歯茎に白いできものを見つけて「口内炎かな?」と思ったことはありませんか。実はそれは口内炎ではなく、フィステルかもしれません。
フィステルは、見た目が口内炎と似ていますが、異なるものです。
そこで今回は、フィステルの特徴や原因、放置するリスクや歯医者で行われる治療方法について詳しく解説します。
歯茎に白いできものがあるなどの、心当たりがある方はぜひ最後までご覧ください。
歯茎に白いできもの(フィステル)ができる原因
- 歯茎の白いできものとはどのようなものですか?
- 歯茎の白いできものの正体は、フィステルと呼ばれるものです。これは、歯根の先端に膿が溜まることで生じるもので、歯の根あたりにできるニキビのような白くて丸いものです。フィステルの表面には、膿を排出するための小さな孔が空いており、指で押すと溜まった膿が出てくることがあります。
フィステルは、初期であれば痛みを伴わないことがほとんどです。しかし、疲れやストレスなどからくる身体の抵抗力の低下や、フィステルの原因によっては痛みが生じるケースもあります。また、お口の中の清潔さや体調によって、大きさが変化するのが特徴です。
- 歯茎に白いできものができる原因を教えてください。
- フィステルの原因は、大きく分けて3つ考えられます。
- 根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)
- 歯根破折(しこんはせつ)
- 不適切な治療による感染
1つ目の原因として考えられるのは、根尖性歯周炎です。根尖性歯周炎とは、むし歯や歯周病などの進行により細菌が繁殖し、歯根の先端まで膿が溜まることです。そのままの状態を放置すると、溜まった膿がどんどん大きくなり、やがて顎の骨を溶かしてしまいます。そして、歯茎に穴が空き、溜まった膿が表面に出てきてしまうのです。
2つ目の原因は歯根破折で、神経に影響が出ていることが多いため、痛みを感じにくいことが特徴です。歯ぎしりや食いしばり、事故や怪我などで歯に強い力が加わると歯根が割れてしまうことがあります。歯根が破折すると割れ目から細菌が侵入し膿が溜まり、フィステルができる原因となります。
最後の原因は、不適切な治療による感染です。過去にむし歯の治療などを行っており、神経を除去している場合には、痛みを感じないことが多いです。過去に受けた歯根の治療が不十分だった場合、歯の中に細菌が残ってしまうことがあります。この細菌が時間とともに増えてしまい膿が溜まり、フィステルができることがあります。
- 歯茎の白いできものと口内炎の見分け方を教えてください。
- 似たような見た目をしている口内炎とフィステルですが、まったく異なるものとなります。大きな違いは、痛みの有無と自然治癒するかどうかです。口内炎の多くは痛みを伴い、1〜2週間程度で自然に治癒することが多いですが、ウイルス感染や慢性的な刺激による口内炎は治療が必要になることもあります。
一方、フィステルは感染源が取り除かれない限り自然治癒することはなく、治療が必要です。そのため、白いできものがお口の中に長期間ある場合には、歯医者へ相談することがおすすめです。
- 歯茎の白いできものと歯肉がんの見分け方を教えてください。
- フィステルと歯肉がんは、見た目が大きく異なります。フィステルは、ニキビのように白く丸い見た目をしており、膿が排出されることで一時的に小さくなることがあります。
一方で歯肉がんは、硬いしこりができたり、潰瘍(ただれ)が発生したりすることが特徴です。進行すると、痛みや出血を伴うことがあります。そのため、食べ物が噛みにくい・飲みにくいなどの自覚症状が出ることがあります。
歯茎の白いできもの(フィステル)を放置するリスク
- 歯茎の白いできものは自然治癒しますか?
