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奥歯に入れ歯を入れるメリット・デメリットは?ケア方法を併せて解説します

奥歯に入れ歯を入れるメリット・デメリットは?ケア方法を併せて解説します

歯の健康に不安を感じたことはありませんか?特に奥歯を失うと、食事や会話に支障をきたすかもしれません。そんなとき、奥歯の入れ歯は選択肢の一つです。
本記事では奥歯の入れ歯について以下の点を中心にご紹介します。

  • 奥歯の入れ歯の種類
  • 奥歯に入れ歯を入れるメリット
  • 奥歯に入れ歯を入れるデメリット

奥歯の入れ歯について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

奥歯が持つ役割

奥歯が持つ役割

奥歯の重要性は、私たちの日常生活に深く根ざしています。主な役割は、食べ物を効率的に砕き、消化を助けることですが、それだけにとどまりません。

奥歯は、体全体のバランスと密接に関連しています。重い物を持ち上げる際、力は奥歯を通じて分散され、体全体に伝わります。この機能を可能にするのが、奥歯の広い噛む面と複数の頑丈な根です。

さらに、奥歯は顎関節の保護者としても機能します。適切な噛み合わせを維持することで、顎関節への過度な負担を軽減し、顎の健康を守ります。

しかし、奥歯はその位置ゆえに手入れが難しく、むし歯のリスクが高いという弱点があります。また、強い噛む力がかかるため、損傷や喪失のリスクも高くなります。 そのため、奥歯の健康維持には特別な注意が必要です。

奥歯が抜けた状態のまま放置するとどうなるか

奥歯が抜けた状態のまま放置するとどうなるか

奥歯が抜けた状態のまま放置してしまうと、全身にさまざまな症状が現れる可能性があります。以下で詳しく解説します。

歯並びが悪くなる

奥歯を失った状態を放置すると、歯並びに影響を及ぼす可能性があります。
まず、失われた奥歯の対となる歯が、噛み合う相手を失うことで徐々に伸びてしまいます。歯が本来の位置を保つために必要な自然な圧力がなくなるためです。

同時に、抜けた歯の隣接する歯が、空いたスペースに向かって傾き始めます。傾きは時間とともに進行し、やがてさらに離れた歯にも影響を及ぼします。極端な場合、歯を支える骨まで変形することもあります。

噛み合わせのバランスにも影響があるため顎関節症のリスクも高まり、お口を開閉する際の不快感や痛みを引き起こす可能性があります。

むし歯や歯周病になりやすい

奥歯の喪失を放置すると、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
まず、奥歯の欠損により噛み合わせのバランスが崩れると残存歯の配列に乱れが生じます。歯の間に不規則な隙間が生まれ、食べかすや細菌が溜まりやすい環境が形成されます。

さらに重要なのは、奥歯の喪失が唾液の分泌に与える影響です。奥歯で食べ物をしっかり噛むことができなくなると、唾液の分泌量が減少します。唾液は口腔内を自然に洗浄し、細菌の繁殖を抑制する重要な役割を担っています。その分泌が減ることで、口腔内の自浄作用が低下し、細菌が増殖しやすい環境が整ってしまいます。

結果、むし歯や歯周病のリスクが急激に高まります。主に残存歯の周辺や歯肉との境界部分は、細菌の温床となりやすく、注意が必要です。

消化器官に負担がかかる

奥歯の喪失は、一見すると口腔内の問題に限定されると思われがちですが、実際には全身の健康に広範な影響を及ぼします。
たった1本の奥歯を失うだけで、人間の咀嚼能力は驚くべきことに30〜40%も低下するといわれています。咀嚼力の低下は、食事の質を大きく変えてしまいます。

十分に噛み砕かれていない食べ物は、胃や腸に大きな負担をかけます。本来、口腔内で行われるべき食物の前処理が不十分なまま、より大きな塊として消化器官に送られるからです。よって、胃酸の過剰分泌や消化不良、さらには栄養吸収の効率低下などの問題が生じる可能性があります。

