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歯の神経の治療とは?進行したむし歯の治療で行われる抜髄や根管治療と神経を残す治療法

歯の神経の治療とは?進行したむし歯の治療で行われる抜髄や根管治療と神経を残す治療法

むし歯が進行してしまった場合、神経の治療が必要になる場合があります。歯の神経の治療を根管治療などと呼びますが、具体的にどのような治療が行われるのかや、治療によるメリット、デメリットなどについて解説いたします。

歯の構造について

歯の構造について

歯の神経の治療が必要な理由や、具体的にどのような治療が行われるのかを知るためにも、まずは歯の構造について確認しておきましょう。
は外側からエナメル質、象牙質、歯髄という構造になっていて、歯の根元にある神経や血管が通る管の部分を根管と呼びます。それぞれの特徴について解説します。

エナメル質

エナメル質は歯の一番表側にある部分で、普段私たちが目にしている歯はこのエナメル質の層です。
ナメル質はとても丈夫な性質で、人体のなかでも最も硬い組織となっています。エナメル質があるおかげで硬いものを噛むことが可能であり、冷たいものや熱いものなどを食べてもその刺激を感じずにいることができます。
な成分はカルシウムとリン酸であり、95%がミネラル、残りの4%が水分、そして1%がタンパク質で構成されています。
ナメル質は平均して2~3㎜程の厚さで、乳歯の場合は永久歯の半分程しか厚みがありません。 なお、エナメル質には生きている細胞が存在せず、代謝機能がありません。そのため、一度削られたりしてしまうと、自然にもとに戻ることはありません。
た、酸性のものが触れると脱灰といって歯が表面から溶かされてしまうため、口腔内の菌が作り出した酸によって、エナメル質に穴が空いてしまうことがあります。これがむし歯と呼ばれる状態です。
だし、エナメル質は唾液に含まれるカルシウムやリン酸を再び取り込むことである程度の修復が行われる再石灰化という働きがあるため、脱灰が促進されていない限りは歯の状態が保たれます。

象牙質

象牙質はエナメル質のすぐ下にある、歯の主成分ともいえる部分です。
牙質はやわらかい性質であり、適度な柔軟性があることで歯に加わった衝撃を吸収し、歯の破折を防ぐことが可能となっています。
牙質は70%がハイドロキシアパタイトで構成され、残りの30%はコラーゲンなどによって構成されています。 象牙質には無数の象牙細管という管があり、冷たいものなどが象牙質に触れると、この管をとおって歯の神経に刺激が伝わるため、しみるような痛みを感じます。これが知覚過敏の症状です。 なお、歯の色が人によって白かったり黄色かったりするのは、この象牙質の色が人によって異なるためです。
ナメル質は白や青みがかった半透明な材質であるため、内部にある象牙質の色で歯の色が変わります。
のため、歯の表面をいくら磨いても、象牙質の色が黄色い場合は歯が真っ白になるということはありません。
科医院では専用の薬剤によるホワイトニングが提供されている場合がありますが、これはエナメル質の内側にある象牙質の色を改善するものです。象牙質に働きかけるため、しみるような痛みを感じる場合もあります。

歯髄(歯の神経)

歯髄は、いわゆる歯の神経で、象牙質よりも深い位置にあります。
経のほか、血管やリンパ管がとおっていて、歯茎から栄養や酸素を受け取る役割もあります。歯髄が栄養を受け取ることで象牙質の細胞が代謝をおこし、歯の健康が守られる状態となっています。
た、神経がとおっているため外部からの刺激を受けると痛みなどを感じ、歯の異常に気が付くことができます。

根管

根管は、歯の根っこ部分の内側にある管のことで、歯の神経や血管がとおっています。
お、根管がある歯の根っこ部分は、表面がエナメル質ではなくセメント質という組織で覆われています。
メント質は通常であれば歯茎の内側のため露出することがなく、象牙質と同じような成分の組織となっています。
のため、歯周病などによって歯茎が下がってセメント質が露出してしまうと、刺激を感じやすくなって知覚過敏の症状が出たり、むし歯が進行しやすくなったりします。

歯の治療は早めの対応が必要な理由

歯の治療は早めの対応が必要な理由

歯の治療は、とにかく早めに行うことが大切とされています。
の理由については下記のとおりです。

削った歯はもとに戻らない

前述のとおり、エナメル質には生きた細胞が存在しないため、一度削られてしまうと歯が元の状態に自然と戻るということはありません。
し歯の治療は細菌に感染している部分を物理的に削って除去する方法によって行いますが、削った後は人工物で補填するしか対応ができないこととなります。
工物にも高品質なものはありますが、やはり天然の歯と比べると不自然になってしまったり、機能的に劣る部分があるため、できる限り天然の歯を残しておくことが、健康な口腔環境を維持するためには大切です。
の治療が早ければ削る範囲も小さく済みますが、時間が経って症状が進行すると削る範囲も大きくなってしまうため、なるべく早めに治療を受ける必要があります。

