歯を失った箇所の機能を回復してくれる部分入れ歯。保険適用で作成できるのは経済的でいいのですが、金属部分が目立ってしまうのが利用者としてはどうしても気になるところではないでしょうか。
この記事では、歯科医院で行われている部分入れ歯を使用した治療方法について、どのような種類があるのか、また、目立ちにくい部分入れ歯はあるのか、それぞれのメリットやデメリットなどについて解説しています。
できるだけ自然な見た目の部分入れ歯を使用したいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
部分入れ歯ついて
- 部分入れ歯とは何ですか?
- 部分入れ歯とは、何らかの理由で歯や歯肉が失われたところに、その機能を回復させたり補うために入れる、取り外し可能な歯を模した人工的な装置のことを言います。
会話中や食事中などに外れないように固定するために、クラスプと呼ばれるバネと、歯に似せた人工歯、歯茎に似せたピンク色の床(義歯床)などが組み合わさった形になっています。
- 部分入れ歯はどのような人が利用しますか?
- むし歯や歯槽膿漏、外傷など、何らかの理由で歯や歯肉を部分的に失ってしまった人が、失った機能を回復するために使用します。
部分入れ歯以外の方法として、インプラント治療なども同じような用途で利用されますが、インプラント治療との違いとしては、保険適用で安価で作れることや、1〜2週間程度と早く作れること、そして一番の違いは、取り外しが可能なことが挙げられます。
そういったことを踏まえると、治療費を抑えたい人や、外科的な対処法以外を選択したい人、インプラント治療を検討中でとりあえずの対策を講じておきたい人などが利用すると考えられます。
- 部分入れ歯は保険適用で作れますか?
- 部分入れ歯は保険適用で作れます。
保険適用の部分入れ歯の場合、多くが金属製のバネで固定するタイプのものになりますので、金属部分が目立って審美的に気になってしまう、という方には、目立ちにくい部分入れ歯もあります。
近年、バネで固定せずにマグネットを埋め込んで固定するマグネットデンチャーという治療法が一部、保険適用で受けられるようになりました。 自費診療の部分入れ歯は、金属製のバネがないほか、強度が優れていたり、装着時の不快感や痛みが少ないなどの利点もあります。
部分入れ歯には保険適用のものと自由診療のものとでそれぞれさまざまな種類がありますので、詳しくはかかりつけの歯科医院に相談してみましょう。歯科医院によって対応している治療法が異なりますので、気になる方は複数の歯科医院で相談するセカンドオピニオンなども活用するとよいでしょう。
- 歯がなくなったときの部分入れ歯以外の治療法はありますか?
- 部分入れ歯以外の選択肢としては、ブリッジやインプラント治療があります。 ブリッジとは、失われた歯に隣接した歯の上の部分を少し削って、それらを土台にして橋をかけるように連結させた人工歯を固定することで、失われた部分を埋める治療法です。こちらは入れ歯のように取り外してケアする必要がなく見た目もごく自然に仕上がるメリットがある一方で、健康な歯を削って行うため土台となっている歯への負担が大きく、歯の寿命を短くしてしまうというデメリットがあります。
インプラント治療は、歯肉を切って金属の土台を骨に埋め込み固定して、その金属に人工的な歯を装着する方法です。定期的なメンテナンスが必要ではあるものの自分の本来生えている歯と同じように使えて見た目も自然であるというメリットがある一方で、費用が高額であったり、外科的な治療のため身体的な負担が大きいことや、金属アレルギーなどで装置が身体に生着しない場合があり適用できない場合もあるなどのデメリットもあります。
- マグネットデンチャーとはなんですか?
- インプラントと部分入れ歯のよいところを取り入れたハイブリット的な治療法です。
失った歯の周囲の残っている歯の根元や、インプラント治療の要領で埋め込んだ金属の土台を利用して、部分入れ歯を磁石でくっつけてはめこむタイプの部分入れ歯です。
ずれにくく、安定性がよく、取り外しが簡単です。さらに金属が見えるところに使われていないため、目立ちにくいです。
目立たない部分入れ歯とは
- 部分入れ歯にはどのような種類がありますか?
- 部分入れ歯の特に多く普及しているものが、金属床義歯といわれる金属製(チタンやコバルトクロム素材)のばねや床(しょう)と呼ばれる入れ歯の土台を使用したものです。保険適用の部分入れ歯で、安価で作成できます。 目立ちにくい部分入れ歯として、ノンクラスプデンチャーといわれる主に樹脂製のものがあります。ものによっては見えない部分に金属を使用しているものもありますが、歯茎に当たる部分が樹脂製のものの場合はやわらかい装着感がありつけ心地が特によくなっています。金属が目立ちにくいことからナチュラルデンチャーとも呼ばれます。 そのほかの目立ちにくい部分入れ歯として、マグネットデンチャーやインプラントオーバーデンチャーといわれるものがあります。マグネットデンチャーは、残った歯や歯肉を土台として利用して、部分入れ歯を磁石でくっつけて使用できるように器具をつける方法です。つけ外しがしやすく、ずれにくくつけ心地がよいのが特徴です。
インプラントオーバーデンチャーは、インプラント治療で埋め込んだ金属の土台を利用して人工歯をはめ込んで使用します。
- 目立たない部分入れ歯はありますか?
