セラミック治療は、むし歯治療や欠けた歯の治療の際に、セラミックを使用した治療のことを指します。セラミック治療は、多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。 本記事では、セラミック治療について以下の点を中心にご紹介します!
- 歯のセラミック治療とは
- セラミック治療のメリット・デメリット
- 上の歯だけセラミック治療した場合の費用
セラミック治療について理解するためにもご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
歯のセラミック治療とは?
セラミック治療は、銀歯や樹脂(プラスチック)素材を使わずに、セラミックという陶器に似た素材を用いて行われる歯科治療です。この方法では、セラミックをむし歯治療や歯の欠損修復に利用します。具体的には、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)として使用されています。
また、以前銀歯で治療した部分をセラミックへ交換する場合もあります。セラミックにはさまざまな種類があるため、歯科医師と相談しながら、自身に合うものを選択することが大切です。
セラミックと銀歯の違い
セラミックと銀歯は、いずれも歯科治療で利用される材料ですが、特性と用途には大きな違いがあり、自身の状態に合った材料を選択することが大切です。
以下に、主な違いを解説します。
【見た目】
セラミック:審美性が高く、天然の歯に近い見た目で色や透明感が自然なため、治療後もセラミックか天然歯と見分けがつかない仕上がりになります。
銀歯:銀色の金属が特徴の見た目ですが、前歯部に使用されることの多い硬質レジン前装冠という銀歯の場合は、白いプラスチック樹脂が銀歯の表面に張り付けられており、できる限り銀色が目立たないようになっています。
【耐久性と経年変化】
セラミック:色の変化や変形がほとんどなく、硬く破損しにくい材質で耐久性があるため、適切にケアが行われていれば10年以上の長期間にわたって元の状態を保持します。
銀歯:主に金銀パラジウム合金と呼ばれる金属で強度のある材質ですが、時間経過とともに金属疲労や変形が生じるため、耐用年数は5〜7年程度とされています。銀歯が変形すると隙間からむし歯が再発するリスクが高まります。
【金属アレルギー】
セラミック:金属を使用していないため、金属アレルギーの心配がありません。
銀歯:金属成分が溶け出すことにより、金属アレルギーの原因となることがあります。また、歯茎の変色(メタルタトゥー)が起こる可能性があります。
【費用】
セラミック:保険適用外であることが多いため、費用は高額です。
銀歯:保険適用の範囲内で使用できるため、費用が抑えられます。先述した硬質レジン前装冠の場合は、奥歯の使用では保険適用外ですが、前歯に用いた場合は保険が適用されます。
これらの違いから、患者さんのニーズや健康状態、予算に応じて適切な治療方法を選択することが重要です。
セラミックの種類
セラミックにはさまざまな種類があり、審美性や機能性に違いがあります。セラミック治療では、どのような素材が用いられるのでしょうか?
以下でそれぞれの素材の特徴を見ていきましょう。
オールセラミック
オールセラミックは、歯科材料のなかでも天然歯に近い見た目の素材です。
その審美性の高さから、特に前歯の治療に推奨されており、白く透明感のある美しい仕上がりが期待でき、美しい見た目を重視する方には適切な素材です。
しかし、オールセラミックは強い衝撃に弱いため、歯ぎりしや食いしばりの癖がある患者さんや噛み合わせなどで強い力がかかりやすい奥歯には適さないデメリットもあります。
ジルコニア
ジルコニアは人工ダイヤモンドとも称される程の高い強度を誇るセラミック材料で、主成分は二酸化ジルコニウムです。その硬度から主に奥歯の被せ物に選ばれることが多く、天然歯よりも一層白い色が特徴です。
ジルコニアを用いた治療には、フルジルコニアとジルコニアレイヤリングセラミックの二つの方法があります。
フルジルコニアはジルコニアのみで被せ物を作る技法で、ジルコニアレイヤリングセラミックは、ジルコニアの土台にさらにセラミックを被せる方法です。
ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックは、プラスチックとセラミックを混ぜ合わせた素材です。天然歯に近い硬さを持ち、周囲の歯を傷つけにくい特徴があります。また、変色しづらく、セラミックとプラスチックの利点を兼ね備えています。
ハイブリッドセラミックは、オールセラミックやジルコニアよりも強度面で劣り、経年的な摩耗や変色、プラーク(歯垢)の付着が避けられませんが、セラミックと歯科用プラスチックであるレジンの中間的な性質を持つため、費用を抑えたい方に推奨されています。
また、奥歯(第一大臼歯、第二大臼歯)の場合、一定の条件の患者さんは保険適用でハイブリッドセラミックでの治療が行えます。
メタルボンド
メタルボンドは、表面がセラミック、裏側が金属で構成されています。以前は前歯の治療に広く用いられていましたが、オールセラミックの登場により現在の使用頻度は減少しています。
メタルボンドは、金属の強度とセラミックの審美性を兼ね備えた素材ですが、歯と歯茎の境に黒ずみが生じ、金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクなどのデメリットもあるため、使用には注意が必要です。
セラミック治療のメリット
セラミック治療にはどのようなメリットがあるのでしょうか?メリットごとに詳しく解説します。
金属アレルギーの方でも治療が受けられる
セラミック治療のメリットの二つ目は、金属アレルギーの方でも治療が受けられる点です。 セラミック治療では金属を使用していないため金属アレルギーの心配がありません。
このように、セラミックを使用した治療は、美しさだけでなく、口内環境を健康的に保つ助けともなります。
見た目が自然