神経をとってしまうと歯が脆くなる

むし歯が神経にまで到達している場合、歯の神経を取り除く治療が行われることがありますが、神経つまり歯髄には血管なども通っていて、象牙質の状態を保つといった働きがあります。
のため、神経を取り除く治療をしてしまうと象牙質の状態が維持されなくなり、歯が衝撃に弱く、脆くなってしまいます。
の治療が早ければ、神経に到達する前に治療を行うことが可能となりますので、早めの対応が重要です。

抜歯してしまうと選択肢が狭まる

歯の根の先に膿が溜まっていたり、ほかの歯に影響が出てしまうなど、神経をとっても口腔環境を健康な状態に保てないと判断された場合、抜歯が必要となることがあります。
の治療には被せ物や入れ歯、インプラントなどさまざまな手法がありますが、被せ物やマグネットデンチャーなど一部の治療は残っている歯根が必要となるため、抜歯をすると治療の選択肢が狭まってしまうこととなります。
きる限り歯を残しておいた方が、費用面の負担が少なく、良好な噛み心地を実現する治療が行いやすくなりますので、治療の負担を大きくしないためにも早期治療が大切です。

歯の治療は何度も繰り返せない

歯は削ってしまうともとに戻らないため、何度も治療を繰り返すと、そのたびに少しずつ天然の歯が減少していき、最終的には抜歯以外の選択肢がない状態となってしまいます。
る範囲が大きいと治療が行える回数もより少なくなりますし、万が一トラブルが再発したときの選択肢も多く残せますので、歯の治療は早めに受けるようにしましょう。

歯の神経の治療である根管治療とは

歯の神経の治療である根管治療とは

むし歯が神経(歯髄)にまで到達してしまった場合に行われる治療の一つが、根管治療と呼ばれるものです。
管治療は、歯の根っこ部分にある神経や血管が通っている根管部分に対する治療をよぶ言葉で、一般的には根管部分にある神経を取り除き(抜髄)、根管にある感染部位を徹底的に除去、清掃したうえで、殺菌力のある薬品なども使用して除菌を行います。
管治療によって歯の内部に残る菌がいなくなったと確認されたら、根管内部に詰め物をして、後は被せ物などの治療へと移行します。

根管治療が必要となる歯の状態

根管治療は、歯の神経までむし歯が到達し、神経が感染を引き起こしているときに必要となる治療です。
に、むし歯の痛みがある程度続いているという状況では、神経への感染が根管など深い部分にまで到達している可能性があるため、根管治療が必要となります。
方で、神経まで到達していないむし歯については歯を削って被せ物などで覆う対応ですみますし、神経が感染していても、感染範囲が浅い場合は殺菌力のある薬などを使用することで治療が可能な場合もあります。

根管治療(抜髄)のメリット

根管治療のメリットの一つ目は、むし歯による痛みをすぐに解消できるという点です。
みを感じる歯の神経を除去してしまうため、治療を受ければすぐむし歯による痛みを取り除くことが可能です。
た、抜歯をせずに根管治療を行うことで、天然の歯の歯根を残せるため、被せ物などの治療が行えることもメリットの一つです。
を抜いてしまうと、天然の歯と同じような噛み心地が実現できる方法はインプラント治療くらいとなりますが、インプラント治療は経済的にも身体的にも負担が大きい治療です。
管治療で歯根を残して置けるのであれば、費用を抑えながらしっかりと噛める歯を実現しやすいといえるでしょう。

根管治療(抜髄)のデメリット

根管治療で自分の歯を残せるとはいっても、神経が取り除かれてしまうため、歯への栄養補給が行えなくなり、長期的には歯が脆くなって破折しやすくなります。
た、歯が変色して目立つようになってしまうこともあります。

歯の状態によっては抜歯が必要なケースもある

むし歯の進行状態によっては、根管治療で神経を除去しても症状がおさまらないと判断されたり、周囲の歯の健康にまで影響を及ぼしてしまうという可能性が考えられる場合があります。
の場合は、根管治療を行っても口腔内の健康を維持できないため、抜歯が選択されるケースもあります。

歯の神経を抜く治療の具体的な流れ

歯の神経を抜く治療は、まずは麻酔を行い、一般的なむし歯治療と同じように、細菌に感染している歯を削っていきます。
経が露出している部分まで削ったら、ファイルという専用の機器を使って根管内部の神経を除去し、感染部位をキレイにしていきます。
に、根管は細い管が複数ある状態となっているため、これらをまとめて大きな根管に成型する、根管拡大という対応を行います。
して、根管をまっすぐな状態にしたら、そこに殺菌力のある薬を詰めて蓋をして、1週間程その状態で様子を見ます。
度来院をして状態を確認し、炎症など菌の増殖が見られる場合には再度殺菌を繰り返していきます。そして、菌がなくなったと判断されたら、後は土台を形成して被せ物の治療へと移行していきます。

歯の神経を抜く治療を行った場合の具体的な変化

歯の神経を抜く治療を行った場合の具体的な変化

歯の神経を抜くと、下記のような歯の変化が引き起こされる可能性があります。

歯が脆くなる

上述のとおり、神経を抜く治療では同時に血管なども除去されてしまうため、象牙質の細胞に栄養が行きわたらなくなり、歯の柔軟性が失われます。
は象牙質の柔軟性によって割れにくくなっていますので、強い衝撃がかかった際に割れやすくなるなど、脆い歯となってしまいます。

変色が生じる

歯の色は、象牙質や歯髄の色が透過して見えているものです。
経を取ってしまうと象牙質の細胞が栄養を補給できなくなり、その内細胞が死んでいきます。
ると、死んだ細胞が黒く変色することがあり、これによって歯の色が黒く変色してしまう可能性があります。

痛みが感じられなくなる

むし歯の痛みが強いときはとにかく痛みをなくしたいと感じると思いますが、痛みは身体にとっての重要なシグナルで、痛みを実感できるからこそ、身体の異常に気が付くことができます。
経を除去する治療を行えば、当然痛みを感じにくくなりますので、万が一むし歯が再発するなどのトラブルがあってもなかなか気が付かず、症状が進行する可能性が高まります。

歯茎に膿がたまって腫れる

歯の神経を取り除くことで、歯自体の痛みはなくなりますが、一方で歯茎などには神経が通ったままです。
のため、歯の根部分で炎症が起きてできた膿が歯茎に蓄積されていくと、歯茎に強い腫れや痛みが生じる場合があります。

歯の神経の治療を成功させるために

歯の神経の治療を成功させるために

歯の神経の治療は、歯科診療のなかでも難しいものであり、根管治療は成功率が低い治療ともいわれています。
管治療の成功というのは、しっかりとすべての菌が除菌できて、再治療が必要のない状態を達成できるということです。そもそも口腔内にはむし歯の原因となる菌が沢山いるため、徹底した除菌という対応が難しいといえます。
経の治療の成功率を高めるためには、下記のようなポイントを気を付けるとよいでしょう。

設備が揃ったクリニックで治療を受ける

歯の治療の品質は、歯科医師の技術力に影響されることはもちろんですが、導入されている設備の影響も強くうけます。
密な検査を可能とする歯科用CTや、むし歯菌の状態を確認するための機器などを導入している歯科医院であれば、より詳細な検査のうえで、高品質な治療を受けやすいといえるでしょう。
た、拡大鏡ルーペやマイクロスコープといった器具を使用して治療を行っているところを選ぶと、より精密な治療が期待できるといえます。

ラバーダムなどを使用しているクリニックを選ぶ

根管治療によって神経を除去する場合、唾液などから菌が内部に入ってしまう可能性があるため、それを防ぐためにラバーダムといった器具が使用されます。
かい部分ではありますが、こうした対応をしっかりと行っているクリニックでの治療であれば、より成功率の高い治療が受けやすいといえるでしょう。

歯科医師の指示をしっかり守る

神経の治療の成功率をあげるためには、高品質な治療をうけるだけではなく、治療後の過ごし方なども気を付ける必要があります。
蓋をしている最中に硬い食べ物を食べるなど、NG行為をしてしまうと治療が適切に進められなくなってしまうので、歯科医師の指示をしっかり守って術後のケアを行うようにしましょう。

歯の神経を残す歯髄温存療法について

歯の神経を残す歯髄温存療法について

神経にまで到達したむし歯の治療では、神経を除去することで痛みを素早く改善できる一方で、上述のように神経を取り除くことによるデメリットも存在します。
の治療法のなかには、神経までむし歯が感染してしまっている場合でも、殺菌力の高い薬が配合されたセメントなどを使用することで、神経を残しながら治療する歯髄温存療法などもありますので、気になるかたは歯科医師に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

まとめ

むし歯が進行し、神経にまで到達してしまった場合には、抜歯をせずに痛みを取り除くため、神経を除去する根管治療が行われる場合があります。
かし、神経を除去する治療では、長期的には歯が脆くなってしまうなどのデメリットがあるため、現在は医学の進歩により歯髄を温存できる可能性のある治療方法が選択されることが増えてきています。
の神経を残す事ができれば、歯をより長く保存していくために有効と考えられますので、痛みがでないうちにむし歯を発見し、治療を受ける事をおすすめいたします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
大津 雄人歯科医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人歯科医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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