- 目立ちにくい部分入れ歯はありますが、保険適用のものは残念ながらありません。
しかし、令和3年から、バネで固定せずにマグネットを残った歯に埋め込んで固定するマグネットデンチャーという治療法の一部が保険適用で受けられるようになりました。 自費診療であれば、目立ちにくい部分入れ歯があります。
主に樹脂で作られたノンクラスプデンチャー(ナチュラルデンチャー)は、金属を使用せずに作成できるため、金属が見えるということはありません。
- 目立たない部分入れ歯は全て保険適用外ですか?
- 残存歯を加工せずにつけられる部分入れ歯としては、目立ちにくい部分入れ歯は全て保険適用外となります。 しかし、残存歯を加工して金属を埋め込み、義歯をマグネットで装着するタイプの器具であるマグネットデンチャーも部分入れ歯の括りとしてとらえるならば、保険適用で作成ができるものもあります。
マグネットデンチャーが保険適用できるのは、根管治療後の根っこだけの状態の歯であることが条件となります。
マグネットデンチャーの注意点として、金属を口腔内に埋め込むこととなるため、人間ドックなどでMRI検査が受けられない場合があります。
- 保険適用の部分入れ歯をなるべく目立たなくすることは可能ですか?
- 保険適用の部分入れ歯は、基本的には金属製のばねが見えるところにあるため、目立たなくすることは難しいです。
それでも何とか目立ちにくいようにしたい場合は、あまりお口を大きく開けないようにするのがよいのではないでしょうか。
保険適用外の部分入れ歯
- ノンクラスプデンチャーとはなんですか?
- 金属が目立ちにくい、部分入れ歯や入れ歯のことです。金属の留め具(クラスプ)が見えないところに使用されていたり、金属をまったく使用せずに樹脂のみで作られたものなど、さまざまな種類があります。
- コーヌス義歯とはなんですか?
- コーヌス義歯は、失った歯の周囲の残存歯を削って内冠を被せ、支台を作り、その上にさらにブリッジのように連結した義歯をつけた外冠を被せます。つまり、支台と義歯とで、二重構造でできた冠を使って嵌め込み式の構造をしている義歯となっています。
簡単にいえば、ブリッジのように残存歯を削って連結した形の義歯を被せる構造の、つけ外し可能な義歯ともいえます。しかしこのコーヌス義歯のポイントは、内冠と外冠が、茶筒の蓋のような要領で摩擦力を利用していて外れにくいため、安定性のある付け心地となるという点です。
テレスコープデンチャーといわれる義歯の一種で、コーヌステレスコープ、茶筒式義歯とも呼ばれています。 外科的手術が不要で身体的な負担が少なく、治療期間は1〜2ヶ月程度と短く済みます。しかも、手入れがしやすいため清潔に保ちやすく、金属が見えないので目立ちにくいというのもメリットです。
- シリコン義歯とはなんですか?
- シリコン義歯とは、歯茎に接する部分にやわらかい素材のシリコン素材が使われている入れ歯のことで、やわらかく快適な付け心地であることからコンフォートデンチャーとも呼ばれます。
通常の保険適用の樹脂素材のものを使っていて、痛みや付け心地の悪さを感じる人は、シリコン義歯を使うことでその悩みを解消できることがあります。 シリコン義歯は保険適用外の自費対応となるため高額だと思われがちですが、過去に保険診療で作成した今お使いの入れ歯にシリコンを取り付けて使用できるものもあり、これであれば費用を抑えることも可能です。 シリコン義歯は快適性が高いメリットではありますが、シリコン部分に汚れがつきやすく手入れがしにくいというデメリットもあります。
編集部まとめ
保険適用のものでも、目立ちにくいものとしてマグネットデンチャーが選択できる可能性があることがわかりました。しかし、保険適用の条件があるため、ご自分が適合するのか同化が気になる場合は、歯科医院に相談の上検討してみてはいかがでしょうか。 また、目立ちにくい方法として、自費診療も視野に入れれば、部分入れ歯のほか、コーヌス義歯や、インプラント治療など、選択肢が広がります。
自分にはどの部分入れ歯がいいのか、予算を含めメリットやデメリットなどを詳しく知るためにまずは歯科医師に相談することで、ご自分にぴったりのものが見つかるでしょう。
参考文献