セラミック治療のメリットの三つ目は、見た目が自然な点です。 これまで述べてきたように、セラミックは陶器製で、白さと艶が天然歯に近似しているため、治療を受けたことが見た目からはほとんどわかりません。
さらに、セラミックは変色しにくい性質を持っており、長期にわたってその白さを維持できます。
これらの特性により、セラミック治療は見た目の自然さを求める方に選ばれています。
汚れが付きにくく経年変化が起きにくい
セラミック治療のメリットの四つ目は、汚れが付きにくく経年変化が起きにくい点です。
セラミック製の歯は、汚れが付きにくく、変形や変色が起こりにくいとされています。そのため、しっかりと日々のケアを行えば長期間にわたって白く美しい状態を保てます。
セラミック治療のデメリット
セラミック治療のメリットについて解説しましたが、以下でデメリットも見ていきましょう。
治療費が高額
セラミック治療のデメリットの一つ目は、治療費が高額な点です。
セラミック治療は保険が適用されない自由診療であることが多く、全額自己負担となります。そして、高品質な材料の使用のほか、セラミックを加工して患者さん個々のオーダーメードの加工が必要で、手間と工程がかかり高度な技術が必要なため、高額になります。
高額な初期投資は必要ですが、セラミックの耐久性と再治療のリスクが低いため、長期的に見れば全体の歯科治療費を抑える効果も期待できます。
歯を削る必要がある
セラミック治療のデメリットの二つ目は、歯を削る必要がある点です。 セラミックは薄くすると割れやすくなるため、適切な強度を確保するには一定の厚みが必要です。このため、被せ物や詰め物を施す際には、元の歯を多く削る必要があります。削られた歯はもとに戻ることはなく、その後の歯の健康にも影響を与える可能性があります。
したがって、セラミック治療を選択する際には、このような点を考慮し、長期的な視点での利益とリスクを慎重に評価することが大切です。
割れやすい
セラミック治療のデメリットの三つ目は、割れやすい点です。
セラミックは硬くて耐久性が高い材料ですが、過度の衝撃が加わると割れるリスクがあります。問題に対処するためには、歯ぎしりが激しい方はマウスピースの着用や、より強度の高いセラミック材料の選択が推奨されます。
また、先述したように、セラミックの被せ物や詰め物には種類があり、使用する場所に応じて適切なタイプを選ぶことが大切です。
セラミックを選ぶ際は、これらの点を考慮し、長期的な安全性と機能性を確認することが重要です。
上の歯をセラミック治療するときの費用
最後に、上の歯をセラミック治療をするときの費用を以下で解説します。
前歯を治療する場合の費用相場
前歯のセラミック治療における費用は、使用されるセラミックのタイプによって大きく異なります。ここでは、オールセラミック、ジルコニアセラミック(フルジルコニア)、ハイブリッドセラミック、メタルボンド(PFM)の4種類について解説します。
- オールセラミック: この素材での治療は、クラウン1本あたり10万円〜20万円程度、インレーは5万円〜6万円程度です。オールセラミックは前歯の見た目を自然に保つために選ばれます。
- ジルコニアセラミック: ジルコニアセラミックのクラウンは1本あたり8万6,000円〜10万8,000円程度、インレーは4万8,000円〜6万4,000円程度です。ジルコニアは、強度が高いため、長期的な使用におすすめです。
- ハイブリッドセラミック: この新しい材料は、クラウン1本あたり5万円〜13万円程度、インレーは2万円〜5万円程度で、幅広いニーズに応える選択肢となっています。
- メタルボンド: メタルボンドのクラウンは1本あたり8万7,000円〜13万2,000円程度、インレーは7万2,000円〜9万2,000円程度です。
これらの費用は、治療を提供するクリニックの地域や設備、技術力によって変動することがあります。そのため、治療前にはクリニックで直接相談し、詳細な見積もりを取ることが重要です。
前歯と奥歯での費用に違いがある
セラミック治療の前歯と奥歯の治療費には違いがあります。前歯は見た目が重視されるため、細部にわたる配慮が求められ、費用が高くなります。また、歯茎との調和も重要なため、さらに治療費を押し上げる要因となります。
一方、奥歯のセラミック治療は、機能性が重視されます。奥歯は食べ物を噛む際に強度と耐久性が必要ですが、前歯程見た目に配慮する必要がないため、奥歯の治療費は前歯より低額になる傾向にあります。
このように、前歯のセラミック治療は奥歯より高額となるため、治療を受ける際は費用の差を考慮する必要があります。
歯科医院によって費用に差がある
セラミック治療の費用は、歯科医師の技術力や使用する材料、クリニックの立地や設備によって左右されるため歯科医院によって大きく異なります。特に前歯のセラミック治療は見た目の美しさが重視されるため、仕上がりの質が高いと評価される医師の技術料が費用に大きく反映される傾向にあります。
また、セラミック治療は保険適用外の自費診療であるため、各クリニックが独自の料金設定を行っています。
このように、セラミック治療は歯科医院によって費用に差があることを理解しておくことが大切です。
まとめ
ここまでに上の歯だけのセラミック治療についてお伝えしてきました。上の歯だけのセラミック治療の要点をまとめると以下のとおりです。
- セラミック治療は、陶器に似た素材を用いて行われる歯科治療
- セラミック治療のメリットには、金属アレルギーの方でも治療が受けられる、見た目が自然、汚れが付きにくく経年変化が起きにくいなどが挙げられ、デメリットには、治療費が高額、歯を削る必要がある、割れやすいなどが挙げられる
- 上の歯だけセラミック治療した場合の費用は、治療を受ける歯科医院が設定している金額や使用されるセラミックのタイプによって大きく異なるため、歯科医師とよく相談して検討することが大切
セラミック治療には、さまざまなメリットがありますが、デメリットもあるため、治療する際はご自身のニーズや条件を熟考し、信頼できる歯科医師と相談することが重要です。治療に使用される素材には複数の選択肢があるため、セラミック治療がよい選択かどうかを検討しましょう。
ここまでお読みいただきありがとうございました。