また、咀嚼回数の減少は唾液分泌量の低下につながります。唾液には消化を助ける酵素が含まれているため、不足すると消化プロセス全体に悪影響を及ぼします。

このような状態が長期間続くと、胃腸の不調や栄養不足、さらには全身の健康状態の悪化にもつながる可能性があります。

噛み合わせが悪くなる

奥歯が抜けると、残存歯に過度の負担がかかります。歯が本来の位置から移動し始め、全体的な噛み合わせのバランスが崩れていきます。変化は緩やかに進行するため、気付いたときにはすでに大きな問題となっていることがあります。

噛み合わせの悪化は、単に見た目の問題だけでなく、咀嚼機能の低下や顎関節への過度の負担など、さまざまな機能障害を引き起こす可能性があります。さらに、不適切な噛み合わせは新たなむし歯や歯周病のリスクを高める要因にもなります。改善するには、歯列矯正が必要になることがあります。

認知症や転倒のリスク

奥歯での咀嚼は脳への重要な刺激源です。刺激が減少すると、脳の活性化が妨げられ、認知機能の低下につながる可能性があります。また、噛む力の低下により食事の選択肢が制限され、脳の健康に必要な栄養素の摂取が不足する恐れがあります。

さらに、奥歯喪失の主な原因である歯周病は、慢性的な炎症を引き起こし、脳に悪影響を及ぼす可能性があります。最近の研究では、歯周病菌が直接アルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性も示唆されています。

加えて、奥歯の喪失は顎や口腔周辺の筋肉バランスを崩し、姿勢の悪化や体のバランス感覚の低下を招く可能性があり、高齢者において転倒のリスクが高まる恐れがあります。

奥歯の入れ歯の種類

奥歯の入れ歯の種類

奥歯の入れ歯には、保険診療と自費診療があります。 以下で詳しく解説します。

保険診療

保険診療による奥歯の入れ歯は、基本的な咀嚼機能の回復を目的として設計されています。
主にプラスチック樹脂を使用して製作され、奥歯のみを失った場合には部分入れ歯が適用されます。部分入れ歯の特徴として、金属製のクラスプ(バネ)が付いており、周囲の健康な歯に固定されます。

保険診療の入れ歯は、厚生労働省によって定められた基準に基づいて製作されるため、素材や機能の選択に制限があります。しかし、制限がある一方で、患者さんの自己負担額を抑えることが期待できるメリットがあります。

自費診療

自費診療による奥歯の入れ歯は、患者さんの個々のニーズに合わせた選択肢を提供します。全額自己負担となりますが、素材や設計の自由度が高く、快適性や審美性を重視できる点が特徴です。

代表的な種類には、耐久性に考慮された金属床義歯、安定感のある磁石アタッチメント付き入れ歯、金属アレルギーの心配がないノンクラスプデンチャー、装着感のよいシリコン義歯などがあります。

特筆すべきは、ドイツ発祥のテレスコープシステムです。リーゲルテレスコープ、コーヌステレスコープ、レジリエンツテレスコープの3種類があり、それぞれ異なる固定方式を採用しています。これらは金属のバネを使用せず、フィット感が高く、見た目も自然です。

奥歯に入れ歯を入れるメリット

奥歯に入れ歯を入れるメリット

入れ歯は、失われた機能を効果的に補完し、多くのメリットをもたらすとされています。
以下では、奥歯に入れ歯を入れるメリットについて解説します。

保険が適用されることがある

レジン床義歯と呼ばれるタイプの入れ歯は、多くの場合保険診療の対象となるとされています。レジン床義歯は歯茎部分がプラスチック製で、金属パーツで隣接する歯に固定する仕組みを持っています。保険適用により、患者さんの自己負担額を抑えることができるため、経済的な負担を軽減できます。

初めて入れ歯を検討する方にとっては、まず保険適用の入れ歯から始めるのも一つの選択肢です。入れ歯の装着感や適合性を低コストで体験できるでしょう。その後、必要に応じてより高機能や高品質の自費診療の入れ歯への移行もできます。

