歯の治療では、むし歯の治療だけでなく、治療後の見た目を気にする方も少なくありません。
会話や食事などでお口を開けたときに、銀歯や差し歯などの明らかに周囲の歯と違う色や見た目の歯があると、印象にも影響が出てしまいます。
セラミッククラウンは、治療後の見た目も自然歯とほとんど見分けがつかないほど自然な仕上がりが特徴です。
この記事ではセラミッククラウンの特徴や種類、費用などを解説します。
セラミッククラウンの特徴
セラミッククラウンは、削った歯に被せる人工の歯のことです。セラミッククラウンを使った治療を、セラミッククラウン法といいます。
セラミッククラウンの一番の特徴は、見た目の美しさと耐久性です。
周囲の歯と同じような色を選び、噛み合わせも考慮しながら作られます。
従来のレジンの差し歯も色は似ていますが、透明感がないことなどが理由でどうしても不自然になりがちです。
それに対しセラミッククラウンは透明感もあるので、ほとんど自然の歯と同じ仕上がりになります。
耐久性も高く、定期的なメンテナンスを行えば、20年以上持つこともあります。
セラミッククラウンのメリット
セラミッククラウンには以下のメリットがあります。
- 審美性が高い
- 白さが長持ちする
- 金属アレルギーの心配がない
- 二次むし歯になりにくい
- 歯茎の変色の心配がない
セラミッククラウンは自然な見た目が大きなメリットですが、二次むし歯になりにくいことや歯茎の変色がないこともメリットの一つです。
それぞれのメリットについて解説します。
審美性が高い
セラミッククラウンは限りなく天然歯に近い白さや艶があります。少し見ただけでは人工の歯には見えないでしょう。
神経を抜く治療をして変色がある場合やホワイトニングをしたけれど思った程の白さが出なかった場合、見た目が気になってしまう方も少なくありません。
しかしセラミッククラウンの被せ物をすることで、理想とする白い歯にできます。
むし歯の治療をしつつ審美性も維持できるのは、セラミッククラウンのメリットです。
白さが長持ちする
セラミッククラウンの種類にもよりますが、白さが長持ちします。
保険診療で使われる歯科治療用プラスチックやハイブリッドセラミックは使用期間が長くなると変色し、治療当初のような白さはなくなっていくことがほとんどです。
しかしオールセラミックでは長くて20年、ハイブリッドセラミックでも5年から10年は白さが長持ちします。
金属アレルギーの心配がない
セラミッククラウンは銀歯のように金属を使わないため、金属アレルギーの心配がありません。
そのため、金属アレルギーがある方や金属アレルギーの心配がある方にとって安心して選ぶことができる素材です。
ただし、メタルボンドセラミッククラウンは金属を使用しているため注意が必要です。
もともと金属アレルギーがある方は、セラミッククラウンでの治療をする際に歯科医師に相談した方がよいでしょう。
二次むし歯になりにくい
銀歯は長期の使用により劣化し、歯と銀歯との間に隙間ができてしまいます。
その隙間には汚れがたまりやすく、歯磨きだけでは取り除きにくいです。
そのため二次むし歯になってしまうリスクがあり、銀歯を取り外して再度むし歯治療をする必要があります。
治療を何度も繰り返すと次第に歯の強度が落ち、歯を残すことができなくなるケースもあります。
しかしセラミッククラウンは、長期間経過しても劣化が起こりにくいです。
そのため隙間や段差ができにくく、汚れがたまりにくいので、むし歯のリスクがほとんどありません。
汚れが付着しづらいのも、セラミッククラウンが二次むし歯になりにくい理由の一つです。
セラミッククラウンは、むし歯の再発予防にも役立ってくれます。
歯茎の変色の心配がない
銀歯は唾液により、金属がイオン化することがあります。
金属がイオン化すると歯茎が変色しやすく、特に前歯付近だと目立ちやすくなります。
しかしセラミッククラウンは金属を使用していないため、歯茎の変色の心配がありません。
しかし内側に金属を使用したメタルボンドセラミッククラウンだけは例外です。
