歯をきれいに見せる治療である、セラミックを用いたラミネートべニアという治療を聞いたことはありますか?この記事では、ラミネートべニアの特徴やメリット、デメリットなどについて詳しく解説します。
ラミネートべニアとは
歯科治療で行われるラミネートべニアとは、セラミックの薄い歯を天然の歯の表面に装着する治療で、セラミックべニアとも呼ばれます。
歯をすぐに白く美しい状態にすることができる点が大きなメリットで、審美治療の1つとして行われている歯科医院が多く、自費診療での治療となります。
ラミネートべニアの方法
ラミネートべニアは、患者さん一人ひとりに合わせてオーダーメイドで作成したセラミックの薄い歯を、歯科用の専用接着剤で張り付ける治療です。
ラミネートベニアの治療では、セラミックの歯を上から張り付けるため、一般的に歯の表面を少量削ることで高さを調整します。 天然の歯を削って治療が行われるため、歯の健康に問題が生じるのではと心配に感じる方もいるかと思いますが、削る量はおよそ0.3〜1mmと少量なため、歯の健康には影響がないとされています。
歯科医院によっては歯を削らず、上から装着するだけの方法で治療を行っている場合もありますが、この場合はセラミックの歯の分、厚みが出る形となります。 実際に治療を行う際には、まずカウンセリングでどのような仕上がりを目指すか、どのような治療法で行うかを決定した後、歯を薄く削ってから型取りを行い、歯型や目指す仕上がりに応じて歯科技工士がセラミックのチップを作り、それを歯科用の接着剤で張り付けていくという手順になります。
セラミックのチップを作る期間が数日から2週間程度必要となるため、この期間は仮歯を装着することで日常生活に問題がないように対応します。
ラミネートべニアで使用されるセラミックとは
ラミネートベニアの治療で使用される歯科用のセラミックは、歯の被せ物や義歯などを作成する際にもよく用いられるもので、審美性や機能性に優れていることから、自然かつ丈夫な人工の歯を作る場合に利用されます。
セラミックは金属や樹脂などの有機質材料ではない、無機物が原料の素材で、適度な透明感がある白さを表現できることから、天然の歯と同じような、自然な見た目の白い歯を作ることができます。
また、セラミックはとても頑丈なため強く噛んでも割れたりといったトラブルが少ないことや、表面が滑らかなため汚れが付着しにくく、歯磨きによって簡単に汚れを除去できるため、着色やむし歯、歯周病といったトラブルが生じにくくなる点が特徴となっています。
ラミネートべニアの治療にかかる期間
ラミネートベニアの治療では、歯を削った後で型取りを行い、その歯型のデータをもとに歯に張り付けるチップを歯科技工士が作成していくため、数日から2週間程度の治療期間が必要となります。
チップを作成する歯科技工士が歯科医院に常駐している場合は早めに治療を進めることが可能となりますが、歯科医院で契約している歯科技工士に作成を依頼して対応を行っているクリニックの場合、チップの配送期間なども必要になるため、治療期間が長くなりやすいといえるでしょう。
治療前に歯を削る際や、歯にチップを張り付ける際にはそこまで時間がかからないため、実質的に治療にかかる期間はチップが完成するのを待つ間ということになります。
なお、歯を削ってからチップを取り付けるまでの間は、日常生活への問題が出ないように仮歯を装着して過ごす形となります。
ラミネートべニアで得られる効果やメリット
ラミネートベニアの治療で得られる効果やメリットについてご紹介します。
見た目が美しくなる
ラミネートベニアの治療による最大のメリットは、やはり見た目が美しくなるという点です。
白く透明感のあるチップを歯の表面に装着することで、白くきれいな歯を手に入れることができる点はもちろんのこと、セラミックによるチップの形次第で、歯の隙間を埋めたり、歯の形のバランスを整えたり、歯の捻じれを改善したりといった対応が可能になるため、歯並びも美しく見せることができます。
変色しにくい
ラミネートベニアのチップの材料であるセラミックは、滑らかでつやがあり、表面に汚れが付着しにくいという特徴があります。
汚れが落ちやすくなるため、ラミネートベニアをつけている側からはむし歯にもなりにくくなるといえます。
