注目のトピック

歯医者

入れ歯を清潔に保つための歯磨き方法と洗浄時の注意点、活用したい補助用具などを解説

入れ歯を清潔に保つための歯磨き方法と洗浄時の注意点、活用したい補助用具などを解説

入れ歯は、取り外し式という点において、その他の装置と大きく異なります。好きなときに自由に取り外せて、ケアもしやすいことはメリットなのですが、入れ歯の衛生状態を良好に保つことは意外に難しいものです。

衛生状態を保てなければ、入れ歯が臭い、歯石がとれないなどの症状に悩まされます。この記事では、入れ歯を清潔に保つためのケア方法や洗浄時の注意点、入れ歯のケアに活用した補助用具などを詳しく解説します。入れ歯のケアに悩んでいる方は参考にしてみてください。

入れ歯の清潔を保つための歯磨き方法

入れ歯の清潔を保つための歯磨き方法 入れ歯をケアする際の基本事項を確認しておきましょう。これらは入れ歯を清潔に保つうえで必須となるポイントなので実践してみてください。

入れ歯専用のブラシを使用する

入れ歯も歯磨きの要領で磨く必要がありますが、通常の歯ブラシの使用は避けましょう。通常の歯ブラシは、エナメル質で覆われた天然歯を磨くために作られています。

そのため、歯ブラシの硬さや形成、グリップも天然の歯列を磨きやすいように設計されており、プラスチックで作られた入れ歯を磨く器具としては不適切なのです。通常の歯ブラシでも工夫をして上手に磨けば、入れ歯の汚れも落とせないことはありません。ですが、入れ歯専用の義歯ブラシを購入して、効率よく入れ歯を磨く方がよいでしょう。

◎通常の歯ブラシを使うとどうなる?

通常の歯ブラシを使って入れ歯を磨くと、人工歯やプレート部分である義歯床(ぎししょう)が摩耗するおそれがあります。また、表面に傷がつくことで、食べかすや歯垢がたまりやすくなり、細菌が住みやすい環境が整います。

入れ歯の寿命を縮めるとともに、お口の健康にもよくないため、入れ歯のケアには入れ歯専用の義歯ブラシを使うようにしてください。

適切な洗浄剤やクリーナーを使って磨く

入れ歯は発泡剤による泡立ちによって、歯磨きした気になることはありません。また、研磨剤によって天然歯や歯茎を傷めることもないため、入れ歯のケアに歯磨きを使用するメリットは大きいように感じますが、実際のところ使用は避けた方がよいです。その理由については、後段で詳しく解説します。

入れ歯は発泡剤による泡立ちによって、歯磨きした気になることはありません。また、研磨剤によって天然歯や歯茎を傷めることもないため、入れ歯のケアに歯磨きを使用するメリットは大きいように感じますが、実際のところ使用は避けた方がよいです。その理由については、後段で詳しく解説します。

入れ歯のケアを効率化するには、入れ歯専用の洗浄剤やクリーナーが適しています。ポリデントに代表される入れ歯洗浄剤なら、安全性の高い方法で入れ歯の汚れを効率よく除去できます。入れ歯専用の洗浄剤やクリーナーにもいくつか種類がありますので、選択に迷った場合は主治医に相談しましょう。

優しく丁寧に磨く

入れ歯は、失った歯の審美性や機能性を回復させるための装置です。口腔に常置する人工臓器の一種ともいわれているため、入れ歯のケアには細心の注意を払うようにしましょう。

お皿やコップと同じような感覚で磨いていると、入れ歯がダメージを負ってしまいます。理想をいえば自分の歯や歯茎と同じような感覚で、優しく丁寧に磨くようにしてください。

入れ歯を洗浄する際の注意点

入れ歯を洗浄する際の注意点 入れ歯をケアするときの注意点を解説します。

熱湯や高温での洗浄を避ける

入れ歯は歯科用プラスチックであるレジンで作られています。レジンは、高温によって容易に変形するため、入れ歯の洗浄で熱湯を使ってはいけません。ぬるま湯であれば、常温の水や冷水よりも効率よく汚れを洗浄できます。

◎金属床の入れ歯なら熱湯は使える?