取り外しできる

奥歯の入れ歯が取り外し可能であることは、患者さんにとって多くの利点をもたらすとされています。
まず、口腔衛生の維持が容易になります。入れ歯を取り外して丁寧に清掃できるため、細部まで清潔に保てます。口臭や歯周病のリスクを軽減し、全体的な口腔健康を促進します。

また、装着時の快適性を自身でコントロールできる点も大きなメリットです。入れ歯に慣れる初期段階では、装着時間を徐々に延ばしていくことで、違和感や不快感を抑えられます。患者さんのペースで調整できるため、ストレスなく入れ歯生活に適応できます。

さらに、就寝時や特定の活動時に入れ歯を外すことで、口腔組織に休息を与え長期的な口腔健康の維持に貢献します。

要望に合わせた治療を受けられる

奥歯の入れ歯治療の利点は、患者さんの個別のニーズや口腔状態に合わせて柔軟に対応できることです。
部分入れ歯は、さまざまな歯の喪失パターンに対応可能で、残存歯の状態や噛み合わせの特性を考慮しながら適切な設計ができます。ブリッジ治療が適さない場合でも、入れ歯なら対応できることが多いとされています。

さらに、入れ歯治療は侵襲性が低いという利点があります。外科手術を必要とせず、健康な歯を大きく削る必要もないため、患者さんの身体的負担やリスクを抑えられます。

また、審美性や機能性に関する患者さんの要望も、入れ歯の設計に反映させやすいのが特徴です。歯の色や形、噛み心地などを細かく調整ができ、患者さんの生活スタイルや好みに合わせた解決策を提供できます。

奥歯に入れ歯を入れるデメリット

奥歯に入れ歯を入れるデメリット

入れ歯には考慮すべきデメリットもあります。
以下では、奥歯に入れ歯を入れるデメリットについて解説します。

違和感を感じる

奥歯に入れ歯を装着する際、患者さんが直面する課題は違和感です。違和感は、単なる不快感以上に日常生活に影響を及ぼす可能性があります。

まず、素材の違いが一つの大きな要因です。
保険適用の部分入れ歯で使用されることが多いレジン床義歯はプラスチック製であり、その厚みのためにお口のなかで浮きやすく、異物感を感じることが多くなるとされています。

この厚みは強度を保つために必要ですが、同時に装着時の不快感を引き起こします。
また、口腔内に新たな人工物が加わることで、舌や頬の動きに制限が生じることがあります。食事中に同じ箇所を何度も噛んでしまう噛み癖が発生したり、発音に影響が出たりすることがあります。

さらに、入れ歯の重さや圧迫感によって、歯茎に負担を感じる場合もあります。違和感は、時間とともに軽減しますが、個人差があるのが特徴です。

熱伝導性の問題もあります。
プラスチック製の入れ歯は熱を伝えにくいため、食べ物の温度を感じにくくなります。 これにより、食事中に食べ物の温度や質感を十分に楽しむことができず、違和感を覚えることが多くなるとされています。

むし歯や歯周病のリスクが高まる

奥歯の入れ歯装着は、口腔衛生面で新たな課題をもたらす可能性があります。主に部分入れ歯の場合、むし歯や歯周病のリスクが高まることが懸念されます。

問題の主な原因は、入れ歯と残存歯の間に生じる隙間にあります。隙間は食物残渣や歯垢が溜まりやすい環境を作り出し、細菌の繁殖を促進します。歯磨きでは、これらの隙間を清掃することが難しく、結果としてむし歯や歯周病のリスクが上昇します。

さらに、入れ歯自体も細菌の温床となる可能性があります。適切な洗浄や消毒を怠ると、入れ歯表面に細菌バイオフィルムが形成され、口腔内の細菌量を増加させる原因となります。

