お口の中が乾いたり、粘ついたりする状態が続くと日常生活に支障を感じることがあります。
こうした状態はドライマウスと呼ばれ、加齢やストレス、薬の副作用などさまざまな要因で引き起こされる場合があります。
ドライマウスを軽視して放置すると、むし歯や歯周病に留まらず全身の病気につながる恐れもあるため、気になる方は早急に対応しましょう。
原因に合わせた対策や治療を行えば、改善を目指すことができます。
この記事ではドライマウスの症状や原因、治療法についてわかりやすくご紹介します。
ドライマウスの原因や症状
- ドライマウスとはどのような状態ですか?
- ドライマウスは、唾液の分泌量が減少してお口の中が乾燥する状態を指します。
ドライマウスは、ストレスや緊張の影響が関係しており現代の社会環境が原因となるケースもあります。
お口が乾くことで話しにくさや食事のしづらさを感じやすくなり、日常生活に支障をきたすこともあるため注意が必要です。
- ドライマウスの原因を教えてください。
- ドライマウスの原因は、糖尿病や腎不全などの全身疾患や薬の副作用、加齢による筋力の低下などです。
例えば、更年期の不調で抗うつ剤を使用している方がその副作用で唾液が出にくくなり、唾液が出にくいことにさらにストレスを感じて症状が悪化する場合もあります。
また、近年はファストフードややわらかい食事を摂ることが増えており、咀嚼(そしゃく)の機会が減っていることで唾液の分泌が促されにくくなります。
唾液腺を支える筋肉も衰えて唾液の分泌量が減少していることも原因の一つです。よく噛まない、硬い食べ物を摂らない生活習慣もドライマウスの一因となります。
- どのような症状が出ますか?
- ドライマウスの主な症状は以下のとおりです。
- お口の中が粘つく
- 舌に痛みが出る
- 口臭が強くなる
- 乾いた食品が食べられない
- 食べ物をうまく飲み込めない
唾液には口腔内の汚れを洗い流して、清潔に保つ働きがあります。その分泌が減ることでさまざまな感染症のリスクが高まります。
特に注意したいのは、ドライマウスが進行すると食べ物をうまく飲み込めなくなる摂食嚥下(せっしょくえんげ)障害です。
高齢の方はドライマウスから重篤な病気につながる可能性もあるため、早めに対処するようにしましょう。
- ドライマウスを放置するとどのようなリスクがありますか?
- ドライマウスを放置すると、むし歯や歯周病の発症リスクが高まります。
さらに、誤嚥による肺炎などの全身疾患に発展する可能性があります。
また、ドライマウスで注意したいのがシェーグレン症候群です。これは唾液腺などが自己免疫によって攻撃される病気で、関節リウマチや膠原病(こうげんびょう)とともに起こる場合もあります。
唾液などの外分泌液は細菌の侵入を防ぐ働きがあり、この機能が低下すると感染症のリスクが高まります。口腔の乾燥が続く場合は、早めに医療機関で相談しましょう。
ドライマウス改善のために自分でできる対処法
- ドライマウスのセルフチェック方法を教えてください。
- ドライマウスのセルフチェックは、ガムを用いた唾液分泌量の測定が代表的です。
ガムテストは、10分間ガムを噛んだ後の唾液量で測定を行います。唾液量が10ミリリットル未満であれば唾液の減少が疑われ、6ミリリットル以下で日常生活に支障をきたすおそれがあります。
そのほか、サクソンテストと呼ばれるガーゼを2分間噛み重さを測定する方法や安静時唾液測定などがありますが、ガムテストが手軽な方法です。
精密検査としては唾液腺シンチグラフィーがあり、これは医療機関で受けられる検査です。気になる方は歯科医院や口腔外科に相談しましょう。
- ドライマウス改善のために自分でできる対処法を教えてください。
- ドライマウスの症状をやわらげるには、日々のセルフケアが大切です。代表的な方法としては唾液腺マッサージがあります。
耳下腺(耳の下)、顎下腺(顎の内側)、舌下腺(舌の下あたり)を優しく指で円を描くように刺激すると唾液の分泌が促されます。その際、力を入れすぎないことがポイントです。
また、口腔内の乾燥を防ぐ保湿剤の使用も効果的です。
スプレータイプはさっぱりして手軽ですが効果は短時間です。
