セラミック治療を受けたものの、「色がほかの歯と合わない」「形に違和感がある」と感じる方は少なくありません。見た目の美しさを求めて選んだはずが、満足できない仕上がりだと日常生活にも影響が出てしまいます。
本記事ではセラミックの色や形が気に入らない場合の対処法ついて以下の点を中心にご紹介します。
- セラミック治療のやり直しはできるのか
- セラミック治療をやり直す方法
- セラミック治療をやり直すリスク
セラミックの色や形が気に入らない場合の対処法について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
セラミック治療のやり直しはできる?
セラミッククラウンの色や形に違和感がある場合、基本的に微調整だけで理想の仕上がりに近づけるのは難しいとされています。特に色調や形態に明確な不満がある場合は、クラウン自体を新たに作り直す必要があります。
クラウンの再製作を行うには、まず現在装着されているものを丁寧に除去し、土台となる歯の状態を確認したうえで、あらためて型取りを行います。その後、色調や形状について歯科医師と相談しながら、再びクラウンを製作し装着するという流れです。
この際には、自身の希望と歯科医師の専門的な視点をすり合わせることが重要です。完成後に再度違和感を覚えないためにも、治療前にしっかりとしたカウンセリングを受け、色味や形状のイメージを具体的に共有しておくことが、満足のいく仕上がりを実現する鍵となります。
セラミックの色や形が不自然になる原因
セラミックの色や形が不自然になる原因は主に2つ考えられます。以下で、原因別に詳しく解説します。
周囲の天然歯と合っていない
セラミック治療で仕上がりが不自然になる原因の一つに、周囲の天然歯との色調や質感の違いがあります。特に「白く美しい歯にしたい」という希望から、実際の歯よりも明るすぎる色を選んでしまうと、仕上がりが不自然に感じられ、1本だけ浮いて見えることがあります。
セラミックの色はシェードガイドという見本を使って決めるとされていますが、光の当たり方や口腔内の環境によって印象が変わるため、慎重な判断が求められます。また、治療経験の少ない歯科医師の場合、全体のバランスや色の違和感に気付かないまま治療を進めてしまうこともあるため注意が必要です。
自然な見た目に仕上げるには、隣接する歯や反対側の歯との調和を重視した色選びが重要です。
セラミック歯の大きさや形が悪い
セラミック治療で仕上がりが不自然になるもう一つの原因は、歯の大きさや形が周囲の天然歯と調和していないことです。
セラミックは色調だけでなく、形状や長さも細かく調整できるのが特徴ですが、特に前歯など目立つ部分で数本だけを治療する場合は、隣接する歯とのバランスが重要です。
例えば、治療した歯だけが大きく目立ったり、逆に小さくて短かったりすると、口元全体の印象に違和感が生まれてしまいます。色味の違いには気付きやすいものの、形状のズレは治療中には意外と見落とされがちで、治療が終わってから「何かおかしい」と感じるケースも少なくありません。
自然な仕上がりにするためには、写真や仮歯を使って事前に形のイメージを共有することが大切です。
セラミック治療をやり直す方法
セラミック治療をやり直す際には、以下の流れで進められます。手順別に解説します。
①セラミックの除去
セラミック治療をやり直す際は、まず現在装着されているセラミックを専用の機器を用いて丁寧に除去する工程から始まります。この作業では、歯の神経が生きている場合に痛みが生じる可能性があるため、必要に応じて局所麻酔を使用して痛みを軽減します。
古いセラミックを取り除けずに一部だけ残してしまうと、歯根にひびが入ったり、歯髄が刺激を受けて痛みが出たりするリスクが高まります。また、中途半端な除去は新たに装着するセラミックの安定性を損ない、割れやすくなる原因にもなりえます。
そのため、やり直しの治療では原則としてすべての古いセラミックを取り外し、歯の状態を整えたうえで新たな補綴物を製作し、装着するのが基本です。
②むし歯がある場合はむし歯の治療
セラミックを除去した後、内部にむし歯が見つかることがあります。表面からは見えない位置で進行しているケースも多く、気付かないうちに悪化していることも少なくありません。