噛む力が弱まる

咀嚼力の低下は、患者さんの食生活や栄養摂取に直接影響を与える可能性があります。 保険適用の入れ歯では、使用される材料(主にプラスチックと金属金具)の特性上、強度に限界があります。そのため、噛む力が減少し、場合によっては元の力の約60%まで低下することがあります。咀嚼力の低下は、食事の質や量に影響を与え、結果として栄養バランスの乱れを引き起こす可能性があります。

また、入れ歯の設計上、歯根膜からの感覚フィードバックが得られないため、噛む力の微調整が難しくなります。食べ物の硬さに応じた適切な力加減が難しくなり、食事の楽しみが減少することもあります。

入れ歯装着直後は特に注意が必要です。噛み合わせが馴染むまでは、過度に硬い食品を避け、徐々に咀嚼力を回復させていく必要があります。

奥歯の入れ歯治療にかかる費用

奥歯の入れ歯治療にかかる費用

奥歯の入れ歯治療にかかる費用は、保険適用か自費診療かによって異なります。
保険適用の場合、費用は均一です。3割負担の場合、部分入れ歯で約3,500円〜8,000円(片顎)、総入れ歯で10,000円(片顎)程度が相場です。

一方、自費診療の場合は費用の幅が広くなります。10,000円〜900,000円程度ですが、使用する材料、歯科医師の技術、地域の相場などにより大きく変動します。

奥歯に入れ歯を入れた後のケア方法

奥歯に入れ歯を入れた後のケア方法

以下では、奥歯の入れ歯を長く快適に使用するためのケア方法を紹介します。

食事をするたびに洗浄

奥歯の入れ歯を長く快適に使用するためには、食事ごとの丁寧な洗浄が必要です。食べ物の残渣が入れ歯に付着したままだと、口臭の原因となるだけでなく、歯茎との間に痛みを引き起こす可能性があります。
洗浄の際は、入れ歯専用のブラシを使用し、研磨剤入りの歯磨き粉は避けましょう。入れ歯の表面を傷つけることなく、汚れを落とせます。また、洗面器に水やぬるま湯を張って洗浄すると、誤って落として破損するリスクを軽減できます。

入れ歯洗浄剤を使用する<

奥歯の入れ歯を衛生的に保つためには、入れ歯洗浄剤がおすすめです。日々の歯磨きだけでは取りきれない汚れや細菌を除去するのに役立ちます。

就寝前の洗浄剤使用は、入れ歯ケアの基本となります。洗浄剤は、食べかすや細菌による変色や臭いの原因を取り除き、入れ歯を清潔に保ちます。

ただし、使用する洗浄剤は入れ歯の材質に合ったものを選ぶことが重要です。不適切な洗浄剤使用は、入れ歯の変色や変形を引き起こす可能性があります。また、熱湯や漂白剤での代用は避けましょう。

寝るときは水や洗浄液に浸しておく

奥歯の入れ歯を長持ちさせ、快適に使用するためには、就寝時のケアが重要です。夜間は入れ歯を外し、水や専用の洗浄液に浸しておきましょう。

水や洗浄液に浸しておくことには二つの利点があります。まず、入れ歯の乾燥を防ぎ、材質の劣化やひび割れを予防します。次に、歯茎や顎関節に休息を与え、日中の圧力から回復させる効果が期待できます。

ただし、入れ歯を外すと違和感や痛みを感じる方もいます。そのような場合は、歯科医師と相談し、個別の対応策を見つけることが大切です。

まとめ

まとめ

ここまで奥歯の入れ歯についてお伝えしてきました。奥歯の入れ歯の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 奥歯の入れ歯の種類は保険診療と自費診療があり、素材や設計が異なる
  • 奥歯に入れ歯を入れるメリットは、保険適用で費用を抑えられ、取り外しが可能なため衛生管理が簡単であることである
  • 奥歯に入れ歯を入れるデメリットは、装着初期の違和感や発音への影響、口腔衛生リスクの上昇、咀嚼力の低下などがある

口腔の健康は全身の健康にもつながります。
メリットとデメリットを十分に理解し、健やかな毎日を送りましょう。

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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