強度はありますが、金属をつかっているためイオン化する心配があります。前歯などの治療に使用する際には注意が必要です。
セラミッククラウンのデメリット
セラミッククラウンは審美性や耐久性に優れるなど、さまざまなメリットがあります。しかし、デメリットもあるため、デメリットについても知っておくことが大事です。
主に次のようなデメリットがあります。
- 割れることがある
- 歯を削る量が多い
- 自費診療のため費用が高い
下記ではこれらのデメリットを解説します。
割れることがある
セラミッククラウンは強度もあるため普段の生活ではほとんど割れるなどの心配はありませんが、強い衝撃が加わると割れてしまうことがあります。
セラミッククラウンが割れてしまうケースとしては、以下の例があります。
- 噛み合わせが悪い
- 歯ぎしりがある
- 硬い食べ物ばかりを食べている
- メンテナンス不足
噛み合わせが悪いと、噛むたびに必要以上の力が歯に加わってしまいます。そのため、強い衝撃が加わり、割れてしまうことがあります。
噛み合わせが悪い場合は、セラミック治療と併せて噛み合わせの治療をすることも必要です。
歯ぎしりがある場合も同様です。歯ぎしりによって日常的にセラミッククラウンに強い力が加わってしまいます。
歯ぎしりがある場合には、ナイトガードというマウスピースを使用したり、歯ぎしりの原因となるストレス対策なども必要です。
硬い食べ物は強い力で噛むため、日常的に食べていると力が継続して加わりやすくなります。
硬い食べ物を好んで食べている方は、食事メニューを見直すといいでしょう。
セラミッククラウンは治療後も、定期的なメンテナンスが必要です。
普段の歯磨きで取り切れていない汚れがないかや、噛み合わせが変化していないかなど、歯科医院に行かないとわかりにくいこともあります。
メンテナンスを怠ったことで気付かないうちにセラミッククラウンの劣化が起きていると、ある日突然割れてしまうため注意が必要です。
歯を削る量が多い
セラミッククラウンは割れやすいため、強度を保つために天然歯を多く削ります。場合によっては神経に到達することもあり、神経をとる場合もあるでしょう。
神経をとった歯は弱く、歯の寿命も短くなります。また、神経の近くまで歯を削った場合、知覚過敏になることもあります。
削る量はセラミッククラウンの種類によりますが、e-maxだと1mmから1.5mm程度で、メタルボンドセラミッククラウンだと2mm程度削ることがあります。
削らずにセラミッククラウンを使えないかと、考える方もいるでしょう。しかし、むし歯治療のためには削る必要があり、削らずにセラミッククラウンを使うことは難しいです。
自費診療のため費用が高い
セラミッククラウンは保険適用がなく、ほとんどが自費診療になります。
そのため費用も高額となり、セラミッククラウンでの治療を躊躇してしまうこともあるでしょう。
治療を始める前に、歯科医師から説明があります。もし治療前に費用についての説明がない場合は、費用について相談してみるといいでしょう。
セラミッククラウンの種類
セラミッククラウンにはさまざまな種類があります。主なセラミッククラウンの種類は以下の通りです。
- オールセラミッククラウン
- ハイブリッドセラミッククラウン
- メタルボンドセラミッククラウン
- ジルコニアセラミッククラウン
- e-max
セラミッククラウンの種類によって特徴があり、治療する歯の場所によって使い分けたり、審美性や耐久性に違いがあったりします。
費用にも差があるため、セラミック治療を行うときには、歯科医師と相談しながらどのセラミックを使用するのか決めることが大切です。
セラミッククラウンの種類による違いをそれぞれ解説します。
オールセラミッククラウン
全体が100%、セラミックで作られたセラミッククラウンです。
セラミッククラウンの中でも特に美しさがあり、審美性に優れています。
天然歯に限りなく近いことから、前歯などお口を開けたときに見えやすい場所の治療に特におすすめです。
品質も良く長持ちするのもオールセラミックの特徴です。
ハイブリッドセラミッククラウン