むし歯が浅ければ削って詰めるだけの処置で済みますが、むし歯が深く神経まで達している場合や、歯の根の先に膿が溜まっている場合には、根管治療が必要です。
根管治療では、歯の内部にある神経や感染部位を丁寧に取り除き、清掃と消毒を行ったうえで密閉します。
むし歯を放置すると、神経が壊死して歯が黒ずんだり、歯肉が下がって歯の固定力が弱まり、不安定になる恐れもあります。そのため、セラミックのやり直し時にむし歯が確認された場合は、まずは除去し、治療してから新たなセラミックの準備に進みます。
③歯の形を整える
セラミックの被せ物を新たに装着する際には、まず歯の形を再び整える必要があります。セラミックは見た目や機能性を備えている一方で、強度や審美性を保つために一定の厚みを持たせる必要があるため、土台となる歯との適合性を高めるためには精密な形成が欠かせません。
なかでも、再治療の場合は、過去に一度削られている歯をさらに整えることになるため、健全な歯質の削除量が増えるリスクもあります。削る量が多くなる程、歯へのダメージや神経への影響が懸念されるため、歯科医師による慎重な判断が求められます。
形の調整が完了したら、次に型取りを行い、そのデータをもとにセラミックの色や形を決定して製作に入ります。
④仮歯を装着
歯の形を整えた後は、完成したセラミックを装着するまでの間に仮歯を取りつける工程があります。セラミックは審美性や適合性を追求して色や形を細かく調整しながら製作されるため、完成までに1〜2週間程の期間が必要です。
その間、見た目や噛み合わせに配慮し、日常生活に支障が出ないよう仮歯が装着されます。仮歯は審美面を保つだけでなく、食事や会話を快適に行うための役割も果たしますが、本歯に比べて接着力が弱く、外れやすいのが特徴です。
なかでも、キャラメルやガムといった粘着性の高い食品は仮歯が取れる原因となるため、注意が必要です。また、仮歯の期間中は本歯と同じように丁寧なケアを心がけることが重要です。
仮歯の状態を通じて噛み合わせや見た目の最終確認を行うこともあるため、この期間も本治療の大切な一部として意識して過ごすことが求められます。
⑤新しいセラミックの装着
新しいセラミックが完成したら、まず仮歯を装着していた期間の経過をふまえながら、実際のセラミックを用いて噛み合わせや見た目、フィット感の細かな調整を行います。
形状や色調に問題がなく、違和感もないことを確認したうえで、専用の接着剤を使って本番のセラミックを歯に固定します。
これで治療は一とおり完了となりますが、装着後しばらくは軽い痛みや違和感を覚えることがあるため、無理をせず徐々に慣らしていくことが大切です。また、セラミックと歯の境目には汚れがたまりやすいため、日々のセルフケアだけでなく、定期的に歯科医院でのメンテナンスを受けることが推奨されます。
早期に異常を発見し、必要に応じた対応をとることで、セラミックの寿命を延ばし、長く快適に使い続けられます。
セラミック治療をやり直すリスク
セラミック治療をやり直す流れについて解説しました。ここでは、セラミック治療をやり直すリスクについて詳しく解説します。
歯や歯根の破損の可能性
セラミック治療をやり直す際、歯の土台に使用されているコアを除去する必要が生じることがあります。特に、金属製のメタルコアが使われている場合、審美性を高めるために取り除く処置が行われますが、この工程にはリスクも伴います。
メタルコアの形状や位置によっては、除去時に歯根へ大きな力がかかり、歯にひびが入ったり割れたりする可能性があります。ひびや破折の程度が軽度であれば修復できることもありますが、破折の位置が深かったり方向が不適切だった場合、抜歯が避けられないこともあります。
なかでも、歯の神経をすでに失っている失活歯は脆く、破損のリスクが高まるため、治療の際には慎重な判断と処置が求められます。
痛みを伴う可能性
神経が残っている歯にセラミックを装着している場合、やり直しの際に歯を再度削ることで神経が刺激され、痛みを伴うリスクがあります。なかでも、土台の形状や削る深さによっては、歯の神経が近くにあるため、冷たいものや熱いものにしみる知覚過敏の症状や、歯髄炎といった炎症が起こる可能性も考えられます。
