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ストレスがむし歯のリスクを高める?理由や予防策、日常的に行えるストレスケア方法を解説

ストレスがむし歯のリスクを高める?理由や予防策、日常的に行えるストレスケア方法を解説

ストレスは万病のもとと呼ばれるように、私たちの身体の健康にはよくないものです。高血圧症や脳卒中、心疾患といった現代人に見られる深刻な全身疾患は、ストレスがひとつの原因とも考えられています。

むし歯もストレスに影響を受けるとされており、毎日の生活のなかで強いストレスを感じたり、ストレスをためたりしている方は、むし歯の発症リスクが高まっているため十分な注意が必要です。ここではストレスがむし歯のリスクを高める理由や予防策、日常的に行えるストレスケア方法を解説します。

ストレスがむし歯のリスクを高める理由

ストレスがむし歯のリスクを高める理由 むし歯は、ミュータンス菌に代表されるむし歯菌に感染することで発症する病気です。むし歯菌が産生する酸がエナメル質や象牙質を溶かし、やがては歯の神経まで侵す怖い病気ですが、なぜストレスによって誘発されるのか、ストレスがむし歯のリスクを高める主な理由は、以下の4つが挙げられます。

唾液の分泌量が減少する

唾液にはむし歯を予防してくれる作用があります。具体的には、細菌の活動や繁殖を抑える抗菌・殺菌作用、歯の酸に対する抵抗力を高める再石灰化作用、お口のなかの汚れを洗い流す自浄作用などが挙げられ、適正量が分泌されることでむし歯リスクを軽減しています。ところがストレスを受けると交感神経が優位となり、唾液の分泌量が低下することからむし歯リスクが高まります。

強いストレスに晒された際、お口のなかが乾いて口臭が目立つことがあるかと思いますが、この現象はまさに唾液分泌量の減少による細菌活動の活発化なのです。 また、唾液には緩衝作用(かんしょうさよう)も備わっています。緩衝作用とは、何らかの理由で口腔内環境が酸性やアルカリ性に傾いたときに中性へと戻そうとする作用です。

口腔内環境は、食事などによる影響で酸性に傾きやすくなっていることから、唾液による緩衝作用は主に酸性を中性に戻す力として機能します。ちなみに、酸性の環境はむし歯菌が活動しやすく、歯が溶けやすい状況でもあるため、むし歯リスクも自ずと上昇します。ストレスによってお口のなかが乾くと、このような変化も伴うのです。

免疫力が低下して細菌が増殖しやすくなる

ストレスは、全身の免疫力を低下させる作用があります。学校や仕事で強いストレスを受けていると、風邪をひきやすくなったり、原因がよくわからない頭痛や腹痛などに見舞われたりすることもあるでしょう。

これらはストレスで免疫力が低下し、細菌やウイルスによる感染症でさまざまな症状が現れることが原因です。むし歯も細菌感染症の一種であることを忘れてはいけません。ストレスによる免疫力の低下は、むし歯菌の増殖を促し、むし歯リスクを上昇させるのです。もうすでにむし歯を発症しているケースでは、ストレスで免疫力が低下した際に、痛みが強くなりがちです。

歯ぎしりが増える

強いストレスを受けると、歯ぎしりが増えることがあります。歯ぎしりは、ストレスを解消する目的で無意識に行われますが、歯が欠けたり、摩耗したりするデメリットを伴う点に注意が必要です。

歯質に傷がつくと、細菌が侵入してむし歯を発症する可能性も出てきます。歯ぎしりは無意識に行ってしまいますが、定期検診で歯科医院を受診すると、歯の摩耗という症状で歯ぎしりをしていることを指摘してもらえます。歯ぎしりは専用のマウスピースを使ったスプリント療法で治療することができますので、ストレスを感じた際には歯科医院で相談してみましょう。

むし歯リスクが高くなる生活習慣

むし歯リスクが高くなる生活習慣 むし歯の発症リスクを高める生活習慣について解説します。

睡眠不足

睡眠不足は、ストレスと関連があり、むし歯リスクを上昇させる要因のひとつです。睡眠時間が短くなると、疲れが取れず、慢性的な疲労に悩まされ、日中のパフォーマンスが低下します。学校や職場で失敗することも増えてストレスもたまっていきます。

