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むし歯の再石灰化とは?再石灰化を促すセルフケア方法や歯科医院でのケア方法を解説

むし歯の再石灰化とは?再石灰化を促すセルフケア方法や歯科医院でのケア方法を解説

むし歯の予防や治療に関心のある方は、再石灰化(さいせっかいか)という言葉を耳にしたことがあるかと思います。市販の歯磨き粉にも記載されていますが、その意味を何となくでしか理解していない方もいるでしょう。歯の再石灰化は、むし歯を削らずに治せることもあるため、正しく理解したうえで、口腔ケアに取り入れるのが望ましいです。ここではそんな歯の再石灰化について詳しく解説します。

むし歯の再石灰化とは

むし歯の再石灰化とは むし歯の再石灰化とは、発生して間もないむし歯の進行を止められるものですが、まずは、再石灰化という現象について理解することから始めましょう。

◎歯の再石灰化について

歯はリンやカルシウムで構成されており、口腔内のpHによって溶けたり、元に戻ったりを繰り返しています。リン酸塩やカルシウムが酸の刺激によって溶け出す現象を脱灰(だっかい)と呼び、唾液による作用で元に戻る現象を再石灰化といいます。

普段は唾液の緩衝作用によって中性付近で落ち着いている口腔内では、再石灰化が起こりやすくなっているのですが、飲み物や食べ物を口にするとpHが酸性へと傾いて脱灰が起こります。こうした脱灰と再石灰化という2つの現象がお口のなかで絶えず起こっています。

◎むし歯も脱灰現象

むし歯は脱灰現象ということもできます。歯に感染したむし歯菌が作り出す酸によって、エナメル質と象牙質のミネラルが溶け出し穴があいていくのです。歯の再石灰化現象を効率よく起こすことができれば、むし歯の進行を止めることが可能です。発生して間もない初期う蝕(CO)には、フッ素を活用した再石灰化の促進によって治療することができます。

歯の再石灰化を促すためのセルフケア方法

歯の再石灰化を促すためのセルフケア方法 次に、自宅でのセルフケアにおいて、歯の再石灰化を促進する方法を解説します。以下に挙げる3つの方法を実践するだけでも、歯の再石灰化は起こりやすくなります。

唾液の分泌を促す

唾液には、歯の再石灰化を促す成分が含まれます。唾液に含まれるリン酸塩やカルシウムが歯の修復を促すため、分泌量が不足しないようにすることが大切です。普段から唾液の分泌量が少ない、あるいは口腔内が乾燥していると感じている方は、次のことを行ってみてください。

◎食事のときにたくさん噛む

食事のときの咀嚼回数が増える程、唾液腺が刺激されて唾液の分泌量も増えます。あまり噛まずに飲み込むことは、胃腸にも大きな負担がかかることから、毎日の食事はしっかりとたくさん噛むようにしましょう。

◎唾液腺マッサージを行う

唾液を分泌する唾液腺は、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)の3つに分けられます。これらを適切な方法でマッサージすることで、唾液の分泌量が促進されます。唾液腺マッサージの方法は、歯科医院でのメンテナンスで指導を受けられます。

◎口呼吸を改善する

口呼吸はお口のなかの乾燥を引き起こすことから、唾液による歯の石灰化作用を低下させる原因になります。口呼吸をしている人は、鼻呼吸に切り替えるよう努力しましょう。口呼吸はむし歯だけでなく、歯周病のリスクも高め、歯並びを悪くする原因にもなりえます。

◎キシリトールガムを噛む

キシリトールガムを噛むと、唾液の分泌量が増えます。キシリトールがむし歯菌の活動を抑制するといった効果が期待できるでしょう。フッ素入りのキシリトールガムも市販されるようになり、フッ素による効果も得られるようになっているため、食事をした後やお口が乾いていると感じたときに積極的に噛むようにするとよいです。