た、セラミック(陶器)のお皿などを思い浮かべてみるとわかりやすいのですが、セラミックは汚れが内部に入り込まないため、天然の歯のように、歯の表面をクリーニングしても落ちないような着色をするということがありません。
さらに、天然の歯は酸や糖質などによって歯の表面が溶けて脱灰を起こすため、それによって歯が白く濁るといったケースもありますが、セラミックの場合はこうした変化もありませんので、いつでも透明感のある白さを維持することができます。
加えて、天然の歯は健康状態などによって内部からの変色をおこすことがありますが、ラミネートベニアを行っている歯は内部からの変化も目立たなくなります。
発音などへの影響
前歯の隙間などが発音に影響しているような方の場合、ラミネートベニアで隙間を小さくすることで、発音を改善させることができます。
場合によっては、ラミネートベニアの治療で噛み合わせを改善し、食事の際によく噛めるようにすることもできるでしょう。
歯の隙間を適切に調整することで、食べかすなどが歯に挟まりにくくなるといった効果が発揮されるケースもあります。
ラミネートべニアのデメリットや注意点
ラミネートベニアの治療は手軽に歯を美しくすることができるものですが、一方で治療には下記のようなデメリットや注意点もあります。
治療を検討する際には、メリットだけではなく、デメリットもしっかりと理解したうえで、本当に治療を受けるかどうかを考えるとよいでしょう。
歯を削る
ラミネートベニアの治療では、歯に付着させるセラミックのチップの分、歯に厚みが増してしまうため、装着時の違和感などを改善するために歯を0.3~1mm程度削る場合があります。
歯は一度削ってしまうと、自然に元の状態に戻るということが基本的にないため、治療前の状態に戻したいと希望しても難しくなります。
ラミネートベニアの治療で歯を削る量については、歯の機能的には問題がない量とされていますが、天然の歯に負担がかかる治療であるため、これが1つめのデメリットです。
チップをつけた状態で違和感などがなく、見た目の盛り上がりも少ない場合などでは歯を削らずに治療が可能な場合もありますので、極力削りたくないという方は、削らない治療に対応している歯科医院に相談してみるとよいでしょう。
人工歯には寿命がある
セラミックで作られた人工の歯は丈夫で長持ちではありますが、天然の歯のように栄養を受け取って代謝が行われたり、再石灰化が行われるものではないため、装着した直後から、少しずつ劣化していきます。
食事の際の負担などによってダメージが蓄積されていくと、最終的には寿命を向かえて欠けてしまったりといった状態になる可能性があり、その際には修正のための治療が必要となります。
適切なケアが必要
ラミネートベニアの治療を行うと、歯の表面に汚れが付着しにくくなり、変色や表面からのむし歯といったトラブルが起こりにくくなりますが、ラミネートベニアの治療では歯の裏側などは天然の歯のままですので、歯磨きやフロスなどを使用した適切なケアは変わらず必要です。
適切なケアが必要なのは治療を行う前も同じですが、表面に汚れなどが付きにくくなるため、歯の健康状態が見えにくくなってしまい、日頃のケアを怠りがちになってしまったり、トラブルに気付くのが遅れて歯科医院に通うのが遅れてしまったりといった可能性がある点はデメリットといえるでしょう。
なお、ラミネートベニアをしても、歯周病で歯茎が退縮してしまうとラミネートベニアで覆われていない根本の部分が見えるようになってしまったり、歯茎が変色してしまったりといった変化がおこると口元の美しさが損なわれてしまうため、審美性を維持するためには普段のしっかりとしたケアや、定期的に歯科医院での専門的なケアを受けるようにしましょう。
治療を受けられない場合がある
歯の健康状態に問題がある場合や、歯並びの状態によってはラミネートベニアの治療を受けられないことがあります。
具体的には、まず出っ歯の場合、そのうえにチップを張り付けることで状態が悪化してしまう可能性があるため、治療を受けられない可能性があります。
また、歯が重なってしまっているような場合は、そもそも治療が困難なケースがあるでしょう。歯並びが悪くて治療を受けられないという場合には、先に歯列矯正を行って歯並びをある程度整えてからであれば、ラミネートベニアが可能になります。