睡眠不足は、全身の免疫力を低下させることで、むし歯の発症リスクを高めます。睡眠は、免疫力を高める成長ホルモンなどが分泌され、身体の恒常性を維持する上で重要な役割を担っていることから、毎日十分な睡眠時間を確保することが大切です。

不規則な食事

むし歯予防の観点からは、食事をとるタイミングや回数にも十分な配慮が必要です。例えば、しっかりとした食事をとるのは夜だけで、それ以外は不規則な時間に間食を繰り返すような生活は、むし歯の発症リスクが高くなっています。間食がクッキーやチョコレートをつまむだけであっても、お口のなかが汚れていることに変わりはありません。間食をするたびにう蝕原性細菌の活動が活発化して、むし歯リスクが高まっていることを自覚しましょう。

特にむし歯のリスクを高めるのが就寝前の食事です。睡眠中は唾液の分泌量が大きく減少するため、眠る直前に飲食をするとむし歯リスクが上がります。食事をとるタイミングや回数も自分なりのルールを決めて規則性を持たせることで、口腔ケアもしやすくなるでしょう。

口腔ケアの不足

口腔ケアの習慣は、むし歯リスクと直結しています。口腔ケアが不十分だと歯垢や歯石が堆積して、むし歯リスクが上昇します。

口腔ケアは朝晩の歯磨きという認識だけで生活してはいけません。朝晩2回の歯磨きだけでは不十分であることが理由だからです。適切に口腔ケアを行えているかどうかは自己判断せず、歯科の定期検診でアドバイスを受けることが推奨されます。

喫煙や飲酒

タバコを吸ったりお酒を飲んだりする習慣は、むし歯リスクを高めます。

タバコの煙にはタールという粒子状の成分が含まれており、歯を黄ばませる原因となっています。一般的にはヤニと呼ばれるもので、歯の審美性を低下させるだけでなく、歯面をザラザラにすることで汚れがつきやすくなり細菌の増殖も促されます。これはそのままむし歯リスクの上昇へとつながります。タバコを吸うことで口腔内が乾燥することでもむし歯菌の活動が促進されるのです。タバコの煙には歯茎の血流を悪くする作用がありますが、歯周病のリスク増大へとつながります。

タバコを吸う人が減少傾向にありますが、お酒を飲む習慣は、まだ多くの方に残っていることでしょう。お酒の種類によっては、想像している以上に糖質が含まれており、むし歯リスクを直接的に高めます。

飲酒というのは、つまみを食べながら長時間に渡って行うことがあるため、通常の食事よりもむし歯リスクが高まりやすい点に注意しなければなりません。お酒は利尿作用が強く、身体の水分が必要以上に排泄され、唾液の分泌量が低下します。その結果、う蝕原性細菌の活動も顕著に高まっていきます。こうしたことからお酒を飲む習慣は、むし歯の発症リスクという観点では注意が必要といえるのです。

むし歯にならないための予防策

むし歯にならないための予防策 むし歯の発症リスクを高める生活習慣がわかったら、次はむし歯にならないための予防策を講じる必要があります。基本的には以下の4つを実践することで、むし歯の発症リスクは抑えやすくなります。いずれも決して難しいこと、高額な費用がかかることではないので、すべてを継続的に実践するのが望ましいです。

正しい歯磨きを行う

むし歯にならないための予防策として第一に取り組むべきは、正しい歯磨きを習慣化させることです。歯磨きといっても、その方法は患者さんによって大きく変わります。漫然と歯磨きをしている方もいれば、とにかく朝晩それぞれ1分間は歯磨きすると決めている方もいるでしょう。残念ながら、どちらも正しい歯磨きの方法とはいえません。

歯並びはひとつとして同じものがないので、まずは自分に合った歯磨きの方法を知る必要があります。歯科医院での歯磨き指導に頼ることになりますが、実践するのは患者さんの意志に委ねられています。少なくとも1日1回はプラークフリーな状態を作れる正しい歯磨きを行ってください。これが、むし歯予防の第一歩となります。

フッ素入り歯磨き粉を使用する

むし歯予防では、歯磨きの際に使用する歯磨き粉の種類にも気を配る必要があります。具体的には、フッ素入り歯磨き粉を選ぶようにしてください。フッ素は、歯の再石灰化作用を促し、むし歯菌が作り出す酸への抵抗力を高めることができます。

