鏡を見たときにいつの間にか歯に黒い線ができていたという経験はないでしょうか。痛みがないからといって放置してもよいだろうかと不安になりますし、目立つ歯にできると人目が気になって思い切り笑えなくなるかもしれません。なぜ歯に黒い線ができてしまうのでしょうか。歯にできた黒い線に潜むリスクや治療法、対処法、きれいな歯を保つために自宅でできるケアについて解説します。
歯にできる黒い線について
なぜ歯に黒い線ができてしまうのでしょうか、またむし歯の可能性がある黒い線とはどのようなものでしょうか。
- なぜ黒い線が生じてしまうのですか?
- コーヒーやワインといった色の濃い飲み物や食べ物をよくお口にする方は、歯が黄ばんでいくだけでなく歯の表面に黒い着色汚れが付着します。タバコを吸うとタール(ヤニ)が歯に付着し、変色して黒い線に見えるケースもあります。軽い着色汚れであれば歯磨きでも落ちますが、磨きづらい溝の部分などを磨き残して着色が蓄積されると、歯ブラシでは落とせなくなってしまいます。歯ブラシが届きにくく磨きにくい前歯の凹んでいる部分、歯と歯茎の境目、奥歯の咬合面の溝などは特に着色汚れが溜まりやすくなっています。歯並びが悪く、歯が重なって生えている人も磨き残しやすい隙間が多くなり、汚れやすくなります。
- むし歯だと歯に黒い線ができますか?
- 着色や歯石の汚れにより奥歯の溝だけが黒くなることもありますが、奥歯の咬合面の溝に沿って黒い線ができている場合は、むし歯の可能性があります。この黒い線は初期むし歯である可能性が高く、短期間の簡単な治療によって治る場合がほとんどですが、レントゲンを撮って調べると意外にむし歯が深かったということもあります。痛みがないうちはまだ小さなむし歯だろうと楽観視せず、症状がひどくなる前に歯科医院へ治療に行くことをおすすめします。
- 黒い線のむし歯は自然に治癒しますか?
- 黒い線の原因のひとつである初期むし歯は慢性化すると硬くなり、外観的に黒い線に見えるようになることがあります。これは歯が溶かされる脱灰(だっかい)と、歯を修復する再石灰化が繰り返された状態です。初期むし歯では痛みを感じないこともあり、見た目の黒さだけが目立つことがあります。黒い線だけができ痛みのない初期むし歯であれば、自然治癒することもありえます。ただ見た目だけで進行度合いを判断することは難しいため、歯科医院での受診が望ましいでしょう。
- 歯の根元の黒い線もむし歯と考えられますか?
- むし歯によって歯の根元に黒い線ができることもありますが、歯石が原因の場合もあります。普段目につく歯茎のラインよりうえの歯の表面についている歯石は黄白色をしていますが、歯茎のラインよりも下の歯周ポケットについている歯石は黒い色をしていることが多くあります。歯茎の縁よりも下についている歯石は歯肉縁下歯石と呼ばれています。歯肉縁下歯石は歯周病にかかって歯茎が下がり、歯周ポケットが形成された場合についてきます。歯周病の原因菌であるP.G菌が黒い色素を出すこと、そして歯周病による歯茎の炎症で出血する際、血液に含まれる鉄分の色が黒いことから、歯肉縁下歯石は黒く着色すると考えられています。
歯科医院で受けられる黒い線の治療方法
歯に黒い線ができてしまった場合に歯科医院ではどのような治療が受けられるか、また黒い線の再発を防止する方法について解説します。
- 黒い線がある場合、どのような治療が行われますか?
- 色の濃い飲み物や食べ物が原因の着色汚れにより歯が黒くなっている場合、歯のクリーニングやホワイトニング治療によって対処します。歯のクリーニングは付着したステインや歯垢などを全般的に除去する治療方法です。ホワイトニングはジェルの塗布とライトの照射で歯を白くします。黒い線がむし歯による場合は、進行度合いによって治療法は異なります。 もし黒い部分が硬化により自然治癒した初期むし歯であれば、経過観察を行うとともに口内環境の改善を目指す治療を行います。
進行したむし歯であれば歯を削り、詰め物や金属で補修して治療を行います。歯の奥まで進行しているむし歯の場合、むし歯になった部分を削り、詰め物や被せ物で削ったところを補います。小さなむし歯であれば詰め物をして治療完了です。しかし大きなむし歯であれば、詰め物ではカバーすることが難しくなるので、被せ物を作り削ったところに被せる治療を行います。 黒い歯石が付着している場合、歯科医院で歯石除去専用のクリーニングを受ける必要があります。歯石の除去にはスケーリング・ルートプレーニングと呼ばれる方法で行います。こちらはキュレットと呼ばれる器具で黒い歯石を除去していく方法です。 ただしスケーリング・ルートプレーニングでも除去できない歯石が付着している場合は、フラップ手術と呼ばれる歯肉を切開して歯石を除去する手術が必要となることも考えられます。
- 定期的に通院することで黒い線の再発防止はできますか?