セラミックと歯科治療用のプラスチックで作られたセラミッククラウンです。
見た目の美しさはオールセラミックと比べると劣りますが、その分費用が安いのが特徴です。
歯科治療用のプラスチックのように短期間で変色することはありません。しかし、プラスチックが水分を含み、変色を起こすことはあります。
費用を抑えて作成できるのが、ハイブリッドセラミッククラウンの一番の特徴といえます。
メタルボンドセラミッククラウン
外側がセラミック、内側は金属で作られているセラミッククラウンです。
金属を使用しているので、ほかのセラミッククラウンより強度に優れています。
ただし金属アレルギーがある方には使用できません。金属が内側にあるため、金属アレルギーがあるとアレルギー反応を起こしてしまいます。
セラミック部分に透明感があると内側の金属が透けて見えてしまうため、オールセラミックなどと比べると透明感が抑えられているのも特徴です。
そのため、ほかのセラミッククラウンと比較すると審美性が少し劣ります。
さまざまな種類があるセラミッククラウンの中で、強度に特化したセラミッククラウンといえるでしょう。
ジルコニアセラミッククラウン
ジルコニアを使用したセラミッククラウンです。
ジルコニアは人工ダイヤモンドとも呼ばれる程、強度に優れた素材です。
美しさはオールセラミックには劣りますが、それでも十分な審美性があります。強度が高いため、噛むときにより強い力が加わりやすい奥歯への治療に使用されます。
e-max
ガラスセラミックを使用したセラミッククラウンです。
強度は天然歯にほとんど近く、一定の強度もありつつ透明感にも優れています。
透明感が高いため、土台となる歯が黒ずんでいる場合には黒ずみが透けやすく、適していません。
ほかのセラミッククラウンと比べるともともとの歯を削る量が少ないのも特徴です。
透明感に特化したセラミッククラウンといえ、主に前歯に使用されます。
セラミッククラウンの費用
セラミッククラウンの費用は、セラミッククラウンの種類によって異なります。使用するセラミックの原材料や製造工程が違うためです。
歯科医院によっても費用は変わってきますが、おおよその費用は以下のとおりです。
- オールセラミッククラウン 約100,000~200,000円(税込)
- ジルコニアセラミッククラウン 約100,000~150,000円(税込)
- メタルボンドセラミッククラウン 約80,000~150,000円(税込)
同じオールセラミッククラウンでも歯科医院により費用に差があるため、治療の際には事前に費用の確認をしておいた方がよいでしょう。
また、医療費控除の対象となるため、確定申告の際は、税務署に申告しましょう。
セラミッククラウンの治療期間
セラミッククラウンの治療期間は、お口全体の治療によって差は出ますが、おおよそ1ヵ月から長くて2ヵ月、3ヵ月程です。
前歯数本を治療する際には、1ヵ月程で終わることが多いです。
しかし、神経の処置や噛み合わせの治療も並行して行う場合は治療期間が長くなり、3ヵ月かかることもあります。
治療期間中は仮歯を使用するため、見た目や食生活の心配はないでしょう。品質の高いセラミッククラウンでの治療をするためにも必要な期間といえますので、通院するスケジュールにも気を配りながら治療を進めるのがよいです。
まとめ
セラミッククラウンは、天然歯を削って土台にし、セラミックで作られた被せ物をする治療法です。
オールセラミッククラウンやメタルボンドセラミッククラウンなど、さまざまな種類がありその一つひとつに特徴があります。
治療する歯の場所や生活に合わせて選ぶ必要があり、診察の際に歯科医師と相談することが大事です。
費用も高額なため、事前に費用についての相談もした方がよいでしょう。
見た目にも審美性がとても高く、歯の治療をしたことに気づかれにくいです。
ただし、割れてしまうこともあるので定期メンテナンスは必要であり、治療後も定期的に歯科医院での診察を受けてください。
健康的な食生活や美しい歯を長く維持していくためにも、セラミッククラウンでの治療を考えている方は歯科医院で相談してみてください。
参考文献