神経を抜いた歯は、むし歯で大きく削っていたり外傷で欠損したりしているため、歯の治療後に詰め物や被せ物を使うことになります。
詰め物や被せ物の素材にはいくつか種類がありますが、この記事では、セラミック歯を使った場合について解説します。
神経を抜いた歯やその上から被せるセラミックの歯の寿命はどれぐらいなのでしょうか。歯の寿命と長持ちさせるポイントについても紹介します。
これからセラミック治療をされる方、セラミック治療を受けられた方はぜひ参考にしてください。
神経を抜いた歯の寿命
- 神経のない歯は寿命が短くなりますか?
- 神経のない歯の寿命は、本来の歯の寿命より約10年短くなるといわれています。
神経を抜いた後の歯の残存年数は約5~30年といわれており、その寿命にはばらつきがあります。
歯の寿命は神経の有無だけで決まるわけではありません。治療時のお口の状態や日々のケアで寿命より長く使えることもあります。
- 神経のない歯の寿命が縮まる理由を教えてください
- 神経のない歯の寿命が縮まる理由は、以下のとおりです。
- むし歯に気付きにくい
- 歯の根の先で細菌感染を起こすことがある
- 栄養が届けられず歯の根が割れやすくなる
神経がなくなると、痛みを感じられなくなります。痛みはできれば感じたくないものです。
しかし、痛みがあることにより、身体のトラブルに気付くことができます。むし歯の痛みも気付かなければ、見つかったときにはかなり進行してしまっているということもあるでしょう。
歯の根の治療(根幹治療)の際に細菌が残ってしまった場合や治療後に歯の根に細菌が入ることで細菌感染を起こすことがあります。
細菌感染を起こすと、歯肉から膿が出たり激しい痛みを伴ったりするため注意が必要です。
ほかにも神経は歯に栄養を送る働きがあるため、神経がなくなると、栄養が行き届かず歯質がもろくなります。そのため被せ物の土台に金属のものが使われていると、その金属の土台との接触で割れることがあります。
- 歯を残す割合によって寿命は変わりますか?
- 残っている歯の本数が多い方程寿命が長いという研究結果があります。また歯の本数が多い方程認知症発症率が低いこともわかっています。
死亡率は20本以上歯がある方と10~19本の方では1.3倍、0~9本の方では1.7倍上昇するそうです。
しかし、自分の歯を失っても入れ歯などで補填すれば、口腔機能は回復します。口腔機能が維持できている方は、歯が多く残っている方と同様に寿命や健康についても維持できるという調査結果もあります。
歯を補填された方は、長く維持するためにチェックが必要です。また、自分の歯をできるだけ多く残すため定期的に歯科医院を受診して検診を受けることがとても重要です。歯の健康維持は長寿にもつながっています。
セラミックの歯の寿命
- セラミックの歯の寿命はどのぐらいですか?
- セラミックの歯の寿命は平均で10~15年といわれています。これはあくまで平均です。
セラミック歯は耐久性に優れているため、日頃のケアやメンテナンスを適切に行うことでより長持ちさせることができるでしょう。
歯科医院で指導される方法を実践して丁寧にケアをしましょう。むし歯予防や歯周病予防にも気をつけることをおすすめします。
また、セラミックの歯の寿命には歯ぎしりや食いしばりの習慣が影響します。歯ぎしりや食いしばりに気付いたら歯科医院に相談しましょう。
- セラミックの歯の寿命が長い理由を教えてください
- セラミックは強度が高く、耐久性に優れた素材です。
歯科治療における保険診療の被せ物はレジンと銀歯があります。レジンの寿命は2~3年、銀歯は5~7年といわれているため、セラミック歯(10~15年)の寿命は長いといえるでしょう。
セラミックのなかでもジルコニアは人工ダイヤモンドといわれる程強度に優れた素材です。経年による変化が少ない特徴もあります。また、金属ではないためアレルギーの心配が少なく、見た目にも自然な白さを維持できる点も長く使える理由になるでしょう。
- セラミックの歯の寿命が縮まることはありますか?
- セラミックは優れた素材ですが、硬い食べ物を頻繁に食べたり、力を入れて雑に歯磨きをしたりすると、丈夫なセラミックでもひびや欠けの原因になることがあります。
また、歯ぎしりや食いしばりがある方は対策をすることでセラミックの寿命を保つことができるでしょう。
ほかにも歯磨きや定期検診などのケアを怠ると神経のない歯がむし歯になったり歯周病になったりして、被せ物を取らなければいけなくなる可能性もあります。
セラミック歯は基本的に使いまわしができないため、取らなくてもすむように適切なケアを心がけましょう。
神経のないセラミックの歯を長持ちさせるポイント
- 神経のない歯は定期的にメンテナンスを受けた方がよいですか?