また、むし歯や歯周病といった疾患が生じている場合、しっかりと症状を治してから治療を行わないと、治療後のトラブルにつながりやすいため、先に治療を行う必要があります。
この場合はしっかりとむし歯などが治ればラミネートベニアを受けられる可能性があるので、歯科医師と治療プランについて相談してみるとよいでしょう。
そのほかにも、前歯で歯ぎしりや強く噛むクセがある方の場合、ラミネートベニアの治療箇所に強い負担がかかって、歯が割れたり、チップが剥がれたりしてしまう可能性があるため、治療を受けられない可能性があります。
歯科医師によって仕上がりに差がある
ラミネートベニアの治療は患者さん一人ひとりの歯型に合わせてオーダーメイドのチップを作成して進めるため、チップのデザインなどによって仕上がりに大きく差がでます。
また、歯を削る量などについても歯科医師の技量による影響を受けるため、治療を受ける際にはしっかりと症例経験をもち、丁寧に治療を行ってくれる歯科医師の診療を受けるようにするとよいでしょう。
歯科医院によって金額も異なる
ラミネートベニアの治療は美容目的であるため、保険診療ではなく自費診療にて行われます。そのため、治療を受ける際の金額についても歯科医院によってバラつきがあるため、治療を受ける際はコスト面を含めて納得感のある治療を受けるようにするとよいでしょう。
ラミネートべニア以外の審美治療について
歯を白くしたいという希望を叶えるための治療法には、ラミネートベニア以外にもさまざまな方法があります。
それぞれについてご紹介します。
セラミッククラウン
セラミッククラウンは、セラミック素材で作られたクラウン(被せ物)によって、歯を白くする治療法です。
ラミネートベニアは歯の表面だけを整えるものですが、セラミッククラウンは歯の全周を削り、そのうえからセラミックの義歯をかぶせて固定する方法となっているため、ある程度自由に歯の形を整えることができます。
出っ歯や、大きく歯の隙間が空いているといったラミネートベニアでの治療が難しいケースでも、セラミッククラウンなら対応できる可能性もあります。 ラミネートベニアと比べて歯を削る量が多いため、自分の歯をなるべく残したいという方には不向きですが、変色などの可能性が少ない白い歯を手に入れたいという方には向いている治療といえるでしょう。
オフィスホワイトニング
オフィスホワイトニングは、歯科医院で行われる歯のホワイトニング治療です。
専用の薬剤を塗って特殊な光を当てることで、歯の内部の着色まで落とし、歯の色を白くしていくことができます。
ただし、一回の治療で理想的な白さを達成する事は難しく、何度か通院しての治療が必要になることや、治療中に歯がしみるような痛みを感じる場合がある点、また、ホワイトニングの治療直後はコーヒーなど着色しやすい飲食物を避ける必要があるなどのデメリットがあります。
ホームホワイトニング
処方された専用のホワイトニング剤をマウスピースの中に入れ、一定時間装着することで行う、自宅でのホワイトニング治療です。
歯科医院で処方される薬剤を使用するため、しっかりと歯を白くしていくことが可能です。 また、歯が求める白さになったら使用をやめればいいので、白さをコントロールしやすい点もメリットとなっています。
歯のクリーニング
歯科医院で行われる、専門的な歯のクリーニングを受けることで、歯の表面についた汚れを落として歯を白く導くことができます。
特に、ステインなどによる歯の表面の汚れによって歯が変色している方の場合、歯のクリーニングを行うだけでもしっかりと白くすることが期待できます。
ただし、オフィスホワイトニングのように歯の内部に蓄積された色を改善することはできないため、真っ白な歯を目指したいという方には不向きです。
編集部まとめ
セラミックのチップを歯の表面にくっつけて、白い歯を手軽に手に入れることができるラミネートベニアは、さまざまなメリットがある一方で、健康な歯を削る場合があるなど、デメリットやリスクも存在する治療法です。
歯を白くするための治療にはほかにもさまざまな方法がありますので、まずは治療を取り扱う歯科医院に相談し、自分に適した治療を検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献