鏡を見てみたら、前歯にむし歯のようなものができている…でも、痛みがないから大丈夫だろうと、放置したりしていませんか?むし歯は放置しておいても自然と治ることはなく、早めの検査と治療、そして繰り返さないための適切なケアが大切です。
の記事では、むし歯の治療や予防法などについて、詳しくご紹介します。
むし歯の症状について
前歯に対してむし歯のような症状が見えても痛みがないと、歯科医院にいっても意味がないのでは?と考えてしまう方もいるかもしれません。
し歯は自覚症状が現れにくく、痛みなどが現れたときはすでにかなり症状が進行している状態なので、むしろこうした早めの状態で診察を受けることが大切です。
ずは、むし歯の症状がどのように進行していくかについてご紹介します。
初期のむし歯の症状
むし歯は、歯の表面から内側に向かって進行していきます。
は外側からエナメル層、象牙質、歯髄という構造になっていますが、初期段階ではまだこのエナメル層が溶かされていく段階です。
ナメル層は生きた細胞がなく、神経も通っていないので、溶かされても痛みを感じることはありません。そのため、初期のむし歯には自覚症状もなく、気が付かないまま進んでいくケースが多いといえます。
なお、初期段階では歯の表面が小さく凹んでいるような状態であり、黒く変色するというような変化もないため、例え見えやすい前歯にむし歯ができていても、気が付かない可能性があります。
中程度のむし歯の症状
むし歯が進行していくと、歯の表面であるエナメル質を貫通し、象牙質という部分に感染が広がります。
牙質はエナメル質と比べてやわらかい性質で、ここまで進行するとむし歯の進み方は早くなっていきます。
期段階では変色なども起こりませんが、象牙質にむし歯が到達すると、色素沈着によって歯が黒や茶色に変化して見えるようになります。
た、冷たいものや甘いものをお口に含むとしみるような痛みを感じることがあります。
重度のむし歯の症状
象牙質よりも内側の、歯髄と呼ばれる歯の神経や血管が通る場所にむし歯が到達すると、神経が炎症を引き起こし、強い痛みを感じるようになります。
程度のむし歯の痛みは冷たいものなどをお口に含んだときだけの痛みですが、重度のむし歯ではズキズキとした痛みが継続的に引き起こされます。
この状態でも治療をせずに放置しておくと、やがては神経が死ぬため、痛みがおさまるタイミングが訪れます。
かし、感染が解消されたわけではないため、炎症によって膿が歯茎に蓄積され、この膿によって歯茎が圧迫されると、再度強い痛みが生じることがあります。
合によっては周囲の歯に感染が広がり、再度むし歯が進行していくことで、痛みが繰り返されていきます。
た、細菌が血管を通じて心臓などに広がった場合は、命に関わる症状となる場合もあります。
むし歯の治療法
むし歯の治療は、下記のような方法にて行われます。
状の程度によっても治療方法が異なり、重症になる程大がかりな治療が必要になるため、なるべく早めに治療を受けることが大切です。
感染部位を削る治療が基本
むし歯を殺菌作用の強い薬を使用して改善する治療もありますが、むし歯治療は感染部位を物理的に削って、感染を解消するという方法が基本です。
れは、むし歯の原因となる菌が人の口腔内にもともと存在する常在菌であり、むし歯の原因菌だけを薬で除去することが難しいといった点が理由となります。
し歯に感染している部分をすべて削り取ってしまえば、それ以上に症状が進行していくことはなくなります。
削る量が少ない場合はコンポジットレジンの充填で対応
むし歯の治療は歯を削って行いますが、感染部位を削った後そのまま放置しておくと、歯の内部に菌が付着して、再度むし歯が進行してしまいます。
た、歯を削るとその部分が脆くなってしまいますので、それを防ぐために、さまざまな方法で削った箇所の補填が行われます。
歯を削る量が少ない場合の補填に使用される治療法がコンポジットレジンで、これは特殊な光を当てると硬化する歯科用レジンを塗り、削った場所を埋めるという方法です。
ンポジットレジンは歯の色に合わせてさまざまなものが用意されているため、前歯のように人から見えやすい部位でも、目立たせることなく治療が可能です。
た、コンポジットレジンの治療はむし歯を削った後、その場ですぐに行えるという点がメリットとなっています。
中程度のむし歯はインレーやクラウンが必要
むし歯の治療で削る量が多い場合、コンポジットレジンだけでは十分に補修が行えず、インレーやクラウンによる治療が行われます。
ンレーは削った形に合わせて作られる詰め物で、クラウンは治療を行う歯を土台として成型し、その上に被せるように作られる被せ物です。
