年齢を重ねると、歯も弱くなり歯を喪失してしまうことはよく聞く話です。歯を喪失してしまうと食事や会話など日常生活にも支障をきたしてしまいます。
そこで、多くの方は入れ歯を使用しますが、なかなか入れ歯が自分自身のお口のなかの状態に合わず慣れるまでに時間を要する方も少なくありません。
この記事では、入れ歯に慣れる方法や入れ歯にまつわるトラブルやその解決方法についてわかりやすく解説します。
入れ歯のトラブルは、QOL(生活の質)の低下につながりかねない重要な問題です。入れ歯に関するお悩みをお持ちの方のお役に立てる情報になれば幸いです。
慣れていない入れ歯のよくあるトラブル
入れ歯を装着することで起きるトラブルに悩まされることは少なくありません。
入れ歯に慣れないことで食事や会話をする場面で、不便さを感じることがあります。
これらのトラブルは、口腔内の違和感だけでなく、さまざまな問題を引き起こし、QOLの低下にもつながりかねません。
食べ物を噛みにくい
入れ歯のトラブルはまず第一に、食事に直結します。人間にとって食事は栄養摂取のみが目的ではありません。
食べる楽しみなど多くの意味を持つのが食事です。歯の状態が悪く、よく噛めないために食事がおろそかになると、さまざまな面で影響を生じてしまうでしょう。
噛めないことで、消化が不十分となり胃に負担がかかることも考えられます。
また、食塊形成にも問題が生じ、食べ物が飲み込みにくくなることも少なくありません。歯の残数が食事に与える影響を紹介します。
- 21本以上:何でも食べられる
- 16~20本:たいてい食べれる
- 11~15本:噛めないものがある
- 6~10本:あまり噛めない
- 1~5本:まったく噛めない
喪失歯がある場合は、入れ歯を装着して食事をとることが大切です。
入れ歯が外れる
入れ歯を使用している方のなかには、入れ歯が外れてしまうというお悩みを抱えている方も少なくありません。部分入れ歯の場合には、クラスプと呼ばれる針金が付いています。
この針金の変形が、入れ歯が外れやすくなる要因の一つです。入れ歯を作った最初の頃はぴったりとはまっていた針金もゆるんだり、変形したりしてぐらついて外れやすくなります。
そのような場合には、ゆるんだ針金の調整や交換で入れ歯を安定させることが可能です。一方で、総入れ歯の場合には針金はありません。
総入れ歯は、歯茎に吸着させることで安定して固定する入れ歯です。そのため、外れる原因としてはきちんとした形で作られていないことや、お口に対して入れ歯のサイズが適していないことが考えられるでしょう。
また、噛み合わせに問題がある場合にも外れやすい原因になります。それに加え、加齢により口腔内の状況が変化して入れ歯と歯茎の間に隙間ができると吸着力が弱くなり、入れ歯が外れる原因になりえます。
しゃべりにくい
入れ歯を装着すると、舌の動きが制限されることでしゃべるにくさを感じる方も少なくありません。
特に入れ歯がお口に対して大きい場合には、発音がうまくできなくなる可能性があります。また、入れ歯が安定して固定されていないと入れ歯がしゃべっているときに動いてしまうため、発音が不明瞭になりやすいです。
歯茎に痛みを感じる
入れ歯の装着により、歯茎に痛みを感じる方はとりわけ多く耳にします。入れ歯は日常的に装着しており、それによる痛みはQOLの低下につながります。
食事や会話のときのみ、痛みを感じる方もいれば、装着している間は痛みが持続しているという方も少なくありません。
痛みの原因は、加齢により顎が痩せて入れ歯が安定しなくなったことが挙げられます。隙間ができた状態では、残存歯や歯茎に負担がかかるため、定期的な入れ歯の調整が必要です。
唾液が増える
入れ歯を装着することで、唾液が増えるという訴えも多く聞かれます。
これは、入れ歯を装着することで口腔内の状態が改善し、起こる反応です。入れ歯による咀嚼機能の改善が、唾液分泌量の改善に影響を与えます。
唾液は、食塊を飲み込みやすくしたり、舌の運動を円滑にし発話を明瞭にしたりします。また、唾液は口腔内に侵入した病原体に対しての防衛機能も有しているそうです。入れ歯の装着は口腔機能の改善を図ることができる点が、大きなメリットです。
吐き気を感じる