- 神経のない歯および治療で被せ物をしている歯はメンテナンスが欠かせません。
神経がない歯にはほとんどの場合、被せ物の治療がされています。被せ物と天然歯の間には汚れがたまりやすく、細菌が増殖しがちです。細菌はむし歯や歯周病を引き起こすため注意しましょう。
歯科医院のクリーニングでは、セルフケアでは落としきれない歯垢や歯石を除去してもらえます。
また、歯科医院では被せ物をした歯と歯肉、周囲の歯まで状態をチェックします。ひびや欠け、噛み合わせの問題や炎症がないか確認し、問題があれば早期に処置が可能です。
歯の被せ物は専用の接着剤でしっかりとつけられていますが、接着部分が時間とともに弱まることもあるため、歯科医院にて定期的なメンテナンスは必要です。
- 神経を再生させることは可能ですか?
- 歯の神経を再生させる、歯髄再生治療法という方法も存在しますが、適応できる医療機関は限られています。
歯は表面側からエナメル質・象牙質・歯髄という順にできていて、歯髄とは歯の神経のことを指します。
歯髄再生治療では、まず親知らずや乳歯など噛み合わせに影響のない歯から歯髄幹細胞を採取します。その細胞を培養してから洗浄した根管内に移植し再生が可能です。
さらに、移植した歯髄の周りに新たな象牙質が形成されることがわかっています。
この歯髄再生治療は自由診療で、医院ごとに料金が異なります。目安としては、600,000~1,100,000円(税込)程度とされてるようです。検査費用や治療箇所、お口の中の状態により別途費用がかかることがあります。
ほかに、歯髄温存療法という治療方法があります。この治療は幅広く行われている治療です。
歯髄温存療法では露出した歯髄を保護するためにMTAセメントという薬剤が使用されます。この薬剤には再生・治癒能力があるため、歯髄の再生が期待できます。
歯髄温存療法は、保険適用外で1本あたり30,000~80,000円(税込)程度です。費用はかかりますが、歯の神経は温存療法が可能となっています。
- 治療後の歯磨きで気をつけることを教えてください
- 歯磨きはしっかりしているつもりでも、歯並びや磨き方の癖で汚れを落としきれていないことがあります。
治療後は歯科医院で歯磨きの指導があります。フロス・歯間ブラシの使い方から歯ブラシの持ち方まで詳しく教えてもらえるので、毎日のケアに役立てましょう。
歯は1本1本丁寧に磨くことが基本です。歯ブラシの毛先を歯面にきちんと当てるようにしましょう。
歯と歯肉の境目、歯と歯の間も汚れが残りやすいポイントです。力を入れすぎず、歯ブラシの毛先が広がらない程度の力で軽く小刻みに動かします。1ヶ所20回ぐらいを目安に丁寧に磨きましょう。
奥歯は歯ブラシが届きにくく磨き残しが多い箇所です。奥歯がむし歯になるリスクは、前歯の20倍といわれています。奥歯の磨き残しに心配がある方は、ヘッドの薄い歯ブラシを選ぶとよいでしょう。
歯ブラシは使用後は流水できれいに洗い、水分をよく切ってヘッド部分を上にして風通しのよいところで保管しましょう。
- 歯ぎしりの対策方法はありますか?
- 歯ぎしりには起きている間にしているものと寝ている間にしているものがあります。
起きている間の歯ぎしりや食いしばりは、無意識の間に自分がしていることを認識することで、是正が可能です。ストレス・飲酒・喫煙などが原因の可能性があり、身体を動かしたり趣味の時間を作ったりするなどの工夫で改善できることもあります。
就寝中の歯ぎしりにはナイトガードの使用がおすすめです。ナイトガードは就寝時につけるマウスピースで保険適用されることもあります。
起床時に歯や顎が痛い・疲れた感じがする・歯が欠けたり割れたりするなどの症状がある方は就寝中の歯ぎしりが原因の可能性があります。歯ぎしりに気がついたら歯科医院に相談してみましょう。
編集部まとめ
神経を抜いた歯は、寿命が短くなります。しかし、セラミックという優れた歯で補填が可能です。セラミックの歯は強度に優れていて平均10年以上使えます。
メンテナンスが必須になりますが、ケアを丁寧に行えば平均寿命以上に長持ちできるでしょう。日頃のセルフケアに加え、歯科医院での定期的なメンテナンスを忘れずに受けましょう。
歯科医院では歯の根の再生治療や歯ぎしりの相談もできます。ご自身にあった治療法を見つけて、治療が完了した歯も自分の歯も健康に長く維持しましょう。
参考文献