お、前歯の場合はインレーの治療が行われることは稀です。
重度のむし歯には根管治療
むし歯が神経にまで到達してしまっている場合、痛みを解消するためには歯の神経を取り除く治療が必要となります。歯の神経を除去する際には、歯の根っこ部分にある根管の内部までキレイにしていくため、根管治療と呼ばれます。
管治療を行うと、神経がなくなるため痛みはすぐに解消されますが、歯が血管を通じて栄養を補給できなくなるため、脆くなってしまうといったデメリットがあります。
抜歯が必要な場合もある
むし歯の状態がひどく、根管治療をして残しても適切な噛み合わせを回復できないという場合や、ほかの歯への影響が懸念される場合には、根管治療ではなく抜歯が行われることもあります。
歯をすれば当然むし歯による痛みは解消されますが、被せ物などの治療が行えなくなり、治療の選択肢が狭まってしまいます。
歯がなくなってしまったときの治療法
やむを得ず抜歯が必要となった場合には、歯がなくなった部分を補うための治療が必要となります。
体的には、任意につけ外しが可能な入れ歯の作成や、隣接する歯を使用して固定を行うブリッジ、または人工歯根を埋め込み、そこに人工の歯を被せるインプラントなどが該当します。
お、歯牙移植といってほかの歯を移植させる治療もありますが、これは親知らずなどの使用しない歯を移植して使用するケースが多く、前歯の治療で行われるケースはあまり考えられません。
保険適用で行える前歯の治療
歯科治療には、保険適用で行えるものと、自費診療で行えるものがあります。
歯の治療で受けることができる、保険適用の治療法は下記のようなものがあります。
コンポジットレジン充填法
むし歯がある場所を削り、その穴をコンポジットレジンによって埋める治療法です。
かの治療法は大半が何度か通院して治療を受ける必要があるのに対し、その場ですぐに治療が完了できるという手軽さがメリットとなっています。
た、歯の色に合わせて調整が行えるため、前歯のような目立つ部位でも自然な治療を行うことができます。
だし、コンポジットレジンは強度が高くはないため、治療範囲が広い場合には適していません。
硬質レジン前装冠
金属でできたフレームに、歯科用レジンで作った白い歯を張り付けたクラウンが、硬質レジン前装冠と呼ばれるものです。
し歯を削って、被せ物の治療を行う際の一つの選択肢となります。
質レジン前装冠は前面が白いため、銀歯と比べて使用時の不自然さが少なく、一方でフレームが金属素材であるため頑丈で長く使いやすいという特徴があります。
だし、歯科用レジンは長く使用すると光沢が失われたり変色するため、長期的には見た目の劣化などが起こりやすく、自費診療で作るセラミックの歯と比べれば審美性に劣ります。
硬質レジンジャケット冠
硬質レジン前装冠が金属のフレームにレジンの白い歯を張り付けた構造であるのに対し、硬質レジンジャケット冠は歯の全体が歯科用レジンで作られたものです。
属フレームがないため歯の裏側などが見えても見た目の不自然さが少なく、金属アレルギーの方でも利用できる点がメリットです。
お、歯科用レジンで作った歯は自費診療のセラミックで作った歯と比べると強度が落ちるため、強い力がかかる部分には不向きです。
のため、硬質レジンを使用した歯は主に前歯のみが保険適用の対象となっています。
CAD/CAM冠
コンピューターによって設計と作成の補助が行われるものがCAD/CAM冠と呼ばれるクラウンです。
来のクラウンはシリコンなどで印象(歯型)を取り、模型を作ってから歯科技工士が手作業で作成していましたが、CAD/CAM冠は口腔内スキャナーなどで歯型のデータを作成し、コンピューター上で設計を行います。
た、作成自体もミリングマシンという歯科材料をコンピューター制御で削りだす装置を使用して形を作るため、スピーディにクラウンが作れることが特徴となっています。
CAD/CAM冠のなかでも、ハイブリッドセラミックというセラミック素材と歯科用レジンをかけ合わせて作られた素材の歯が保険適用となっています。
銀歯治療
金銀パラジウム合金など、銀色の素材を使用して作成するクラウンを使用する治療が、いわゆる銀歯と呼ばれている治療です。
歯は金属素材であるため、強い力をかけても破損する可能性が低く、長期にわたって安定した使用感が得やすいというメリットがあります。
方でどうしても目立ちやすいため、口元に不自然さが生じてしまう点や、金属アレルギーの方は治療を受けられない場合があるといった点がデメリットの治療です。
歯で行われる治療には詰め物やクラウンのほかにもブリッジなどがあります。
部分入れ歯
むし歯の進行などによって、抜歯が必要となった場合は部分入れ歯での治療が行われます。