口腔粘膜と接する部分が金属で作られている金属床は、食べ物の温度が伝わりやすく、食事もおいしく食べれるメリットがあります。強度も高いことから、入れ歯を薄く作れるため、自由診療で金属床を作る患者さんも少なくありません。

金属床の入れ歯なら、熱湯で煮沸消毒できそうに思いますが、人工歯の周囲にはプラスチックが使われているため、レジン床義歯と同じ取り扱いとなります。原則として、水かぬるま湯で洗浄するようにしてください。

硬いブラシや研磨剤を使わない

入れ歯の表面についた食べカスや歯垢は、硬いブラシでゴシゴシと磨きたくなる気持ちはよく理解できます。研磨剤が配合された歯磨き粉を使えば、さらに効率よく入れ歯の清掃が行えそうです。

しかし、入れ歯というのは皆さんが考えている以上に繊細な装置なので、硬いブラシや研磨剤を使った清掃はNGといえます。お口のケアに使っている歯ブラシで入れ歯を磨くことも、人工歯や義歯床を傷つけることになるので、使用を控えてください。

入れ歯を長持ちさせるためには、やわらかめのブラシで歯磨き粉は使わず、優しく丁寧に磨くことが重要です。

食べ物の残りや汚れをしっかり取り除く

入れ歯は、お口のなかから外して、流水で洗うことができるため、本物の歯や被せ物よりも清掃しやすいように感じるかもしれません。入れ歯のケアを、水道水を流しながら義歯ブラシで全体を大まか磨く程度にとどめている方もいらっしゃることでしょう。

入れ歯は想像以上に汚れが付着しやすく、除去もしにくい装置であることから、お口のなかと同等以上の時間をかけて清掃しなければ磨き残しが生じます

食べ物の残りや汚れをしっかり取り除くことができないと、細菌が繁殖して悪臭を放つようになるだけでなく、義歯性口内炎や口腔カンジダ症、歯周病のリスクも高まることから、入れ歯は常に汚れがゼロになるようケアを徹底することが大切です。

専用の洗浄ケースで保管して乾燥を防ぐ

入れ歯のケアで注意が必要なのは乾燥させないことです。

細菌というのは、水分のある場所で活動が活発化するため、洗浄した入れ歯は水気を切って乾燥させた方が衛生面において有利に働きます。しかし、歯科用プラスチックやシリコーンなどで作られた入れ歯は、乾燥することで変形してしまうことがあります。

入れ歯の形や質が変化すると、お口への適合性が低下して、ズレたり、外れたりするようになります。入れ歯を洗浄した直後に水気を切ることはよいのですが、すぐに装着しないのであれば、乾燥を防ぐために専用のケースに保管しましょう。専用ケースのなかには清潔な水を入れて、入れ歯を浸けるような形で保管する必要があります。

入れ歯の清潔を保つため活用したい補助用品

入れ歯の清潔を保つため活用したい補助用品 入れ歯のケアは、義歯ブラシで磨くことが基本となります。それに加えて、以下に挙げる補助用品を活用することで、入れ歯をより清潔に保ちやすくなることでしょう。

洗浄用タブレットや液体洗浄剤

義歯ブラシで磨くのは、機械的な清掃にあたります。義歯ブラシを手で動かして、入れ歯表面の汚れを機械的に除去する清掃法なのですが、除去できる汚れには限界があります。

そこで効果的なのが洗浄用タブレットや液体洗浄剤を使った化学的清掃です。洗浄用タブレットは、洗浄ケースに水を浸して投入するだけで、入れ歯の汚れを化学的に分解・除去できます。液体洗浄剤の使用方法も基本的には洗浄用タブレットと同じです。水を浸した洗浄ケースに、数滴だけ垂らすことで、入れ歯の化学的清掃を行えます。どちらも扱いやすいため、高齢の方でも問題なく入れ歯を洗浄できます。

入れ歯保管ケース(カバー付きタイプなど)

入れ歯を装着している方は、必ず入れ歯保管ケースの使用が大切です。

入れ歯をお口から外したときにティッシュでくるんで置いておくと、誤って捨てる可能性もあるでしょう。ジップロックのような袋型のケースでは、入れ歯を破損するかもしれません。

近年では、さまざまな種類の入れ歯保管ケースが市販されており、自分に合ったものを選べるようになっています。カバーが付いているタイプや携帯用に折りたためるタイプ、誤飲を防ぐためにコップとは見分けやすいようなデザインのタイプなどが販売されています。自分の好みに合った入れ歯保管ケースを見つけることで、入れ歯を使うことの楽しみが増えるかもしれません。

