むし歯治療後に装着することがある差し歯ですが、装着直後は見た目もよく、衛生管理もしやすいのものです。しかし使っていくなかでさまざまなトラブルに見舞われることがあります。そのひとつが差し歯が臭いという症状です。差し歯による口臭は、周りの人にも迷惑をかけるため、すぐにでも改善したいという方が少なくないでしょう。ここではそのような差し合が臭う原因と対策方法、再治療の際におすすめできる素材について詳しく解説します。差し歯の臭いで困っている方は参考にしてみてください。
差し歯が臭う原因
そもそもなぜ差し歯は臭くなることがあるのか。まずはその疑問を解決していきましょう。
- 差し歯が臭う原因は何ですか?
- 差し歯が臭う主な原因としては、以下の5つが挙げられます。
【原因1】むし歯が再発している
差し歯を装着している歯でむし歯が再発していると、細菌による活動で臭くなることがあります。
【原因2】歯周病にかかっている
差し歯の周りに歯垢や歯石が堆積して、歯周病菌が繁殖していると、メチルメルカプタンという揮発性のガスが産生されます。このガスは硫黄を含んでいることから、腐った玉ねぎのような臭気を放つため、口臭も自ずと強くなります。つまり、差し歯の衛生状態が悪いことで歯周病を発症していることが臭いの原因となっているのです。
【原因3】歯の神経が死んでいる
差し歯を装着する際に、歯の神経を保存しても、治療からしばらく経過して、さまざまなダメージが蓄積することで失活を招くことがあります。歯の神経が死んで、根管内に膿が溜まると、悪臭を放つようになります。
【原因4】副鼻腔炎を発症している
差し歯を被せた歯がむし歯になり、根の先にまで膿を作ると、副鼻腔にまで感染が広がる場合があります。これを専門的には副鼻腔炎と呼び、鼻づまりや頭痛、発熱に加えて、悪臭も放つことがあります。これは差し歯のむし歯が著しく進行した際に見られる症状です。
【原因5】差し歯の周りに汚れた付着している
差し歯のケアが不十分で、その周囲に食べカスや歯垢、歯石などが付着していると臭くなります。そのメカニズムは、次のクエスチョンで回答します。
- 差し歯が劣化すると臭いが出ることがありますか?
- コンポジットレジンや歯科用合金で作られた差し歯は、経年的に劣化していきます。差し歯の表面が粗くなり、汚れの吸着が促進されることで、臭いも出やすくなるのです。また、差し歯や装着の際に使ったセメントの劣化によって、歯との間に隙間ができることでも、汚れの堆積を促し、臭いも出やすくなることでしょう。ちなみに、劣化した差し歯自体が臭うことはまずありません。当然ですがコンポジットや歯科用合金といった素材が腐るようなことはないからです。あくまでその周りに付着した物質によって臭いが発生しているのです。
- 差し歯の臭いは自分で解消できますか?
- 差し歯の臭いが周囲に付着した汚れである場合は、自分で解消することも可能です。正しい方法でブラッシングをして、歯と歯の間はデンタルフロスで清掃しましょう。歯石はセルフケアで落とすことが難しいため、歯科医院でスケーリング(歯石除去)を受ける必要があります。それ以外の理由で差し歯が臭くなっている場合は、基本的に歯科医院で適切な処置や治療を受けなければなりません。特にむし歯や歯周病は、差し歯が臭いという症状だけでなく、歯そのものを失うリスクが生じることから、可能な限り早く歯科医院を受診して、適切な治療を受けなければなりません。
差し歯の臭いを解消する方法
次に、差し歯の臭いを解消、あるいは改善する方法について解説します。
- 臭いがついてしまった差し歯は交換するしかありませんか?
- 差し歯を交換しなくても、付着した臭いを改善する方法はあります。まず、知っておいてもらいたいのは、差し歯自体が臭くなることは稀であるという点です。多くのケースでは、差し歯の表面に汚れが付着したり、歯との境目に汚れが溜まったりすることで臭くなっているので、それらを取り除けば臭いも解消されます。ただし、差し歯の劣化が激しく、表面もボロボロになっているようなケースでは、単にブラッシングやクリーニングをしただけでは臭いが改善されない場合もあり、差し歯の交換が必要になることもありえます。前述したむし歯・歯周病・歯髄の失活によって差し歯が臭くなっている場合は、ほぼすべてのケースで交換が必要となります。
- 差し歯の臭いを減らすためにはどのようなケアを行うとよいですか?