歯磨き習慣の見直し

◎歯磨き粉のフッ素濃度をについて

普段使っている歯磨き粉のフッ素濃度を確認しましょう。大人であれば、フッ素濃度が1500ppmに近い歯磨き粉を選ぶことで、フッ素による効果を引き上げることができます。5歳までの子どもに関しては、1000ppmを上限にフッ素入り歯磨き粉を選ぶようにしてください。この値は、日本小児歯科学会や日本口腔衛生学会が提案しているフッ素推奨濃度基準に則っています。

◎歯磨き後のうがいは1回

歯の再石灰化を促すという観点では、歯磨き後のうがいの仕方にも配慮が必要となります。歯磨きをした後のうがいは、ブクブクと強くたくさんの回数行った方がお口もきれいになりそうなものですが、実際はそうではありません。

正しい方法で歯磨きができていれば、歯磨き後のうがいは軽く1回行うだけでも十分です。強いうがいを繰り返し行うと、歯磨き粉に含まれているフッ素まで流れていってしまうため、その点も意識したうえでお口をゆすぐようにしてください。

食生活の改善

食事の内容や取り方によっても歯の再石灰化効果には違いがでます。乳製品や緑黄色野菜、魚介類にはリン酸やカルシウムが豊富に含まれていることから、習慣的に摂取していれば唾液の質もよくなることでしょう。

食事の取り方については、ご飯を食べている時間と回数、タイミングに気を配ることが大切です。長い時間をかけて食事するのは、口腔内のpHが酸性に傾いている時間も長くなるため、脱灰が進みやすくなります。

間食も含めた食事の回数が増えたり、眠る直前に食べものを食べたりすると、口腔衛生状態が悪くなりやすいです。食生活や習慣をしっかり管理することで、歯の再石灰化を促しやすくなります。

歯の再石灰化を促すために歯科医院で受けられるケア

歯の再石灰化を促すために歯科医院で受けられるケア 続いては、歯科医院で歯の再石灰化を促す方法について解説します。セルフケアだけでなく、専門家のケアも受けることで、歯の再石灰化を促す効果も高められます。

クリーニングによるプラークコントロール

セルフケアでは、フッ素入り歯磨き粉を使うことで歯の再石灰化を促すことができますが、歯面に汚れがついていると効果は減弱します。また、セルフケアだけでプラークを完全に除去できる人は少ないため、歯科医院でクリーニングを受けて、プラークフリーな状態を実現するのが望ましいです。

歯科衛生士によるクリーニングは、磨き残したプラークを一掃します。保険診療のメンテナンスでも歯のクリーニングは受けられますが、使用できる器材や診療にかけられる時間に制限がかかります。クリーニングによるプラークコントロールを徹底したい方は、自由診療のクリーニングであるPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)を選択しましょう。PMTCなら30〜60分の診療時間を歯のクリーニングだけに使えるだけでなく、食品やタバコによる色素沈着を効率よく除去するエアフローも受けられます。

このようなケアで歯面の汚れが一掃されると、歯磨き粉やキシリトールガムに含まれるフッ素が作用しやすくなり、歯の再石灰化作用も促進されます。ただし、歯科医院でのクリーニングで得られる効果は一時的なものなので、定期的に受けることはもちろんのこと、セルフケアでもプラークコントロールできるように努力しなければなりません。その際、有用なのが定期検診やメンテナンスで受けることができる歯磨きの指導です。

◎歯磨き指導とは?

歯磨き指導とは、口腔ケアの専門家である歯科衛生士が患者さんそれぞれの歯並びや年齢に合った歯磨き方法を教える歯科診療です。歯並びというのはひとつとして同じものがないため、個々のケースに適している方法で歯磨きする必要があります。その方法を学べるのが歯磨き指導であることから、セルフケアでのプラークコントロールを徹底するためにも、正しい方法を定期的に歯科医院で学びましょう。

フッ素塗布

歯科医院でのケアで、再石灰化を促す直接的な方法はフッ素塗布です。歯科医院でのみ取り扱えないフッ素ジェルを歯の表面に塗布することで、歯の再石灰化作用が促進されます。

