感に慣れるためには、無理のない範囲で徐々に入れ歯を使用する時間を増やし、入れ歯を付けた状態で食事や発音の練習を行うことが重要である
  • 入れ歯には自費で作れるものと、保険が適用されるものがあり、それぞれにメリット・デメリットが存在する

高齢者の方に限らず、歯を失った際に入れ歯を使用することは、お口や体全体の健康につながります。
入れ歯が選択肢のひとつになるよう、これらの情報が皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

長崎大学歯学部卒業 愛知学院大学大学院歯学研究科修了 愛知学院大学歯学部歯周病学講座講師(2020年3月まで) 愛知学院大学歯学部歯周病学講座非常勤講師 ひしかわ歯科 院長

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