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重度のむし歯になってしまったら?重度のむし歯になった場合の治療方法を解説します

重度のむし歯になってしまったら?重度のむし歯になった場合の治療方法を解説します

むし歯は、放置していると着実に進行していきます。はじめは歯の表面に小さな穴があいている程度で痛みはなく、生活に支障をきたすことはありませんが、重度になると症状は大きく変化していきます。ここではそんなむし歯が重度になった場合の症状や放置するリスク、重度のむし歯の治療法などを詳しく解説します。重度のむし歯に悩まされている、あるいはむし歯を重症化させるのが怖いという人は参考にしてみてください。

むし歯が重度の場合の症状

むし歯が重度の場合の症状 はじめに、重度のむし歯の症状について解説します。

◎歯冠(しかん)がボロボロになる
重度のむし歯では、歯の頭である歯冠がボロボロになっています。これはむし歯菌が産生した酸による影響です。歯冠が崩壊していると噛む機能が失われ、食事のときに噛みにくいと感じることが多くなります。

◎むし歯による痛みが消失する
むし歯のわかりやすい症状は、歯痛(しつう)ですが、進行して重度になるとそれが消失します。なぜなら重度のむし歯では、歯の神経が死んでしまうからです。細菌に侵された歯髄(しずい)は、生活反応を失って失活(しっかつ)します。そうなるとむし歯によるズキズキ・ジンジンといった自発痛は嘘のように消えてなくなるのです。それは患者さんにとってある意味ポジティブな変化に感じられるかと思いますが、実際は、むし歯の末期症状のため、歓迎すべきものではありません。

◎口臭が強くなる
重度のむし歯では、根管内で細菌が異常繁殖し、歯髄などの軟組織を腐敗させることで悪臭を放つようになります。その結果、口臭が強くなることもあるのです。むし歯が原因で口臭が強くなった場合は、いよいよ末期に至ったと考えるべきでしょう。

むし歯が重度になるとどうなる?

むし歯が重度になるとどうなる? 続いては、むし歯が重度になると、次に何が起こるのかについて解説します。

むし歯菌がほかの歯にも影響を与える可能性

重度のむし歯は、単なる一部の歯の問題にとどまらず、口腔内全体に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、隣接する健康な歯にもむし歯菌が広がり、新たなむし歯を引き起こすことがあります。特に、奥歯の噛み合わせの部分や歯と歯の間など、磨き残しが発生しやすい箇所では、むし歯菌がほかの歯に感染しやすく、結果として複数の歯にむし歯が広がるリスクが高まります。そのため、早期の段階でむし歯を治療することが重要です。

歯を失う可能性

重度のむし歯が進行すると、歯を失う可能性があります。むし歯が深部に達し、歯髄にまで感染が広がると、強い痛みや炎症を引き起こします。重症化が進むと歯髄が壊死し、歯を保存するのが難しくなり、抜歯が必要となるのです。歯を失うことで、噛み合わせに問題が生じ、残った歯にも負担がかかるため、さらなるむし歯のリスクが高まる点にも注意が必要です。ちなみに、むし歯が重症化しても歯が自然に脱落することはそれ程多くありません。

その他の疾患につながる可能性

重度のむし歯は、歯そのものの問題にとどまらず、さまざまな疾患を引き起こす可能性があります。以下に代表的な疾患を紹介します。

◎根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)
むし歯が進行し、根管内の病変が根っこの先に漏れ出ると、根尖性歯周炎という病気を発症します。強い痛みや腫れを伴い、放置すると感染が顎の骨に広がることもあります。

◎顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)
むし歯菌が顎の骨に侵入し、骨髄に炎症を引き起こす疾患です。骨髄炎は治療が難しく、長期の治療が必要になる場合があります。

◎副鼻腔炎(ふくびくうえん)
上顎の奥歯のむし歯が進行すると、副鼻腔に感染が広がり、副鼻腔炎を引き起こすことがあります。これにより、鼻づまりや頭痛が生じることがあります。

◎感染性心内膜炎(かんせんせいしんないまくえん)
口腔内の細菌が血流に乗って心臓に達し、心臓の内膜に感染を起こすことがあります。特に、心臓に問題を抱える患者さんはリスクが高く、命に関わる重篤な状態になることもあります。

◎蜂窩織炎(ほうかしきえん)
むし歯が原因で、顎の周囲の組織に細菌が広がり、蜂窩織炎を引き起こすことがあります。これは、顎や顔が腫れ、痛みを伴う状態で、緊急の治療が必要です。