フッ素塗布に用いられるジェルのフッ化物濃度は9000ppm程度なので、市販の歯磨き粉の6倍くらいの濃度となります。歯科医院でのフッ素塗布は、大人はもちろんのこと、子どもにも適応できますので。

再石灰化で治るむし歯と治らないむし歯

再石灰化で治るむし歯と治らないむし歯 ここからは、むし歯になった歯への再石灰化の効果について解説します。発生して間もないむし歯は再石灰化で治すことも可能であると伝えましたが、その線引きはどこにあるのか気になるところです。

再石灰化で治るむし歯

再石灰化で治る初期のむし歯(CO)は、歯に穴が開いていない状態です。歯面に白いシミができるのがひとつの特徴で、この状態を表層下脱灰(ひょうそうかだっかい)といいます。エナメル質の表層の下が少し溶けていて、むし歯がスタートしているのですが、フッ素を作用させることで脱灰を止められることがあります。

◎COが見つかったときの歯科での対応

CO(Caries Obsevation)は、日本語で要観察歯(ようかんさつし)と呼ばれ、歯科医院での診察で見つかったとしてもただちに削ることはありません。COの段階であれば、フッ素塗布やクリーニング、歯磨き指導を重ねることで、治癒が期待できるからです。COによって生じた歯面の白いシミがフッ素塗布や歯磨きでなくなることはありません。COによる歯面の白濁を取り除くためには、その部分を削ってコンポジットレジンを充填する修復治療が一般的です。Icon(アイコン)のような切削処置が不要な方法も開発されていますので、関心のある方は歯科医院に問い合わせてみてください。

再石灰化で治らないむし歯

再石灰化で治らないむし歯はCOから進行して穴が空いたむし歯です。エナメル質のむし歯であるC1では、歯の表面に穴が開いているため、フッ素による再石灰化の促進やプラークコントロールだけで治すことは不可能です。基本的には感染した歯質をドリルで削り、コンポジットレジンや詰め物、被せ物で補う治療が必要となります。

近年は侵襲を抑えるミニマルインターベンションの考え方が重要視されるようになっており、ほんのわずかの穴であれば削らずにフッ素塗布などで経過を見る場合もあります。

その判断は歯科医師によってわかれることから、歯をできるだけ削らずにむし歯を治したい場合は、歯質を保存することに重きを置いた歯科医院を探すとよいでしょう。

むし歯を早い段階で治療する重要性

むし歯を早い段階で治療する重要性 初期のむし歯を再石灰化で治す方法について説明してきましたが、ある一線を超えると歯を削らなければならなくなったり、場合によっては神経まで抜かざるを得なくなったりするため、歯科を受診するタイミングが重要です。むし歯は発見が遅れれば遅れる程、大がかりな治療が必要となり、費用も高くなり、失う歯質の量も多くなるので、可能な限り早期の発見と治療に努めることが大切です。

◎むし歯を早期に発見する方法

むし歯を早期に発見するうえで重要なのは、歯科検診メンテナンスを適切な間隔で受けることです。3ヵ月に1回の定期検診とメンテナンスを受けていれば、むし歯をCOの段階で発見できる可能性は高くなります。

口腔衛生状態が極端に悪かったり、特別な病気を患っていたりしない限り、次の検診でいきなりC2やC3のむし歯が見つかるということも少なくなるでしょう。定期検診ではむし歯の検査だけでなく、歯のクリーニングやフッ素塗布、歯磨き指導も受けられるため、定期的な受診を継続することでむし歯になるリスクそのものを抑えられるのです。

まとめ

今回は、むし歯を再石灰化で治す方法や適切なセルフケア方法、歯科医院でのケア方法などについて解説しました。酸性の刺激によって歯質が溶ける脱灰現象は、再石灰化によって修復することができます。また、発生して間もない初期のむし歯なら、再石灰化で進行を止めることも可能なので、その作用を促すセルフケア方法や歯科医院で受けられる専門的はケアを実践することが推奨されます。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正 / 一般歯科全般もOK

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