症状が一時的なものであれば自然に落ち着くこともありますが、痛みが強く持続する場合は、神経を除去する根管治療が必要になることもあります。また、元の歯の形や残存量によっては刺激が伝わりやすくなるため、治療前には歯の状態を丁寧に確認し、必要に応じた処置を選択することが重要です。
セラミック治療のやり直しにかかる費用
セラミック治療のやり直しにかかる費用は、保証の有無によって大きく異なります。
まず、以前セラミック治療を受けた歯科医院でやり直す場合は、保証の内容を確認しましょう。チェックすべきポイントは保証の有無、保証期間、保証条件の3点です。保証の内容によっては、一定期間内での破損や脱離であれば、無料または低額で再治療を受けられることもあります。
医院によっては数年の保証期間を設け、破損や欠けなどが対象になることもあるため、治療前に保証の詳細を把握しておくことが重要です。
一方、保証が適用されないケース、例えば保証期間が過ぎている場合やほかの歯科医院でやり直す場合には、全額自己負担する必要があります。
費用は歯科医院やセラミックの種類、歯の部位によって異なりますが、オールセラミッククラウンであれば1本あたりおよそ10万〜15万円前後が相場です。ジルコニアセラミックやハイブリッドセラミックなど、使用する素材によっても金額は変動します。
治療を受ける前に、保証の有無とその内容、そしてやり直し費用の目安について、歯科医師にしっかりと確認することが大切です。
セラミック治療の前には十分な相談を
セラミック治療を受ける前には、事前の診察と十分な相談を通じて、歯の色や形に対する希望をしっかりと伝えておくことが大切です。治療後に「思っていた色と違う」「不自然に白すぎる」といった不満を抱くのは、事前のすり合わせが不足していることが原因になることがあります。
例えば、形については実際のセラミッククラウンを模した仮歯を装着し、見た目や感触を確認しておくことでイメージの共有がしやすくなります。色調に関しても、シェードガイドを使うだけでなく、周囲の歯との調和やグラデーションの再現まで考慮して決めていくと自然な仕上がりが期待できます。
また、セラミックにはオールセラミック、ジルコニア、ガラス系素材など複数の種類があるため、目的や部位に応じて素材を選ぶことも重要です。納得のいく仕上がりのために、事前の相談を丁寧に重ねることが治療成功のカギとなります。
まとめ
ここまでセラミックの色や形が気に入らない場合の対処法についてお伝えしてきました。セラミックの色や形が気に入らない場合の対処法の要点をまとめると以下のとおりです。
- セラミッククラウンの色や形に違和感がある場合、基本的に微調整だけで理想の仕上がりに近づけるのは難しいとされており、特に色調や形態に明確な不満がある場合は、クラウン自体を新たに作り直す必要がある
- セラミック治療のやり直しは、古い被せ物の除去から始まり、必要に応じたむし歯治療や歯の形の調整、仮歯の装着を経て、新しいセラミックを取り付けるまでの段階的な工程で進むが、完成後もケアが重要
- セラミック治療をやり直す際には、メタルコアの除去時には歯根に負担がかかり、歯が割れる可能性があるほか、神経が残っている歯では削る刺激によって痛みや知覚過敏が生じ、症状によっては根管治療が必要になるケースもあるため、歯の状態を事前にしっかりと確認しながら、慎重に処置を進めることが求められる
セラミック治療を受けたものの、色や形に違和感を覚える場合、基本的にクラウンの再製作が必要となります。見た目に不満が残ると、日常生活にも影響を及ぼすため、再治療を検討する方も少なくありません。
やり直しは、セラミックの除去から始まり、必要があればむし歯治療や歯の形成を行い、仮歯の装着を経て、新たなクラウンを装着するという流れで進みます。ただし、メタルコア除去時の歯根破折や神経刺激による痛みなど、リスクを伴う点にも注意が必要です。
満足のいく仕上がりにするには、治療前のカウンセリングで色や形の希望を丁寧に伝え、素材や治療計画を歯科医師と十分に相談することが大切です。
これらの情報が少しでもセラミックの色や形が気に入らない場合の対処法について知りたい方のお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました