入れ歯を入れるとお口の中が痛むという悩みをお持ちの方がいると思います。
入れ歯によって痛みが生じると、食事が楽しめないだけでなく、入れ歯の使用を敬遠するようになるかもしれません。入れ歯を使わないと、顔が歪んだり、姿勢が悪くなったりするほか、認知機能の低下を招く恐れもあるため、痛みに対する正しい対処を理解することが求められます。
この記事では、入れ歯が痛いことでお悩みの方に向けて、入れ歯の痛みに関する基本的な知識、対処方法、さらにはクッション付き入れ歯などに関してわかりやすく解説します。
入れ歯の痛み
- 入れ歯を使用すると痛いのは異常ですか?
- 入れ歯を使用すると痛い場合、お口のなかで何かしらの異常が起きている可能性があります。例えば、そもそも入れ歯が不適合かもしれないことや、入れ歯をのせる顎堤(がくてい)の退縮、唾液分泌の低下、さらには入れ歯によって口腔内を傷つけてしまい潰瘍ができるなどの異常が考えられます。痛みの要因はさまざまですが、入れ歯を使用することで痛みが生じるのは、口腔内で何かしらの異常が起きている兆候といえます。
- 入れ歯の種類によって痛みの出やすさは異なりますか?
- 入れ歯の種類によって痛みの出やすさは異なります。例えば、保険適用の入れ歯は、医療用プラスチックのレジンが主材なのに対し、自由診療の入れ歯にはシリコーン製のものがあります。シリコーン製の入れ歯は、レジンよりもやわらかく、吸着性が高いため痛みが生じにくいことが特徴です。また、部分入れ歯では金属製の留め具が痛みの原因になることもありますが、自由診療のノンクラスプデンチャーは金属製の留め具を用いないため、痛みの出やすさが異なるとされています。
- 痛みの出にくい部分入れ歯を教えてください
- 痛みの出にくい部分入れ歯としておすすめなのが、ノンクラスプデンチャーです。ノンクラスプデンチャーとは、金属製留め具のクラスプを使わないタイプの入れ歯のことで、審美性が高いほか、留め具による締め付けが少ない、そしてフィットしやすく痛みが生じにくいことが特徴です。針金を使わないため、脱着時に口腔内を傷つけるリスクが減ることや、やわらかい素材でできているので歯茎にかかる局部的な負担の緩和にも有用です。
- 痛みの出にくい総入れ歯を教えてください
- 痛みの出にくい総入れ歯としておすすめなのが、シリコーン製の総入れ歯です。シリコーン製の総入れ歯は、やわらかい素材でできているため、入れ歯をのせる顎堤との密着度が高まるだけでなく、装着時にずれにくい特徴があります。入れ歯の痛みは、密着度の低さや、装着時のずれに起因するケースがほとんどのため、痛みの原因に対処した入れ歯といえるでしょう。なお、シリコーン製義歯は、保険が適用されない自由診療に該当します。
入れ歯が痛いときの対処法
- クッション付きの入れ歯はありますか?
- クッション付きの入れ歯に該当するものは、シリコーン製義歯です。シリコーン製義歯は、一般的な入れ歯の主材として使用されるレジン製と比較して、柔軟性が高く、歯茎にかかる負担が生じにくいほか、しっかり密着する特徴があります。歯茎に触れる面には、生体用シリコーンを使っており、実質的なクッションとして機能します。シリコーン義歯は、クッション付きの入れ歯として第一選択になるでしょう。
- 入れ歯安定剤とはどのようなものですか?
- 入れ歯安定剤とは、入れ歯の密着度を高めることを目的にした薬剤のことです。主な種類に、クリーム、パウダー、クッション、そしてシートタイプなどがあります。総入れ歯の吸着が不十分なときや、部分入れ歯の緩み、さらには入れ歯を入れた時の痛みの緩和などにも有用とされています。一方、安定剤がお口のなかで取れなくなったり、細菌の繁殖を招く、汚れやすい、そして嚙み合わせが悪くなる可能性がある懸念は否定できません。
- 安定剤をクッションとして使うと痛みは軽減しますか?
- 安定剤をクッションとして使うと痛みは軽減する可能性があります。特に、入れ歯がずれることで痛みが生じるケースでは、安定剤によって密着度が高まるため、痛みの軽減が期待できるでしょう。ほかにも、安定剤を使うことで、嚙むときに生じる痛みが軽減される可能性もあります。
- 入れ歯安定剤は誰でも使えますか?
- 入れ歯安定剤は基本的にはどなたでも使用できますが、お使いの入れ歯の材質によっては使えない可能性があることに注意してください。例えば、シリコーン製義歯は、安定剤によってシリコーンが剥がれてしまったり、きれいに取り除けなかったりするかもしれません。市販されている多くの入れ歯安定剤は、金属床やレジン製の入れ歯にのみ適合すると覚えておきましょう。
- 入れ歯安定剤のデメリットはありますか?
- 入れ歯安定剤のデメリットとして、以下のようなことが挙げられます。
- 嚙み合わせの高さが変わりやすい
- 歯茎が退縮しやすくなる
- 口腔内の衛生状態が悪くなりやすい
- 誤飲リスク
- メンテナンスが必要
- 依存しやすい
入れ歯安定剤は、痛みの軽減や噛む力を向上させるメリットがある一方で、嚙み合わせの高さが変わりやすいなどのデメリットがあります。安定剤を使うことで嚙み合わせの高さが頻繁に変わってしまうと、歯茎で痛みを感じたり、入れ歯が合わないと不満を感じ通院回数が増えたりするかもしれません。
入れ歯のケアについて
- ずっと使っている入れ歯で痛いと感じるようになることはありますか?
- 長く使用している入れ歯でも痛みを感じるようになることがあります。理由は、加齢によって入れ歯をのせる顎堤が退縮することや、唾液分泌量が減って密着度が低下するためです。特に、歯茎の形が変わってしまうと、入れ歯との間に隙間が生じ、ずれやすくなって痛みを感じるかもしれません。口腔内の環境が変化すると、使い慣れた入れ歯でも痛みがでる可能性があります。
- 入れ歯はどのくらい使い続けられますか?
- 入れ歯の耐用年数は、入れ歯の素材によって変わると考えてください。具体的には、一般的なレジン製で3~5年、金属製で5年、そしてシリコーン製で2~5年が目安とされています。入れ歯そのものが劣化して使用できなくなることよりも、お口の中の状態が変化し、入れ歯が合わなくなって使えなくなることがほとんどでしょう。つまり、入れ歯は長くて5年程使い続けられるものの、歯茎や残存歯などの口腔内環境の変化によって変動するということです。
- 入れ歯が合わないと感じたらどうしたらいいですか?
- 入れ歯が合わないと感じた際は、かかりつけの歯科医に相談することをおすすめします。特に、口内炎が続くケースや、痛くてしっかり咀嚼できない、さらには喋りにくいなどの症状に心あたりがある場合は、すみやかに歯科医師に診てもらうようにしましょう。入れ歯に馴染むための時間は必要ですが、痛みを感じたり、入れ歯の使用を敬遠したりする場合は、入れ歯が不適合かもしれませんので、自己判断せず、歯科医師に相談してください。
編集部まとめ
入れ歯が痛いときは、クッション性が高いシリコーン製の入れ歯に切り替えることや、入れ歯安定剤を試してみるとよいでしょう。特に、シリコーン製の入れ歯は、入れ歯で生じる痛みに対処できる作りになっているため、入れ歯の痛みでお悩みの方におすすめです。入れ歯の痛みは放置せず、まずはかかりつけの歯科医に相談するようにしてください。
参考文献