入れ歯をいれると吐き気をもよおしてしまう方も見られます。これは、嘔吐反射によるものだと考えられます。
嘔吐反射は、身体の防衛反応のひとつで、口腔内やのどの奥に異物が侵入するのを防ぐためのものです。反射には個人差があり、入れ歯を装着することでこの反射を引き起こしやすくなります。
また、心理的要因からも嘔吐感を抱くこともあります。
入れ歯に慣れる方法
入れ歯の使い始めには、食事や会話のしづらさ・違和感・痛みなどを感じることも多くあります。入れ歯に少しずつ慣れることで、徐々にこれらの悩みが軽減されるでしょう。
ここでは、それらの悩みを解決するために入れ歯に慣れる方法を紹介します。
着脱の練習をする
新しく作った入れ歯は、まず着脱に慣れることが大切です。慣れれば、眼を閉じていても着脱できるようになります。総入れ歯は、片方の奥の方から口腔内に挿入していきます。
さらに義歯を回転させながら、義歯全体を口腔内に挿入すると装着しやすいです。
外す際には、上顎の入れ歯は、入れ歯と歯茎との間に空気を入れてから前方に移動させると外しやすいです。
下顎の入れ歯は、舌を後ろに下げると入れ歯と歯茎の間に空気が入って外しやすくなります。
装着時間を徐々に増やす
入れ歯の装着が難しい場合には、少しずつ時間をかけて慣れていきましょう。違和感が強く、長時間の装着にストレスを感じるときは、無理に装着せず少しずつ装着する時間を延ばしていくことをおすすめします。
水を飲む練習をする
入れ歯に慣れる方法として、水を飲んで装着感に慣れるという方法もあります。冷水やお湯は抜歯した傷口に痛みを生じる可能性があるので、少量のぬるま湯をお口に含みましょう。
また、喉が刺激されることで吐き気を感じやすいといわれており、固形物を試す前にまず水から試してみることをおすすめします。
やわらかい食べ物を噛む練習する
入れ歯に慣れるために、食事の際には歯茎に負担がかかりにくくするためにやわらかいものから試すようにしましょう。
硬いものを食べると、歯茎を痛める・歯茎をかばってかみ続けることで顎の骨に負担がかかる・噛んでいる感覚がつかみにくく噛みきれないリスクがあるという危険性があります。
歯茎を痛めると反対側ばかりで噛むようになり、入れ歯になかなか慣れることができません。
会話の練習をする
入れ歯を装着すると発話がしにくくなります。
鏡を見てお口の動きを確認しながら発話の練習をすると効果的です。練習方法としては、新聞や本を音読する・身近な気を使わない方と話をするなどが挙げられます。
一般的にサ行・タ行は発音しにくいとされています。大きな口を開けて練習することで、上手に発声できるようになるでしょう。
入れ歯を使用する際の注意点
入れ歯を使用する際の注意点を以下に紹介します。
- 清潔を保つ
- 熱湯を避ける
- 定期的な調整
- 食事中の注意
- 口腔内の健康管理
食後や就寝前には、必ず入れ歯を外し洗浄しましょう。入れ歯は使用している間に、合わなくなることがあるので、定期的に調整を依頼することをおすすめします。
また、硬い食べ物は避けて入れ歯安定剤などを使用して安定性を高めて食事をするとよいでしょう。これらに加え、口腔内を清潔に健康に保って口臭やカンジダ感染を予防しましょう。
入れ歯の洗浄をしっかり行うことも大事
入れ歯の洗浄は、毎食後に必ず行いましょう。食べかすや細菌が付着すると、口臭や口内炎の原因になりやすいです。
週に1度は洗浄剤を使用して除菌しましょう。就寝時は水に浸して保管しておくと乾燥や変形を防ぐことができます。
以下に入れ歯の正しい洗浄方法を紹介します。
- 取り外しと流水での洗浄
- 専用ブラシで磨く
- 洗浄剤の使用
- すすぎと乾燥
まず、入れ歯を外したら流水で食べかすなどを洗い流しましょう。この際、排水溝などに落とさないように洗面器などの容器を使用することをおすすめします。
次に専用ブラシを使って入れ歯の表面、裏側、隙間を丁寧に磨きます。歯磨き粉は使用せず、ブラシと水だけで洗うことが大切です。
歯磨き粉に含まれる研磨剤で、入れ歯を痛めてしまうことがあります。
洗浄後は、入れ歯専用の洗浄剤を使ってさらにきれいにしましょう。洗浄剤は、付着した細菌などを除去するために使用します。
洗浄剤を使用後は、十分に水ですすいでから乾燥させましょう。入れ歯を洗浄する際の注意点を以下に紹介します。