- 定期的に歯科医院へ通院し、ホワイトニングや歯のクリーニングを行うことによって着色汚れによる黒い線はつきにくくなります。
自宅でできる歯の黒い線対策
黒い線を作らないために、普段から自宅でできるケアにはどのようなものがあるのでしょうか。歯のケアにどのようなものを使用すればよいのか、黒い線が消えたときに通院が必要かどうかなども解説します。
- 黒い線を作らないために自宅でできるケアがあれば教えてください
- 歯の表面に黒い線がつかないようにするためには、日々の予防が大切です。自宅でもできる予防策として、まずこまめにお口をゆすぐことが有効です。こまめにお口をゆすぐだけでも歯に付着する着色汚れを洗い流せます。特に、飲食物に含まれる着色料が歯に付着した状態で放置すると、セルフケアではなかなか取れなくなります。そのため食後はもちろん、コーヒーやお茶などの着色がつきやすいものを摂取した後に、お口をゆすいで予防することが大切です。
つぎの予防策として挙げられるのが、自分に合った歯磨き方法を身につけることです。
自分ではしっかり磨けていると思っていても、実は磨き残しがあることがよくあります。歯並びによっては歯ブラシだけでは汚れを落としきれないこともあるため、歯ブラシだけでなく歯間ブラシやデンタルフロスを使うとよいでしょう。
- ケアの際に、おすすめの歯ブラシや歯磨き粉はありますか?
- 歯ブラシの形にはいろいろなタイプがありますが、毛先がまっすぐなものは均等に力がかかりやすくなります。そのため、基本は毛先がまっすぐにカットされているタイプがおすすめです。ただし歯並びによって歯間が磨きにくい場合は、山切りカットや超極細毛などを選ぶといいでしょう。
ブラシの硬さには大きく、やわらかめ・ふつう・かための3つがありますが、迷ったときには、ふつうを選ぶのがおすすめです。歯ブラシが硬いと歯を傷つける恐れがあり、逆にやわらかいと十分に汚れを落とせないこともあります。歯を磨く力が弱いならかためを、歯茎が弱く出血しやすいならやわらかめを選ぶとよいでしょう。お口の状態に合わせて選ぶのがポイントです。
歯を白く保ちたい場合は、歯磨き粉はホワイトニング用のものがおすすめです。いつもの歯磨き粉をホワイトニング用のものに替えるだけですむので、簡単にチャレンジできるのも魅力です。 一般的な歯磨き粉よりも少し値段は高くなりますが、本格的なホワイトニングと比べて費用は抑えられます。 就寝前の歯磨きを変えるだけの簡単かつ費用を抑えた方法なので、気軽にホワイトニングケアをはじめたい方にぴったりです。
- 黒い線が消えたのですが、通院しなくてもよいですか?
- 歯の表面に現れた黒い線が歯磨きなどで消えたのであれば、それはむし歯ではありません。むし歯によってできた黒い点は、歯を削らなければ取り除けません。ご自身のケアで取り除けた、あるいは自然に消えたのであれば、それはおそらく着色汚れやステインと考えられます。基本的には受診の必要性はありませんが、気になる症状がある場合は、歯科医師に相談した方がよいでしょう。
編集部まとめ
歯の黒い線は見た目が悪くなるだけでなく、むし歯や歯周病といったさまざまなリスクが隠れていることがあります。黒い線を放置すると歯の健康を損なうこともあるため、歯科医師に相談してみるとよいでしょう。自分でできるお手入れを正しく行い、定期的に歯科医院でのクリーニングやお口の中の状態を診てもらうことが歯の健康を守るためには重要です。健康できれいな歯を保ち、いつも自信をもって笑顔になれるようにしたいですね。
参考文献