ジェルタイプは効果が長持ちしますが、なかには粘りが気になる方もいます。
洗口液タイプは、アルコールフリーのものを選べば刺激も少なく快適に使用することができます。
保湿剤は乾燥した粘膜に直接塗るのではなく、水分で湿らせたうえで使用するのがポイントです。
さらに、歯磨き粉も刺激の少ないタイプを選ぶようにしましょう。
保湿剤は種類や成分、使用感に個人差があるため、症状や好みに合わせて選ぶことが大切です。ネバつきが気になる方はさらっとしたタイプを、染みる方は刺激の少ないタイプを選ぶと快適に使えます。
- ドライマウスを改善する食べ物があれば教えてください。
- ドライマウスの改善に役立つ食品として注目されているのが、うまみ成分を含む食べ物です。うまみには酸味と同等の唾液分泌促進作用があり、その効果が長時間持続することが確認されています。酸味を含む食べ物も唾液分泌促進作用がありますが、人によっては刺激が強すぎる場合があります。うまみ療法として、以下のような食材がおすすめです。
- 昆布
- かつお節
- 椎茸
- 味噌
- トマト
これらの食品は口腔内を刺激しすぎず、穏やかに唾液の分泌を促します。ドライマウス緩和のために毎日の食事に取り入れてみましょう。
ドライマウスの治療方法
- ドライマウスで医療機関にかかる目安を教えてください。
- ドライマウスは単なるお口の渇きではありません。放置するとむし歯や歯周病、口臭、嚥下障害や味覚異常などを引き起こすリスクがあります。
特に以下のような症状が継続する場合は、医療機関を受診する目安になります。- 水分を摂ってもお口が乾く
- 食べ物が飲み込みにくい
- 会話がしにくい
- 夜間に乾燥で目が覚める
ドライマウスは、加齢や薬の副作用、全身疾患の影響など原因はさまざまです。
日常生活に支障が出ている場合は自己判断せずに、早期に受診するようにしましょう。
- ドライマウスは何科で受診すればよいですか?
- ドライマウスの診察は、まず歯科医院を受診するのが一般的です。
歯科医院では問診や唾液の分泌量を測る検査、口腔内の乾燥状態評価を行うことで乾燥の程度や原因の見当がつきます。
原因には加齢やストレス、薬の副作用、糖尿病やシェーグレン症候群などの全身疾患があり歯科医院だけでの対応が難しいことも少なくありません。
そのため、必要に応じて内科や婦人科、眼科、循環器科など他科との連携が必要です。その場合は総合的に治療を進めることになります。
まずは歯科医院を受診し、全身の関連性も視野に入れて相談するようにしましょう。
- 医療機関での治療方法を教えてください。
- ドライマウスの治療では、症状や原因に合わせて複数の方法を組み合わせて行います。
薬物療法では、唾液分泌促進剤としてセビメリン塩酸塩(エボザック、サリグレン)やピロカルピン塩酸塩(サラジェン)が使われます。
これらはシェーグレン症候群や放射線治療後の口腔乾燥症に保険適用がありますが、心疾患や喘息がある方には使用できません。
副作用として発汗や動悸、吐き気が出る可能性があるため注意が必要です。
また、体質や症状に応じて漢方薬を併用するケースもあります。
心理的なストレスが関与している場合には、認知行動療法などの心理療法を取り入れることもあります。
さらに、薬剤性のドライマウスは原因薬剤の見直しを主治医と連携することが大切です。
人工唾液や保湿ジェルなどの対症療法と口腔筋機能療法を併用して、患者さんの状態に応じて総合的に治療を進めていきます。
編集部まとめ
ドライマウスは加齢や薬の副作用、全身疾患などにより唾液の分泌が減少し、口腔内が乾燥する状態を指します。
進行するとむし歯や歯周病など身体にさまざまな悪影響を与える可能性があります。ドライマウスを軽視すると、日常生活に支障をきたすこともあるため早期に歯科医院などの医療機関を受診しましょう。
今回ご紹介した、こまめな水分補給やうまみ成分を含む食品の摂取、ストレスの軽減など日常的に実践できる対処法も効果的です。
不安を感じている方も、正しい知識をもとに適切なケアを行うことで症状の悪化を防ぎ、快適な日常生活を送れるでしょう。
参考文献