- フィステルは歯の根元の炎症が原因のため、治療しない限り、自然に治ることはありません。大きくなったり小さくなったりするので、一見治っているように見えることもあります。しかし、根本的に治ったわけではないため、放置せず歯医者での適切な治療を受けることが必要となります。
- 歯茎にできた白いできものを放置するリスクを教えてください。
- フィステルを放置することは、さまざまなリスクを伴うためとても危険です。
- 感染の拡大や、全身への影響
- 抜歯のリスク
- 治療の難易度の上昇
- 見た目の悪化や口臭、慢性的な痛みや違和感
1つ目は感染の拡大や、全身への影響です。フィステルを放置すると、細菌や炎症が広がります。その結果、周辺の健康な歯に、感染が拡大する可能性が高まります。さらに、フィステルはお口の問題だけではなく、全身の健康にも影響を及ぼすことも考えられるため注意が必要です。細菌が血液中に入り込み全身へ渡ることで、敗血症や細菌血症などの病気のリスクが増えてしまいます。
2つ目は、抜歯のリスクです。適切な処置をしなければ、歯の中で細菌が増えて顎の骨を溶かしてしまい、歯がぐらつき始めます。そして、歯を支えられなくなり、最終的に抜歯となる可能性が高くなります。3つ目は、治療の難易度の上昇です。放置によって感染が拡大した場合、治療が複雑化することが多く、治療期間も長くなります。また、治療費も高額になる傾向があります。
最後に、見た目の悪化や口臭、慢性的な痛みや違和感のリスクです。フィステル周辺の歯茎が腫れてしまい、見た目が悪くなる可能性が高いです。また、膿が原因で口臭が発生する場合もあります。初期だと痛みを感じないことが多いですが、感染が広がると慢性的な痛みや腫れ、膿の排出が増えることが考えられます。その結果、食事や日常生活に困難をきたすことがあり、ストレスや不快感が増えてしまうのです。
歯茎の白いできもの(フィステル)の治療方法
- 歯茎に白いできものができたら自分で潰しても大丈夫ですか?
- フィステルを自分で潰すことは絶対に避けてください。膿には多くの細菌が含まれており、無理に押し出すことで炎症が悪化し、周囲の組織に感染が広がる可能性があります。また、細菌が血流に入るリスクもあるため、必ず歯科医院で適切な治療を受けましょう。
- 歯茎の白いできものが小さくなっている場合も受診した方がよいですか?
- フィステルが小さくなっている場合でも、治っているわけではありません。歯に細菌は残ったままなので、歯医者へ受診して適切な治療を受けることが大切です。早期に受診すれば、治療期間を短縮し費用も抑えることができます。そして、何より健康な歯を残せる可能性が高くなります。
- 歯科医院での治療方法を教えてください。
- 治療方法は、大きく分けて4つあります。
- 根管治療
- 歯根端切除術
- 意図的再植
- 抜歯
根管治療とは、歯根から細菌や神経を取り除き、洗浄・消毒して被せものをする治療方法です。根管治療によって歯根の炎症が治まれば、フィステルも自然となくなります。歯根端切除術は歯茎を切開し、フィステルの原因である歯根の先端を切除する治療方法となります。通常の根管治療では取り除けないような細菌が歯根の先端にある場合、行われることが多いです。
意図的再植は、根管治療や歯根端切除術が行えない場合に、行うことが多い治療方法です。一度抜歯し、細菌を取り除いた後、もとに戻す方法となります。歯の状態や患者さんの年齢などを考慮して行われます。
最後に抜歯です。感染が歯根だけでなく歯全体に広がっている場合は、上記の治療方法では細菌を取り除くことは難しいため、抜歯が必要になることがあります。また、フィステルの原因が歯根破折である場合、歯の強度が低下して機能を保つことが難しくなるため抜歯を選択することが多いです。
- 根管治療をしても治らないケースはありますか?
- 根管治療後は多くの場合、回復に向かいます。根管治療をしても改善しない場合、歯根の複雑な形状による細菌の残存、歯根破折、再感染、歯根嚢胞の形成などが原因となっている可能性があります。このような場合、追加の根管治療や歯根端切除術が必要になることがあります。
編集部まとめ
フィステルは、一見ニキビや口内炎のように見えるので「放っておいても大丈夫」と思われる方もいるかもしれません。
しかしフィステルは、放置するとさまざまなリスクを伴うもので、治療をしなければ治ることはありません。
早めに治療できれば、健康な歯を残せる可能性が高まり、治療期間や費用も抑えることができます。
そのため、歯茎にフィステルのような白いできものを見つけたら、軽く考えずに歯医者へ相談することをおすすめします。
参考文献