入れ歯用クリーンジェルやフォームタイプの洗浄剤

入れ歯洗浄剤には、タブレットタイプや液体タイプ以外にも、ジェルタイプやフォームタイプがあります。これらは洗浄剤を入れ歯に、直接塗布することができるため、タブレットタイプや液体タイプよりも高い洗浄効果が期待できます。 通常の入れ歯洗浄剤では汚れや臭いが残ってしまうという方は、入れ歯用クリーンジェルやフォームタイプも一度、試してみるとよいでしょう。

入れ歯のケアを行わないと起きること

入れ歯のケアを行わないと起きること

口臭が発生する可能性

入れ歯のケアを怠った場合には、口臭が発生しやすくなります。

入れ歯のケアを1日でも行わないと、翌日には強い口臭が発生することでしょう。これは歯磨きをきちんと行っている人でも入れ歯のケアを怠れば起こりうることなので、十分な注意が必要です。

臭い入れ歯をそのまま装着すると不快感はありますし、自分の口臭で周りの人に迷惑をかけることでも辛い思いをしてしまいます。また、入れ歯のケアをしっかり行っているつもりでも、口臭が強くなっている場合は、磨き残しがあることを意味します。今現在の清掃方法では、適切にケアできていないことから、正しい歯磨きの方法を歯科医院で学ぶ必要があります。

むし歯や歯周病につながる可能性

ケアを怠っていると入れ歯の表面には、細菌や真菌が繁殖しています。不潔な入れ歯から不快な臭いがするのもこれらの細菌が原因です。

また、入れ歯で繁殖する細菌の種類は、口腔内と同じであることも理解しておかなければなりません。つまり、むし歯菌や歯周病菌が繁殖して入れ歯の表面に歯垢を形成し、悪臭を放っているのです。

そのような不潔な入れ歯をケアせずに装着し続けたらどうなるでしょうか?当然、むし歯や歯周病のリスクが増大します。食後に一生懸命、歯磨きしたとしても、入れ歯が不潔なままではその効果が半減してしまうのです。

◎総入れ歯なら問題はない?

歯が1本もない無歯顎の症例には、人工歯と義歯床のみで構成される総入れ歯が適応されます。歯が1本もないため、入れ歯を不潔にしていてもむし歯になるリスクはゼロですが、歯周組織はそのまま残っていることから、歯周病を発症することはあります。そのため総入れ歯だからケアを徹底しなくてもよいということにはならないのです。

誤嚥性肺炎になる可能性

誤嚥性肺炎を患う高齢の方が増えています。特にお口のなかや入れ歯の衛生状態が悪い方に、発症率が高まっている点に注意が必要です。

細菌や真菌、ウイルスなどが付着した入れ歯をケアせず、お口のなかに装着し続けていれば、唾液とともに病原体を誤嚥して、肺炎を発症してしまいます。

誤嚥性肺炎は、重症化すると命を落とすこともあるため、できるだけ抑えたいものです。毎日の入れ歯のケアを徹底するだけでも予防効果は期待できます。

◎口腔カンジダ症にも要注意

入れ歯の清掃を怠ることで発症リスクが高まる病気は、誤嚥性肺炎だけではありません。カンジダ・アルビカンスという真菌(カビ)が原因で発症する口腔カンジダ症にも注意が必要です。

口腔カンジダ症になると、歯茎や舌、頬粘膜に白いカビが生えて腫れや痛みを伴います。入れ歯を不潔にしている高齢の方に起こりやすい病気なので、このような症状が当てはまる場合は、歯科医院を受診して入れ歯のケア方法も改める必要があります。

まとめ

入れ歯を清潔に保つための歯磨き方法と洗浄時の注意、活用したい補助用具などについて解説しました。入れ歯は複雑な構造をしており、汚れが溜まりやすく、清掃にもコツがいります。また、義歯ブラシで磨くだけでは、入れ歯の汚れを十分に除去できないことから、入れ歯洗浄剤の併用も必須といえるでしょう。

入れ歯のケア方法に不安や疑問がある場合は、まず歯科医師や歯科衛生士に相談することが大切です。患者さんそれぞれが使っている入れ歯に合ったケア方法を提案してくれます。

参考文献

この記事の監修歯科医師
菱川 敏光歯科医師(ひしかわ歯科院長)

菱川 敏光歯科医師(ひしかわ歯科院長)

長崎大学歯学部卒業 愛知学院大学大学院歯学研究科修了 愛知学院大学歯学部歯周病学講座講師(2020年3月まで) 愛知学院大学歯学部歯周病学講座非常勤講師 ひしかわ歯科 院長

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP

電話コンシェルジュ専用番号

電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。

受付時間 平日:9時~18時
お電話でご案内できます!
0120-022-340