れ歯は自分でつけ外しが可能な義歯で、食事の際など必要なタイミングではめ込んで使うことができます。
歯がなくなってしまうと噛み合わせだけではなく発音にも影響が出やすいため、部分入れ歯を使用することで会話がしやすくなるといったメリットもあります。
ブリッジ
歯がなくなってしまったところの両隣にある歯を土台にして、歯が数本つながったような形状の義歯を、橋をかけるように固定する治療がブリッジです。
れ歯と違い自分でつけ外しはできませんが、その分しっかりと固定されるため強めの噛み心地が実現できます。
険適用で治療を行う場合は金属のフレームにレジンを張り付けたタイプが利用可能で、連続して2本(前歯の場合は4本)までの歯が欠損している場合に治療を受けることができます。
自費診療で行える前歯の治療
保険適用では利用可能な治療法がある程度制限されますが、自費診療であればこのほかにもさまざまな治療法が利用可能です。
費診療で行われる前歯の治療法についていくつかご紹介します。
ダイレクトボンディング
ダイレクトボンディングは、レジンとセラミックをかけあわせたハイブリッドセラミックの充填剤を、歯に直接塗布して固めるという治療法です。
本的な治療の特徴としてはコンポジットレジンによる治療と同じですが、使用する素材がハイブリッドセラミックになるため、審美性や強度の向上が期待できます。
ンポジットレジンと同様、むし歯の治療のほか、前歯の歯の隙間が気になるという方の審美目的での治療などにも利用されます。
セラミックによる治療
自費診療の場合、むし歯を削った後に被せるクラウンとして、セラミックの素材を使用した治療を行うことが可能です。
ラミックは自然な白さや透明感を実現可能な素材であり、さらに強度も高いという特徴があるため、セラミックを使用することで天然の歯に近い見た目の丈夫な人工歯を手に入れることが可能となります。
インプラント治療
歯の欠損に対し、天然の歯と近い構造の歯を入れる治療がインプラントです。
ンプラントは歯槽骨という歯を支えている骨に対して、チタンなどで作られた人工歯根を埋め込み、そこにセラミックなどの白い歯を被せるという治療法です。
れ歯やブリッジと異なり、骨に対してしっかりと固定されるため、天然の歯と同じような使用感をえることができます。
美性も高く、ほかの歯と比べても遜色ない治療が可能であるため、前歯の治療法として適しています。
前歯のむし歯を予防するために
むし歯になってしまったら早く治療をすることが大切ですが、むし歯にならないように予防することはもっと大切です。
に、前歯は見た目の印象にも大きく関わるため、少しでも歯を削って治療をすると治療の後が目立ってしまいやすく、むし歯にならないための予防がより重要になるといえます。
し歯予防のポイントは下記のとおりです。
歯磨きをしっかりと行う
むし歯予防の基本は、やはり適切な歯磨きです。
ラークは粘着質であるため除去しにくく、歯の一本一本を丁寧に磨いてしっかりと落とす必要があります。
べ残しが歯垢になる前に除去した方がよいので、食事をしたらすぐに歯を磨くように心がけましょう。
お、歯磨きの正しい方法は人それぞれの歯並びなどによっても異なるため、一度歯科医院で診察を受けて、自分の歯にあった磨き方の指導を受けるとよいでしょう。
歯間ブラシやフロスを使用する
むし歯は、歯の表面や裏側よりも、歯と歯の隙間から発生することが多い症状です。
と歯の間は歯ブラシだけではどうしても磨き残しやすくなりますので、歯間ブラシやフロスをしっかり利用することが、むし歯予防のポイントとなります。
間ブラシは太さや形状などさまざまな種類がありますので、自分にあったものを使用することが大切です。ただし、自己判断が難しいものでもありますので、まずは歯科医院で相談してみるようにしましょう。
歯科医院での定期健診を受ける
どれだけ歯のケアを頑張っていても、歯垢が残ってしまう場合があり、また歯垢が歯石になっていると、歯磨きでは除去できなくなってしまいます。
のため、しっかり歯を健康な状態に保つためには、数ヶ月に一度、歯科医院での定期健診を受けることが大切です。
科検診では歯のトラブルがないかを確認するだけではなく、専門的なクリーニングによって歯の細かい部分まで清潔に掃除をしてもらうことができます。
まとめ
むし歯はなかなか自覚症状も出にくく、気が付いたらかなり進行してしまっているということも多い症状です。
し歯は早めに治療をすることが重要であり、治療が早い程不自然になってしまう治療も受けなくて済む可能性が高くなるため、特に前歯のように見た目が気になる箇所については、早めに歯科医院での診察を受けることが大切です。
参考文献