- 熱湯の使用を避ける
- 洗浄剤での長時間の浸漬を避ける
- 毎食後の洗浄を習慣化する
入れ歯を適切に洗浄することで、口腔内の健康を維持し快適な入れ歯の使用を可能にします。 毎日のケアを継続して、正しい方法で手入れすることが大切です。
入れ歯に慣れない場合に歯科医院に相談する目安
入れ歯に慣れない場合、以下に紹介する項目を参考に歯科を受診することをおすすめします。
- 1ヶ月以上の違和感
- 痛みや不快感の持続
- 入れ歯のずれや外れやすさ
- 口腔内の健康状態の変化
1ヶ月以上の違和感が続く場合、入れ歯のフィット感や形状に問題がある可能性があります。
特に、初めて入れ歯を使用する方は、違和感を感じることが一般的です。しかし、1ヶ月以上続く場合は専門家の診断が必要です。
痛みや不快感が持続する場合、入れ歯が適切に装着されていない可能性があります。
これらの症状が持続する場合には歯茎や口腔内の組織に圧力がかかり、炎症を引き起こすこともあるため、早急な調整が求められます。
入れ歯のずれや外れやすさを感じた場合、食事や会話に支障をきたすことが少なくありません。
特に、食事中に入れ歯が外れると、口腔内の健康が損なわれるリスクが高まります。
これにより食べ物が歯茎に直接当たり、傷をつけることもあるため注意が必要です。
入れ歯の使用に伴い、口腔内の健康状態が変化することがあります。歯茎の炎症や口腔内の傷が悪化することがあるため、定期的なチェックが重要です。
これらのサインが見られた場合は、早めに歯科を受診しましょう。
入れ歯の適切なケアと調整は、長期的な口腔健康を維持するために欠かせません。
歯を失った場合の入れ歯以外の治療の選択肢
歯を失った場合、入れ歯の装着に加えて、ブリッジやインプラントといった選択肢も考慮することが重要です。
ブリッジは失った歯の両隣の歯を削って支えにし、人工歯を固定する方法で、治療期間が短く、保険適用で費用も抑えられます。
一方、インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込む治療です。人工歯根に人工歯を装着する方法で隣接する歯に負担をかけず自然な見た目と機能を提供します。
どちらの方法もそれぞれのメリットとデメリットがあるため、歯科医師と相談し、自分に適切な治療法を選びましょう。
ブリッジ
歯を1~2本喪失した場合、失った歯の両脇の歯を支えにして、そこに橋をかける(ブリッジ)ように一体型の被せ物を装着する方法です。
入れ歯と違い、固定されているため安定しているというメリットがあります。しかし、ブリッジの支えになる残存している歯を削る必要があります。また、支えとなる歯がないとこの治療は行えません。
インプラント
インプラントは、歯が抜けたところの顎の骨に人工の歯の根を埋め込んで、その根を土台にして人工の歯を作る治療です。
ブリッジのように残存している歯を削る必要がないため、残っている歯への負担が少ない治療法です。しかし、保険適用外なので治療費が高額になることがあります。
まとめ
本記事では、慣れない入れ歯で生じるトラブルやその解決方法・入れ歯の取り扱い方法などについて解説しました。
入れ歯に慣れるまでには個人差がありますが、一般的には数週間から数ヶ月かかることが多いです。
初めて入れ歯を装着した際には、異物感や違和感を感じることが多く、最初の1〜2週間はこれらの症状が強く現れることがあります。
このため、無理に長時間装着するのではなく、少しずつ装着時間を増やしていくことが重要です。無理に装着せず、少しずつ装着に慣れていきましょう。
入れ歯の装着による痛みや不快感が続く場合は、早めに歯科医師に相談しましょう。適切な調整を行うことで、痛みや違和感を軽減できる場合が多いです。
また、入れ歯に慣れるためにはやわらかい食べ物から始めて噛む練習を行ったり、鏡の前で発音練習をしたりすることも効果的です。
入れ歯に慣れることで、食事や会話をストレスなく楽しむことができるようになるでしょう。焦らず、少しずつ入れ歯に慣れていくことで、普段の生活が快適なものになります。
入れ歯を適切に使用することで、失った歯の機能を取り戻し、生活の質を向上させることができます。
参考文献