- 1日1回は、口腔内をプラークフリーにすることを心がけましょう。歯の平らな面はもちろんのこと、歯と歯茎の境目や歯と歯の間の汚れもプラークがゼロになるようセルフケアしてください。歯と歯茎の境目は、歯ブラシを斜め45度に傾けて、歯周ポケット内の汚れをかき出すような感覚でブラッシングすると、効率よく磨けます。歯と歯の間はデンタルフロスか歯間ブラシを使ってください。歯磨きは毎食後行うことは基本として、起床時と就寝直前にもブラッシングすることで、差し歯が臭う原因の多くは取り除けます。
- 自宅でできる差し歯のケア方法を教えてください
- 複数の歯をまとめて磨くのではなく、1歯1歯時間をかけて丁寧に磨くようにしてください。はじめのうちは鏡を見ながら、差し歯の平らな部分、歯茎との境目、隣の歯との間をブラッシングおよびフロッシングしてください。目で見て歯垢や食べカスがゼロになるのを確認したら、次の歯の清掃へと移りましょう。1歯あたり数十秒の時間を要しますが、慣れてくれば効率よくブラッシングできるようになります。
- 歯科医院で定期検診を受けると臭い対策になりますか?
- もちろん、臭い対策になります。なぜなら歯科医院での定期検診では、自宅でのケアでは落とせない差し歯の汚れまで一掃できるからです。また、差し歯の正しいケア方法も学ぶことができるため、差し歯が臭い症状を改善あるいは予防したい場合は、定期的な歯科検診を受けるようにしましょう。
臭いが気になる方におすすめの差し歯の選び方
ここでは、差し歯の臭いに悩まされている方に向けて、おすすめの差し歯の選ぶ方を紹介します。
- 臭いが生じにくい差し歯の素材を教えてください
- セラミックは、臭いが生じにくい素材の代表です。食器に使われているセラミックは、硬くて耐久性が高く、経年的な劣化も起こりにくいです。つまり、レジン歯や銀歯後比較して、差し歯の周りに汚れがたまりにくく、歯周病やむし歯の発症リスクも低いことから、臭いが生じにくい素材といえるのです。
- 差し歯の臭いが気になる場合、どのような点に注意して素材を選べばよいですか?
- 素材の硬さや耐久性、歯質との適合性には注意しなければなりません。これらが低いと汚れがつきやすく、歯周病やむし歯リスクも高くなるからです。具体的には、保険診療のレジン歯や銀歯、CAD/CAM冠(キャドキャムカン)が該当します。
- セラミックの差し歯を選んだ場合のメリット・デメリットを教えてください
- セラミックの差し歯を選んだ場合、保険診療のレジン歯や銀歯と比較すると以下に挙げるメリットとデメリットを伴います。
【メリット】
・見た目が自然で美しい
・経年的な劣化が起こりにくい
・歯質との適合性が高くてむし歯の再発リスクが低い
・表面が滑沢で汚れや臭いの元となる物質を吸着しにくい
【デメリット】
・保険が適用されないため費用が高い
・摩耗や亀裂、破損が生じたときの修理が難しい
・極端に強い衝撃が加わると割れることがある
・歯を削る量がやや多い
編集部まとめ
今回は、差し歯の臭いが気になる方に向けて、臭いの原因と対策方法を解説しました。差し歯が臭う主な原因は、むし歯、歯周病、歯髄の失活、口腔衛生不良などが挙げられ、歯垢や食べカスが付着しているだけなら、自宅で改善することも可能です。差し歯の劣化や適合性の低下、むし歯の再発などが原因で臭いが生じている場合は、歯科医院での治療が必須となるため、まずは受診を検討しましょう。差し歯の臭いに悩まされたくない場合は、劣化しやすいレジン歯や銀歯ではなく、表面が滑らかで耐久性も高いセラミック歯がおすすめです。差し歯の素材は、患者さんそれぞれのニーズによって適切といえるものが変わってくるため、まずは歯科医師に相談することが推奨されます。
参考文献