フッ素入り歯磨き粉に配合されるフッ素濃度ですが、5歳までのお子さんに関しては1,000ppm、6歳以降のすべての方は1,500ppmの製品を選ぶとよいでしょう。学会が推奨しているフッ素入り歯磨き粉の濃度なので、適切な方法で使用している限り、健康被害が生じるリスクはほとんどありません。

糖質の摂取を控える

むし歯は、細菌と歯質に加えて、糖質という要素が加わることで発症リスクが大きく上昇します。そのなかでも注意が必要なのが砂糖であるスクロースです。

スクロースは、むし歯菌の代表であるミュータンス菌の活動エネルギーであり、そのままの状態で代謝に利用できることから、むし歯リスクも大きく上昇します。むし歯菌のエサになる糖質はスクロースだけではなく、主食となっているご飯やパスタ、うどんなどを構成するデンプンも含まれるため、糖質の摂取量をコントロールする際には、朝昼晩の食事にも細かく配慮しなければなりません。間食のケーキやチョコレートを控えるだけでは不十分なのです。

定期的に歯科検診を受ける

歯科検診では、歯は歯茎の異常を細かく見てもらえます。その際、初期のむし歯が見つかることもあるため、早期に対処することでむし歯の進行を止められます。

歯科の定期検診では、むし歯や歯周病の診査に加えて、歯磨き方法の指導やクリーニングも受けられるので、セルフケアでは補えないむし歯予防効果が期待できます。上段でも述べたように、自己流で正しい歯磨きを身につけるのは困難であることから、歯科医師や歯科衛生士による歯磨き方法の指導は、定期的に受けるようにしましょう。

日頃から行えるストレスケア方法

日頃から行えるストレスケア方法 今回の主なテーマであるストレスのケア方法を紹介します。日頃から強いストレスを受けたり、ストレスをため込んだりしている自覚がある方は、次に挙げる4つの方法を実践してみてください。それが結果として全身の健康維持につながり、むし歯予防をすることにもなるでしょう。

しっかりとした睡眠をとる

成人では6〜8時間の睡眠時間が必要と考えられています。この時間を下回っている場合は、日中の仕事や趣味の時間を調整するなどして対応しましょう。しっかりとした睡眠というのは、単に睡眠時間だけを確保しても十分な効果がありません。寝室の温度や湿度、寝具の種類などに配慮することで、睡眠の質が上がります。つまり、睡眠の量と質の両方を向上させることで、全身やお口の健康も維持しやすくなるのです。

適度な運動を習慣にする

ウォーキングやランニングなどの適度な運動を生活習慣に取り入れることで、睡眠の質が上がる、全身の血流がよくなる、ストレスが解消されるなどの効果が期待できます。

趣味の時間を確保する

ストレスの解消法は人によって異なりますが、趣味の時間を設けることもひとつの有効な方法といえます。自宅で好きな映画や動画を見たり、休みの日に美術館に出かけたりするなど、普段の生活では得られない充足感や満足感を味わうことで、日頃たまったストレスを解消しやすくなります。

入浴をしてリラックスする

普段はシャワーだけで済ませている人は、湯船にお湯をためて入浴する習慣も生活にとり入れてみてはいかがでしょうか。入浴によって血圧が下がり、緊張がほぐれることでストレスも緩和されます。好きな入浴剤を使ったり、入浴中にタブレットで動画を見たりするのもストレスに対するよい効果が期待できます。

まとめ

今回は、ストレスがむし歯のリスクを高める理由や予防策、日常的に行えるストレスケア方法などについて解説しました。ストレスに晒されると、唾液の分泌量が低下する、口腔内が酸性に傾きやすくなる、免疫力が低下する、歯ぎしりが増えるなどの理由から、むし歯リスクが高くなるため、日頃からストレスをためないよう努めましょう。また、ストレスをケアする方法を実践することで、全身やお口の健康を維持しやすくなります。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 京之介歯科医師(歯科医)

松浦 京之介歯科医師(歯科医)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:2019年 福岡歯科大学卒業、2020年 広島大学病院研修修了、2020年 静岡県、神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務、2023年 医療法人高輪会にて勤務、2024年 合同会社House Call Agencyを起業 / 資格:歯科医師免許 / 所属学会:日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会

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