歯科治療において、セラミックの詰め物は、美しい見た目と耐久性の高さからさまざまな方に用いられています。しかし、何らかの要因によって、稀にセラミックの詰め物が割れてしまうことがあり、セラミックが割れた場合の適切な対処や原因を知ることで、トラブルを防げるでしょう。
本記事ではセラミックの詰め物が割れたときの対処法について以下の点を中心にご紹介します。
- セラミックの詰め物が割れたら自分で戻してもよいのか
- セラミックの詰め物が割れたときの対処法
- セラミックの詰め物が割れないように気をつけるポイント
セラミックの詰め物が割れたときの対処法について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
セラミック治療の種類
セラミックは、美しい見た目と耐久性の高さから、詰め物や被せ物に広く使用されている素材です。
ここでは、セラミック治療の種類について詳しく解説します。
ラミネートベニア
ラミネートベニアは、歯の表面を0.3〜0.5mm程度薄く削り、爪のような薄いセラミックを貼り付ける審美治療です。金属を使用しないため歯肉の変色が起きず、自然な仕上がりが特徴です。
この治療法は、前歯の色や形を整える際に行われている治療で、歯の変色やすき間(すきっ歯)の改善に選択されています。また、削る歯質が少なく、治療期間が短いことから、痛みや負担が少ないことが特徴です。
ただし、薄い素材のため強い衝撃に弱く、歯ぎしりなどで割れる可能性があるため、適切なケアが必要です。
ラミネートベニアは、歯の審美性を向上させたい方に選ばれている治療法です。
セラミックインレー
セラミックインレーは、むし歯や小さな欠損部分を補うために使用されるセラミック製の詰め物です。歯を削った後、その形状に合わせたセラミックを歯科技工士が精密に製作し、歯科医師が装着します。見た目が自然で、金属アレルギーの心配がないことが大きな特徴です。
この治療法は、軽度から中等度のむし歯治療に推奨されており、詰め物をした部分が目立ちにくく、歯の自然な美しさを維持できます。ただし、セラミックは衝撃に弱いため、強い噛みしめや硬い食べ物には注意が必要です。
セラミックインレーは見た目と機能性を両立したい方におすすめの治療法です。
オールセラミッククラウン
オールセラミッククラウンは、歯全体を削り、セラミックのみで作られた冠を被せる治療法です。
金属を一切使用しないため、自然な透明感や光沢があり、天然歯に近い美しい仕上がりが特徴です。
また、金属を使用しないため、金属アレルギーのリスクや歯茎の変色がないことも大きなメリットです。
現在では、強度を高めたセラミック素材も登場しており、機能性と美しさを兼ね備えた治療法として幅広い症例に対応しています。
セラミックの詰め物が割れたら自分で戻してもよい?
セラミックの詰め物や被せ物が割れた場合、ご自身でお口のなかに戻すのは避けてください。
また、自己判断で家庭用接着剤などを使用してしまうと、噛み合わせがずれたり、歯科医院で取り外しが困難になる可能性があります。
家庭用接着剤は口腔内使用を想定しておらず、健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。また、眠っている間に外れて誤飲する危険性も否めません。
セラミックの再装着には専門的な処置が必要ですので、セラミックの詰め物が割れたら、歯科医院を受診して適切な対応を受けましょう。
セラミックの詰め物が割れたときの対処法
セラミックの詰め物が割れたときには、どのように対処すればよいのでしょうか?
以下で詳しく解説します。
割れたセラミックを保管する
セラミックの詰め物が割れたり脱落した場合は、割れたセラミックを捨てずに保管しておくことが大切です。
歯科医院で診察を受ける際に、割れた部分を持参することで、修復が可能か判断できる場合があります。
そのため、保管する際は、清潔なティッシュや容器に入れるのが理想的です。可能であれば、乾燥を防ぐために少量の水を入れるとよいでしょう。また、割れたセラミックが尖っている場合は、触る際に怪我をしないよう注意してください。
割れた部分を保管することで、治療の選択肢が広がる場合もあるので、まずは歯科医院へ相談し、適切な処置を受けることをおすすめします。
できるだけ早く歯科医院を受診する
セラミックの詰め物が割れたり脱離した場合は、できるだけ早く歯科医院を受診することが重要です。
痛みや違和感がない場合でも、放置すると象牙質が露出している箇所からむし歯が進行しやすくなり、治療が難しくなる恐れがあります。
また、割れたセラミック部分が口内を傷つけるリスクもあるため、迅速な対応が求められます。
治療を受けた歯科医院に相談できる場合は、予約を取り状況を伝えましょう。もし相談が難しい場合は、お近くの歯科医院に”セラミックの詰め物が割れた”旨を伝え、適切な診察を受けることをおすすめします。
冷たいものや熱いものの飲食を控える
セラミックの詰め物が割れたり脱離した場合は、冷たいものや熱いものの飲食を控えるようにしましょう。
特に、土台の歯に神経が残っている場合、破損部分から刺激が伝わり、しみるような痛みを感じることがあります。また、過度に甘いものや辛いものも刺激となるため避けることをおすすめします。
治療を受けるまでの間は、痛みがない場合でも常温の飲み物や刺激の少ない食事を心がけることが大切です。
セラミックの詰め物が割れてしまう原因
セラミックの詰め物がなぜ割れてしまうのでしょうか?
原因として考えられる5つを、以下に詳しく解説します。
噛み合わせが悪い
セラミックの詰め物が割れてしまう原因の一つ目は、噛み合わせの悪さが挙げられます。
噛み合わせが適切でない場合、一箇所に過剰な力が加わることで、セラミックに負担がかかり、ひび割れや破損を引き起こすことがあります。
歯ぎしりや食いしばりなどの癖がある
セラミックの詰め物が割れてしまう原因の二つ目に、歯ぎしりや食いしばりなどの癖があることが挙げられます。
これらの行為は、食事時にかかる力をはるかに超える強い負荷を歯に与えるため、セラミックにひびが入ったり割れたりすることがあります。さらに、セラミックだけでなく天然歯にもダメージを与える可能性があるため注意が必要です。
また、夜間の歯ぎしりや食いしばりがあると、セラミックに継続的な負荷がかかり、寿命を縮める原因にもなります。噛み合わせの悪さは自覚しにくい場合が多いとされているため、歯科医院で定期的に検診を受け、噛み合わせのチェックや調整を行うことが重要です。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方には、ナイトガードの装着などの適切な予防措置を取ることで、セラミックの詰め物を保護し、長持ちさせられます。
接着剤が劣化している
セラミックの詰め物が割れてしまう原因の三つ目に、接着剤が劣化していることが挙げられます。
歯科用接着剤は耐久性があり、高い耐久性が期待できるとされていますが、セラミックと歯の境目に微細な隙間があると、唾液や食べ物の成分が徐々に侵入し、接着剤が劣化して接着力が低下する場合があります。
接着剤の劣化によって詰め物が動き始めると、噛む力の影響を受けやすくなり、結果的にセラミックが破損するリスクが高まります。
このようなトラブルを防ぐためには、定期的な歯科検診を受け、詰め物の状態や接着剤の劣化がないか確認することが大切です。
硬い食べ物を食べた
セラミックの詰め物が割れてしまう原因の四つ目に、硬い食べ物を食べたことが挙げられます。
セラミックは、強い衝撃には弱い性質があり、硬い食べ物を頻繁に食べることで、セラミックが欠けたり割れたりするリスクが高まります。
なかでも、ナッツ類や氷、固い飴などを噛む際に強い負荷がかかると、セラミックがダメージを受けやすくなります。また、歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合、セラミックに微細なヒビが入っていることがあり、硬い食べ物が引き金となって破損することもあります。
どうしても硬い食べ物を楽しみたい場合は、事前に歯科医師に相談し、セラミックを保護するための方法や対策を検討することをおすすめします。
