口臭は、日常生活や仕事の際、ほかの人とコミュニケーションで支障をきたすことがあります。厚生労働省による2016年歯科疾患実態調査では、15歳以上の約10%が口臭に悩んでいるという結果となりました。
口臭が改善しない場合、歯医者で治療できる可能性があるのをご存じでしょうか。本記事では、口臭の種類や原因を詳しく解説します。
この記事を読めば、歯医者での治療方法や自宅で可能な口臭ケアについても知ることができます。口臭でお悩みの方は、ぜひ本記事を読んでみてください。
口臭の種類や原因
- 病的口臭について教えてください。
- 口臭には病的な原因がある場合があります。原因は、以下のとおりです。
- 歯周病
- むし歯
- 歯垢:歯の周りにつく細菌のかたまり
- 舌苔:舌の表面につく苔状の細菌のかたまり
- 歯石
- 唾液の減少
- 義歯の清掃不良
- 副鼻腔炎や咽喉がんなどの耳鼻咽喉系疾患
- 気管支炎や気管支拡張症などの呼吸器系疾患
- 胃潰瘍や胃がんなどの消化器系疾患
- 糖尿病
- 肝臓疾患
病的口臭の約8割以上は口腔内にあるとされています。特に歯周病の治療で、口臭を抑えられることが少なくありません。
病的口臭の場合、それぞれ疾患に対する治療によって、口臭を減らしたり治したりすることが可能です。全身疾患の兆候として呼気経由の口臭が起こる可能性がありますが、限定的とされています。口臭以外に何らかの症状や原因に心あたりのある方は、疾患に対する医療機関を受診しましょう。
- 生理的口臭について教えてください。
- 生理的口臭は、主に揮発性硫黄化合物が原因で、誰でも持っている自然な臭いとされています。生理的口臭が強まるのは、以下のとおりです。
- 起床した直後
- お腹が空いているとき
- 緊張しているとき
1日中生理的口臭が続くことはありません。唾液の分泌が減少することで、細菌の増殖が起こり、揮発性硫黄化合物が大量に生成されるとき生理的口臭が強まります。唾液にはさまざまな大切な役割があります。
- 食物を消化する
- 味覚を促進させる
- 食べ物のカスや汚れを洗い流す
- 発音や会話を円滑にする
- 細菌の繁殖を抑える
- 歯の表面に被膜を作りむし歯を予防する
水分摂取をしたりガムを噛んだりして、唾液不足で口腔内が乾燥しないように心がけましょう。
生理的口臭は、歯磨き・食事・水分摂取などで改善されるため、基本的には治療の必要はないとされています。
- 心理的口臭について教えてください。
- 心理的口臭は、周囲は口臭を感じないのに、自分は口臭があると思い込むのが原因とされています。気になる場合はセルフケアを心がけたり、歯医者を受診したりして、口臭を必要以上に気にしないようにしましょう。
精神的な問題によって心理的口臭が引き起こされた場合は、早めに精神科や心療内科などのカウンセリングを受けるのがおすすめです。
- どのような嗜好品が口臭の原因になりやすいですか?
- 口臭の原因となる主な嗜好品は、以下のとおりです。
- ニンニク
- ネギ
- 脂っこいもの
- 酒
- タバコ
嗜好品による口臭は一時的です。時間の経過とともに口臭が消えるため、治療の必要はありません。
タバコに含まれるニコチンには唾液の分泌量を抑制する作用があるため、口臭が強くなるとされています。
口臭が気になる方は、嗜好品を見直し、口臭の原因となる嗜好品を摂取しないようにしましょう。
暴飲暴食や脂っこいものの摂取を控え、消化によいものを食べるのも効果的です。
また、口臭予防に効果的な嗜好品は、以下のとおりです。- リンゴ
- レモン
- パイナップル
- オレンジ
- 緑茶
口臭は歯医者で治療できる?
- 口臭は歯医者で治療できますか?