これらの疾患は、むし歯を適切に治療することで予防できるため、重度のむし歯が疑われる場合は、早急に歯科を受診することが重要です。

むし歯の進行段階

むし歯の進行段階 次に、むし歯の進行段階について見ていきましょう。むし歯の進行度は、CO(シーオー)からC4までの5段階に分けられます。

CO(初期むし歯)

COとは、むし歯の初期段階であり、エナメル質の表面に白斑が現れる状態です。まだエナメル質の深部に影響を与えていないため、痛みや不快感はほとんどありません。この段階では、適切な歯磨きとフッ素塗布によって再石灰化が可能です。患者さんがこの時点で気付き、早めに対処することで、むし歯の進行を食い止めることができます。

C1(エナメル質のむし歯)

C1は、むし歯がエナメル質に限局している状態です。エナメル質に小さな穴が開き、患者さんは冷たい飲み物がしみることがありますが、まだ痛みを感じることは少ないです。この段階では、歯を削り、コンポジットレジンなどの詰め物で修復することで治療が可能です。適切なタイミングでの治療が重要で、進行を防ぐために早期の歯科受診が推奨されます。

C2(象牙質のむし歯)

C2は、むし歯がエナメル質を超えて象牙質に達した状態です。この段階では、患者さんは冷たいものや甘いものに対して強い痛みを感じることがあります。象牙質はエナメル質よりもやわらかく、むし歯の進行が早いため、早急な治療が必要です。治療方法としては、むし歯部分を削り、詰め物やインレーで修復します。進行を防ぐためには、定期的な検診と早めの治療が大切です。

C3(歯髄のむし歯)

C3は、むし歯がさらに進行し、歯髄にまで達した状態です。この段階では、患者さんは激しい痛みを感じ、歯の神経が細菌に感染しています。この場合、感染した歯髄を取り除く根管治療が必要です。根管治療後は、歯を保護するためにクラウンを被せることが一般的です。この段階まで進行すると、治療が複雑になり、費用も増加します。

C4(歯根のむし歯)

C4は、むし歯が歯の根にまで達し、歯全体がほぼ崩壊している状態です。この段階では、患者さんは痛みが消えることもありますが、これは歯の神経が死んでいるためです。C4まで進行した場合、歯を保存するのは難しく、抜歯が必要になることがほとんどです。

重度のむし歯の治療

重度のむし歯の治療 重度のむし歯は、次の方法で治療します。

元どおりにするのは難しい

むし歯が重度になると、通常のむし歯治療や根管治療で対応することが難しくなります。なぜなら歯冠が崩壊し、歯の神経も死んで、根管内までボロボロになっているからです。それを標準的な治療でもとに戻すことは困難であることから、ほとんどのケースでは抜歯が第一選択となります。歯を抜いた後は、欠損部を補うための補綴治療を実施します。

重症度により治療方法が異なる

失った歯を補う補綴治療は、ブリッジ・インプラント・入れ歯の3種類に分けられます。それぞれに異なる特徴とメリット・デメリットがあり、適応症も少しずつ異なる点に注意が必要です。どの治療法が適しているかは、患者さんの口腔内の状態によって変わります。

・ブリッジ
ブリッジは、欠損した歯の両隣の歯を支えとして、人工の歯を固定する治療法です。この治療法の大きな特徴は、見た目が自然であり、短期間で治療が完了する点です。また、治療費がインプラントよりも安価であるため、費用を抑えたい患者さんには魅力的です。

ブリッジのデメリットとして、支えとなる健康な歯を削る必要があることが挙げられます。削られた歯には負担がかかり、将来的にその歯の寿命を短くする可能性があります。また、ブリッジは噛み合わせの力が支えの歯に集中するため、長期的に見て支えの歯が弱くなるリスクがあります。このため、支えの歯が強く、全体的な口腔状況が良好な患者さんに適しています。

・インプラント
インプラントは、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、そのうえに上部構造を装着する治療法です。インプラントのメリットは、周囲の歯に影響を与えず、噛み合わせが自然でしっかりしている点です。また、長期的に安定した状態を保つことができるため、健康な歯を削りたくない方や、長期的な口腔の健康を重視する患者さんに適しています。

