最近、口臭が気になるようになった。お口のなかが粘つく。お口やのどの渇きを感じやすい。そんな症状が認められる場合は、ドライマウスが疑われます。ドライマウスは現代人によく見られる病気で、お口にさまざまな症状を引き起こします。ここではそんなドライマウスの症状や原因、口臭との関わり、口臭を改善・予防する方法などを解説します。お口の乾燥や口臭に悩まされていて何とかしたいと考えている方は参考にしてみてください。
ドライマウスの症状と影響
はじめに、ドライマウスがどのような病気なのかを確認しておきましょう。
- ドライマウスになるとどのような症状が出るか教えてください
- 口腔乾燥症とも呼ばれるドライマウスを発症すると、以下に挙げるような症状が現れます。
- お口のなかが乾燥する
- 発音や滑舌が悪くなる
- 口臭が強くなる
- お口のなかがネバネバとする
- 食べ物を飲み込みにくくなる
- お口の粘膜がヒリヒリする
- 夜間にお口の渇きで目覚めることがある
- 口内炎ができやすくなる
- むし歯や歯周病になる
ドライマウスになると、これらすべてが認められるわけではありません。また、ドライマウス以外の病気で、上記の症状が現れることもあるため、最終的な診断は歯科医院で受ける必要があります
- ドライマウスの主な原因を教えてください
- ドライマウスの根本的な原因は、唾液の分泌量の低下です。唾液には、口腔内を適切な湿度に保ち、粘膜を保護したり、細菌の繁殖を抑えたりする作用が期待できます。そんな唾液分泌量の低下は、以下の要因によって引き起こされやすいです。
◎加齢による唾液腺機能の低下
唾液を分泌する唾液腺は、加齢とともにその機能が低下していきます。80歳にもなれば、唾液の分泌量が若い人の2分の1程度まで減少することから、高齢の方ほどドライマウスの発症リスクが高まります。
◎過度なストレスや緊張
唾液の分泌量は、自律神経の働きによって大きく左右されます。家でゆっくりしているときは副交感神経が優位となり、唾液の分泌量も増加しますが、学校・職場などで過度なストレスや緊張にさらされると、交感神経が優位となり、唾液の分泌量が減少します。そのためストレスを受けやすかったり、緊張しやすかったりする人は、ドライマウスになりやすいといえます。
◎薬剤による影響
ドライマウスの誘因として意外に多いのが薬剤です。薬剤には、唾液分泌に影響を与える副作用があるため、常用薬がある方は注意が必要です。
◎放射線による影響
がんなどの治療で唾液腺周囲に放射線を照射した経験がある方は、ドライマウスの発症リスクが高まります。具体的には、舌がんや咽頭がん、喉頭がんの放射線治療では、被ばくによる影響で唾液腺の細胞が損傷し、唾液分泌の機能が低下することがあります。
◎全身の病気による影響
自己免疫疾患の一種であるシェーグレン症候群では、ドライマウスやドライアイといった乾燥症状がよく見られます。これは唾液腺や涙腺が自分の免疫によって攻撃を受けるからです。その他、糖尿病や鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)、腎疾患などでもドライマウスの症状が見られる場合があります。
仮に、上記のいずれも当てはまらず、唾液腺の機能が正常で、唾液の分泌量が十分であったとしても、口呼吸をしているとドライマウスの症状が現れます。とりわけ眠っているときに口呼吸をしている場合は、ドライマウスの症状が強くなりやすいため注意が必要です。
- ドライマウスになりやすい年齢層や性別はありますか?