- 歯周病・むし歯・歯垢・歯石など、口臭の原因がお口にある場合は歯医者で治療可能です。
歯周病が進行すると、歯周ポケットに揮発性硫黄化合物の原因となる歯垢や歯石が溜まってしまいます。むし歯や古い詰め物、かぶせ物に歯垢が溜まった場合も、同様です。
歯医者でクリーニングや治療してもらうことで、口臭の改善が期待できます。歯周病が重症化すると口臭が深刻なものになります。症状がない場合でも、定期的に歯医者でチェックしてもらうようにしましょう。
- 歯医者で口臭を測定してもらえますか?
- 口臭検査に対応している歯医者では、口臭の測定が可能です。
口臭測定では、揮発性硫黄化合物を硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイドの3つの成分ガスに分離して測定します。
口臭は、口腔内の水分量と関連があるため、口腔水分量検査あるいは唾液検査も行います。
その他、口臭の測定に必要となる口腔内検査は以下のとおりです。- 医師の視診
- 呼気の確認
- 歯周ポケット検査
口臭測定でさまざまな検査を行うため、ご自身のお口の状態を知ることができます。
むし歯や歯周病のリスクも確認できるため、口臭が気になる方は歯医者で相談してみましょう。
- 歯医者での口臭治療の内容を教えてください。
- 口臭検査の結果、口臭の原因がお口にあることがわかったら、歯医者で治療可能です。
口臭治療可能な原因は、以下のとおりです。- 歯周病
- むし歯
- 歯並び
- 親知らず
- 過剰歯
- 詰め物・かぶせ物
歯石や歯垢が溜まっていないか、口腔内の粘膜に発赤・腫脹・びらん・潰瘍などがないかなどを確認します。
また、舌の粘膜組織を守るために必要な、舌苔の状態確認も重要です。
舌苔が口臭の原因になる場合もあるためです。
お口の状態をしっかりと把握した後、お口のクリーニングをして、歯石や歯垢を取り除きます。
歯周病・歯肉炎・むし歯の症状がある場合は、必要に応じて患者さんに合った歯科治療を行います。
- 歯医者での口臭治療は保険が適用されますか?
- 口臭は厚生労働省で定める疾患に認定されていないため、基本的には保険適用外です。
口臭外来では、検査やカウンセリングで、患者さんの口臭・お口の状態・健康状態などを確認します。
さまざまな検査の結果、原因となる疾患や症状が見つかった場合は、保険適用で治療を受けられることがあります。
ただし、歯科医院によって対応が異なることがあるため、事前に確認しましょう。
自分でできる口臭ケア方法
- 自分でできる口臭ケアの方法を教えてください。
- 歯周病やむし歯の予防のためには、毎食後の歯磨きが重要です。
就寝前には歯磨きだけではなく、歯垢・歯石や舌苔を取るために歯間ブラシやフロス、舌ブラシなどの使用が効果的です。お口のなかを清潔にしておくと、細菌の繁殖を抑えることができます。
特に就寝中に口呼吸している方はお口のなかが乾燥しやすいため、清潔にすることで口臭予防が可能です。唾液の分泌量を増やすために、食事の際にはゆっくりよく噛んで食事することを心がけましょう。
口臭が気になるときに、ガムを食べることにより唾液量を増やしたり、こまめに水分摂取したりすることも口臭予防に効果的です。
- 今すぐに口臭を消す即効性の高い方法はありますか?
- ミント風味の薬用成分の入った口腔内洗浄液で、一時的に口臭を消す効果があります。
しかし病的口臭の場合、歯周病やむし歯などの原因を治療しないと、根本的な解決にはなりません。
定期的に歯医者を受診し、治療や予防のためのチェックやクリーニングを受けるようにしましょう。
編集部まとめ
口臭には、生理的口臭・病的口臭・心理的口臭という種類があります。歯医者で治療できるのは、歯周病・むし歯など口腔内に原因がある病的口臭の場合です。
口臭の原因は主に口腔系で、歯周病であることが少なくありません。歯垢や歯石をしっかりと落とす・唾液の分泌量を増やす・舌苔を適切に掃除するなどが、口臭の治療や予防に効果的です。
口臭が気になる方は、歯医者で検査を受けることができます。検査の結果に応じて、医療機関を受診して治療してもらいましょう。定期的に歯医者を受診して、お口のチェックを受けるのがおすすめです。
参考文献