インプラントのデメリットとしては、治療期間が長くなることや、手術を伴うため侵襲性が高いこと、そして費用が高額になる点が挙げられます。インプラント治療にかかる費用は、1本あたり300,000〜500,000円程度が全国的な相場です。また、顎の骨の状態によっては、インプラントが適用できないケースもあります。基本的には顎の骨が十分に残っている場合に適している治療法です。

・入れ歯
入れ歯は、取り外し可能な義歯で、部分的なものから全体的なものまでさまざまなタイプがあります。入れ歯の特徴は、ほかの歯を削る必要がなく、安価で治療を受けられることです。また、歯の欠損がある場合にも対応できる柔軟性があります。

一方で、入れ歯にはデメリットも存在します。固定が不十分な場合、噛み合わせが不安定になりやすく、食事や会話に支障をきたすことがあります。また、毎日取り外して清掃する必要があり、手入れが面倒に感じる患者さんもいるかもしれません。入れ歯は、複数の歯を失っている方や、手術を避けたい方、そして費用を抑えたい方に適しています。

抜歯後の治療法は、患者さんの口腔状態やライフスタイルに応じて選択することが重要です。それぞれの治療法のメリット・デメリットを理解し、自分に合った方法を選びましょう。

重度のむし歯になる前に取るべき予防方法

このように、むし歯が重症化すると深刻な症状に悩まされるだけでなく、歯そのものを失うことで治療方法も複雑になります。それだけにむし歯の重症化は可能な限り避けたいものです。次に挙げる方法を実践することで、むし歯を予防、あるいは軽度の段階で治療できるようになります。

定期検診に行く

歯の定期検診は、むし歯の早期発見と予防に欠かせないステップです。患者さんが定期的に歯科検診を受けることで、初期のむし歯や歯周病の兆候を早期に見つけることができます。早期に発見された問題は、簡単な治療で解決でき、重度のむし歯に進行するリスクを大幅に減らすことができます。多くの歯科医院では、3〜6ヵ月ごとの定期検診を推奨していますので、ぜひ計画的に受診しましょう。重度のむし歯を患った経験がある人は、短い間隔での歯科検診の受診が推奨されます。

シーラントを実施する

シーラントは、奥歯の噛み合わせ面にある細かな溝を樹脂で埋める処置です。お子さんの歯は溝が深く、歯磨きが不十分な場合、そこに汚れが溜まりやすくなります。シーラントを施すことで、むし歯菌が入り込むのを防ぎ、むし歯の発生を予防する効果が期待できます。特にむし歯リスクが高いお子さんには効果的な予防法です。ちなみにシーラントは、大人のむし歯予防でも実施する場合があります。

歯のクリーニングをする

歯のクリーニングは、歯科医院で専門的に行う歯垢や歯石の除去処置です。日常の歯磨きでは取り切れない歯垢や歯石は、むし歯や歯周病の原因となります。歯科医師や歯科衛生士によるクリーニングで、口腔内を清潔に保つことが重要です。また、クリーニングを定期的に行うことで、患者さん自身が気付かない問題点を指摘してもらい、適切なケアが受けられます。

毎日の歯磨き方法を見直す

毎日の歯磨きは、むし歯予防の基本です。しかし、正しい方法で磨けていないと、歯垢が残りやすくなり、むし歯のリスクが高まります。歯科医師や歯科衛生士に歯磨き指導を受け、自分に合った歯ブラシや歯磨き粉の選び方を確認しましょう。特に噛み合わせ部分や歯と歯の間は注意して磨く必要があります。フロスや歯間ブラシも併用し、口腔内を清潔に保つことで、むし歯の予防効果が高まります。

これらの予防策を実践し、定期的なケアを行うことで、重度のむし歯になるリスクを大幅に減らすことができます。患者さんやお子さんの歯の健康を守るために、ぜひ日頃から意識して取り組んでみてください。

まとめ

今回は、重度のむし歯になった場合の治療方法について解説しました。細菌感染によって歯冠や根管がボロボロになり、歯の神経が死んだむし歯では、抜歯以外の治療の選択肢がなくなることがほとんどです。抜歯をした後は、ブリッジ・インプラント・入れ歯といった補綴治療が必要となります。選択した治療法によっては、数十万円の費用がかかるため、むし歯は可能な限り軽度の段階で治療したいものです。本文で紹介した重度のむし歯になる前に取るべき予防方法を実践すれば、そのリスクをできる限り抑えることができるでしょう。いずれにしても歯に何らかの異常が認められた時点で歯科を受診するようにしましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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