- 一般的には、40〜50代くらいからドライマウスになる人が増加します。唾液腺の機能は加齢とともに衰えていくため、60代、70代と年を重ねていくごとにドライマウスの発症リスクは高まるといえるでしょう。ドライマウスの性差に関しては、女性のほうがかかりやすいことがわかっています。なぜなら女性ホルモンのエストロゲンは、唾液腺の機能を維持するうえで重要で、閉経後はその分泌量が減少するため、唾液の量も自ずと少なくなるからです。
また、ドライマウスのリスクを大きく上昇させるシェーグレン症候群の患者数は、男性よりも女性の方が圧倒的に多くなっています。具体的な性差は、男性1:女性14です。こうしたことからドライマウスは相対的に女性の方がかかりやすい病気といえるでしょう。
- ドライマウスを引き起こしやすい薬の種類を教えてください
- ドライマウスは、以下に挙げる薬によって引き起こされることが多いです。
◎循環器用薬
- 降圧利尿薬
- 交感神経抑制薬
- 血管拡張作用薬
- 抗狭心症薬 など
◎精神科用薬
- 抗不安薬
- 抗うつ薬
- 抗てんかん薬
- 抗パーキンソン薬
- 自律神経系作用薬 など
◎呼吸器用薬
- 呼吸促進薬
- 気管支拡張薬
- 鎮咳薬 など
◎抗アレルギー薬
- 抗ヒスタミン薬 など
これらの薬剤を服用しているからといって、すべてのケースでドライマウスの症状が現れるわけではありません。服薬に伴う副作用のひとつでしかない点にご注意ください。
ドライマウスによって起こる口臭の特徴
次に、ドライマウスと口臭の関係について解説します。
- ドライマウスが口臭を招くのはなぜですか?
- ドライマウスでは、唾液の分泌量が減少するとともに、唾液による自浄作用、殺菌作用、抗菌作用などが低下するからです。お口のなかには無数の常在菌が生息しており、その活動は唾液によってある程度まで抑えられています。その唾液が減る、あるいは乾燥によってなくなると、常在菌の活動が活発化して、悪臭を放つようになるのです。
- ドライマウスが原因の口臭には、どのような特徴がありますか?
- ドライマウスによる口臭では、主に腐敗臭がします。野菜が腐ったような臭いで、お口のなかの食べかすなどを細菌が分解する過程で生じます。その中でも特徴的なのが歯周病菌によって産生されるガスです。歯周病菌は、歯の周りや歯周ポケットの中に存在しているタンパク質をエネルギー源として、それを分解する過程で、メチルメルカプタンという揮発性のガスを産生します。メチルメルカプタンは腐った玉ねぎのような臭いがして、口臭を強くする主な原因となっています。大半の日本人のお口のなかには、歯周菌が常在しているため、ドライマウスになるとこの臭いが生じやすいです。
ドライマウスによる口臭への対策
最後に、ドライマウスが原因の口臭への対策方法を解説します。
- ドライマウスを悪化させる習慣や食事はありますか?
- もっとも注意すべきは口呼吸です。お口で呼吸をしていると、呼気と吸気が通過する度に口腔内を乾燥させてドライマウスを悪化させます。飲酒は利尿作用によって唾液の分泌量を減らし、タバコは煙によってドライマウスの症状を直接的に悪化させます。食事に関しては、やわらかい物ばかり食べていると、噛むことによる唾液分泌の促進作用が得られにくくなり、ドライマウスを悪化させることもあるでしょう。また、食事の際に水分をとる習慣がなかったり、乾いたものばかり食べる習慣があったりする場合もドライマウスの症状が悪化しやすいです。
- 自宅でできるドライマウスと口臭への対策を教えてください
- 口呼吸がある人は、鼻呼吸へ移行するよう努めましょう。飲酒や喫煙も可能な限り控えるのが賢明です。食事は、噛み応えのある献立を意識し、よく噛んで唾液の分泌を促してください。普段からキシリトールガムを噛んでいれば、唾液の量も増えますし、むし歯予防にも寄与します。その他、水分補給をこまめに行う、リラックスして自律神経を整える、口腔ケアを徹底してお口のなかを清潔にすることで、ドライマウスと口臭を改善しやすくなります。
- 定期的に歯科医院の予防治療に通うのは口臭対策になりますか?
- もちろん、口臭対策になります。口臭の原因のほとんどはお口のなかにあるといわれているため、歯科医院で定期的な予防治療を受けることは極めて有益です。歯周病やむし歯の予防し、口腔衛生状態を良好に保つだけでも、十分な口臭対策になります。
編集部まとめ
今回は、ドライマウスの症状や特徴、口臭との関係について解説しました。口臭やお口のねばつき、飲み込みにくさなどに悩まされるドライマウスは、唾液分泌量の低下が主な原因となります。また、口腔衛生状態が悪いと口臭の症状も強まるため、ドライマウスにおいても口腔ケアは重要な対策のひとつとなってきます。そんなドライマウスや口臭に悩まされている場合は、まず歯科医院を受診しましょう。そのうえでドライマウスを引き起こしている原因を突き止め、適切な方法で対処していくのが望ましいです。
参考文献