大きな衝撃を受けた
セラミックの詰め物が割れてしまう原因の五つ目に、大きな衝撃を受けたことが挙げられます。
例えば、顔をぶつけたりボールがお口に当たるといった状況では、セラミックが外れる、または破損してしまうことがあります。先述しましたが、セラミックは耐久性がある一方で、衝撃には弱いため、このような外部からの強い力が加わるとダメージを受けやすくなります。
なかでも、前歯は外傷を受けやすい部位であり、場合によっては土台の歯ごと破折する可能性もあります。そのため、スポーツをする際は、マウスピースを使用するなどの対策を取り、衝撃による破損リスクを軽減することが大切です。
セラミックの詰め物が割れないように気をつけるポイント
上記では、セラミックの詰め物が割れる原因について解説しましたが、ここでは、セラミックの詰め物が割れないように気をつけるポイントについて解説します。
ナイトガードを使用する
セラミックの詰め物を割れないようにするためには、ナイトガードを使用するのがおすすめです。ナイトガードは就寝時に装着するマウスピースで、上下の歯の接触を防ぎ、噛む力を分散させることで、セラミックの破損リスクを軽減します。
また、顎関節症の予防や奥歯のすり減り防止にも効果が期待できます。ナイトガードは歯科医院で個別に製作でき、セラミック治療後のメンテナンスとして推奨されているため、歯の健康を守るためにも、使用することを検討しましょう。
定期的にメンテナンスを受ける
セラミックの詰め物を割れないようにするためには、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることが重要です。
メンテナンスでは、セラミックの状態や噛み合わせを細かくチェックし、異常がないかを早期に発見できます。また、むし歯の予防や歯石除去などのクリーニングを行うことで、セラミックだけでなく周囲の歯の健康も維持できます。
さらに、セラミック治療には保証が付いている場合があり、その保証を受ける条件として定期的なメンテナンスを受けていることが条件となっていることも少なくありません。保証期間内であればトラブル時に修理や交換対応が行われているため、トラブルが起こった場合に対処するためにも、定期的なメンテナンスを習慣にしておくことが大切です。
セラミックの詰め物が割れたときの修理にかかる費用
セラミックの詰め物が割れた場合、修理や再製作にかかる費用は、欠け方や歯科医院の方針によって異なります。
軽度の欠陥であれば、プラスチックなどを使用した応急的な修理ができるため、費用は3,000円〜5,000円程度が目安となります。ただし、セラミックとプラスチックはすべて接着しないため、修理が長期的な解決にならない場合もあります。
一方で、欠陥が大きい場合や応急処置では対処できない場合は、詰め物を再製作する必要があります。費用は使用する素材によりますが、セラミックの場合は3万円〜15万円程度かかります。
また、保証期間内であれば、条件を満たす限り無償または割引で再製作が可能なケースもあります。
保証内容は歯科医院ごとに異なり、定期健診を受けていない場合や患者さんの過失による破損は保証対象外となることもあるため、事前に確認しておくことが大切です。
まとめ
ここまでセラミックの詰め物が割れたときの対処法についてお伝えしてきました。セラミックの詰め物が割れたときの対処法の要点をまとめると以下のとおりです。
- セラミックの詰め物や被せ物が割れた場合、ご自身でお口のなかに戻すのは避け、治療を受けた歯科医院を受診しましょう
- セラミックの詰め物が割れた場合は、割れた部分を清潔に保管し、できるだけ早く歯科医院を受診することが推奨されるが、治療までの間は冷たいものや熱いものなど刺激の強い飲食物を控え、歯への負担を軽減することが大切
- セラミックの詰め物が割れないようにするには、必要に応じてナイトガードを使用したり定期的なメンテナンスを受けたりすることが推奨されている
セラミックの詰め物が割れたときに、どのような対処を行えばいいのか理解していただけたかと思います。
セラミックの詰め物が割れた場合は、適切な対処で修復が可能な場合もあるため、割れた部分を保管し、早急に歯科医院を受診しましょう。また、割れる原因を理解し、ナイトガードの使用や定期的なメンテナンスを心がけることで、セラミックを長持ちさせられます。
これらの情報が少しでもセラミックの詰め物が割れたときの対処法について知りたい方のお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。