近年では、歯の美しさを求める方が増えてきています。以前はむし歯の治療といえば、保険が適用される銀歯が主流でしたが、見た目が目立つといったデメリットがありました。
銀歯は見た目以外にもさまざまなデメリットがあるため、銀歯から白い歯に変更する患者さんも少なくありません。本記事では、銀歯を白くする方法と白くしたほうがよい理由や保険適用、注意点について解説します。
銀歯を白い歯に変えたいけど悩んでいる方に、少しでも参考にしてもらえれば幸いです。
銀歯を白くしたほうがよい理由
まずは、銀歯を白くしたほうがよい理由からお伝えしましょう。理由は大きく3つあります。
- 銀歯はむし歯になりやすいため
- 金属アレルギーになる可能性があるため
- 歯茎が黒くなる場合があるため
では、それぞれ詳しく解説していきましょう。
銀歯はむし歯になりやすいため
銀歯を白くしたほうがよい理由の1つ目は、銀歯はむし歯になりやすいためです。銀歯は金銀パラジウム合金という素材が使用されており、保険診療で一般的に詰め物や被せ物として適用されます。
しかし、金銀パラジウム合金は経年劣化しやすく、もとの歯と銀歯の間にすき間が生じやすい特徴があります。このすき間に食べかすやプラーク(細菌の塊)が溜まると、むし歯菌が繫殖しやすくなり、新たなむし歯が発生するリスクが高まるため注意が必要です。
銀歯の下にむし歯が発生すると、発見が遅れるだけでなく、気付いたときにはむし歯が歯の奥深くまで進行しているケースも少なくありません。一方で白い歯にはセラミックやジルコニアなどの素材が使用されています。セラミックやジルコニアは歯と密着しやすい特徴があるため、もとの歯と詰め物や被せ物にすき間ができにくいことが特徴です。また、セラミックやジルコニアの表面は滑らかなため、プラークが付着しにくいといったメリットもあります。銀歯よりも清掃しやすい点も、歯を白くしたほうがよい理由の1つになります。
金属アレルギーになる可能性があるため
白くしたほうがよい理由の2つ目は、金属アレルギーになる可能性があるためです。銀歯に使用されている金銀パラジウム合金には、パラジウムや銀、金や銅などの金属が含まれています。
そのため、アレルギー体質の方や長期間銀歯を使用していると、金属アレルギーを発症する可能性が高まります。金属アレルギーを発症した場合にみられる症状は、以下のとおりです。
- 歯肉炎
- 口唇炎
- 舌炎
- 味覚障害
- 歯や歯肉の変色
- 皮膚炎(手足やお顔の湿疹)
- じんましん
金属アレルギーはお口のなかだけでなく、皮膚炎やじんましんのように症状が全身に及ぶことがあります。特に、過去にネックレスやピアスなどで金属アレルギーを発症した経験のある方は注意が必要です。
一方、白い歯に使用されている素材はアレルゲン物質が少ないものになります。金属アレルギーを発症する危険性がある方は、事前に歯科医師に相談することが大切です。
歯茎が黒くなる場合があるため
白くしたほうがよい理由の3つ目は、歯茎が黒くなる場合があるためです。歯茎が黒くなるメタルタトゥー現象は、銀歯に含まれる金属が唾液によってイオン化し、溶け出すことによっておこります。
前歯に銀歯を使用している場合は、メタルタトゥーが目立ちやすく、見た目の問題につながります。一度歯茎に金属イオンが沈着してしまうと、自然に消えることがないため、レーザー治療による除去が必要です。
また、メタルタトゥーは歯周病や加齢による歯茎の退縮によって、銀歯が緑色に見えることもあります。歯の見た目が気になる方や将来的な歯茎の変色を避けたい方は、歯を白くしたほうがよいでしょう。
銀歯を白くする方法
ここからは銀歯を白くする方法について解説します。セラミックやジルコニアなどの素材を使用した歯を白くする方法は8つあります。
それぞれにメリットやデメリットがあるため、患者さんが求める条件にあったものを選択できるよう、ある程度の知識を持っておくことが大切です。
コンポジットレジン
コンポジットレジンは歯科用プラスチック一種で、むし歯を削った部分に直接流し込んで、光で固める治療法です。コンポジットレジンは天然歯に色味が近く、小さなむし歯や前歯のすき間を埋める治療などによく用いられます。
保険適用で治療を受けられるため、経済的な負担が少ないことはもちろん、1日で治療が完了する場合がほとんどといったメリットがあります。
しかし、コンポジットレジンは強度や耐久性が劣るため、噛む力の強い奥歯や大きなむし歯には適用できない場合があるため注意が必要です。また、経年劣化により変色したり吸水性によって汚れが付着しやすかったりするデメリットがあります。ほかにも、接着剤やコンポジットレジンのアレルギーがある方は、使用できない点もデメリットといえます。
硬質レジン前装冠
硬質レジン前装冠は歯科用プラスチックであるレジンを金属のフレームに貼り付けて作製された被せ物です。前歯に適用されることがほとんどで、保険適用の治療法になります。
内側に金属を使用しているため、金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクがあることも考慮が必要です。また、フレームに貼っているレジンはコンポジットレジンと同様に吸水性があるため、変色する可能性があります。
また、表面が欠けることもあるため、注意が必要です。短期間で治療が完了するメリットもありますが、見た目の美しさや耐久性を重視される方は、ほかの治療法を検討しましょう。
硬質レジンジャケット冠
硬質レジンジャケット冠は歯科用プラスチックであるレジンのみで作製された被せ物で、主に前歯に保険適用で使用されます。金属を使用しないため、金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクもありません。
しかし、コンポジットレジンと同様に強度や耐久性が高くないため、奥歯には適さない治療法になります。短期間で治療が完了することや接着の強度や耐久性は優れていますが、変色する可能性があることに留意しましょう。
CAD/CAM冠
CAD/CAM冠は、ブロック状のレジンをCADやCAMのコンピューターシステムを用いて作製する白い被せ物です。
従来のレジンよりも強度が高く、天然歯と同等の硬さがあり、ほかの歯にダメージを与えにくいといったメリットがあります。ほかにも汚れやプラークが付着しにくく、口腔内をスキャンしてデータを取るため、治療期間が短縮できる点もメリットになります。
一方では外れる可能性があったり、色のバリエーションが少ないことや表面のツヤ感がだんだんと劣化しやすかったり、表面に傷がつくと汚れやすくなることがデメリットです。
食いしばりや歯ぎしりの強い方には向いていない治療法になります。
オールセラミック
オールセラミックは、すべてセラミックと呼ばれる陶器材でできた被せ物です。天然歯と同等の透明感や光沢があり、とても自然できれいな見た目を実現できます。
すべてセラミックで作製されているため、金属アレルギーやメタルタトゥーの心配がありません。表面がツルツルしているため、汚れやプラークが付着しにくく、新たなむし歯が発生するリスクを抑えられます。
一方、保険適用外で治療費が高額になる可能性があります。また、強い衝撃が加わると割れる可能性があることがデメリットです。
ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックは、セラミックとレジンを混ぜ合わせて作製する被せ物です。柔軟性があり、天然歯に近いしなやかさがあります。
ほかの歯にダメージを与えにくく、保険適用外ではありますが、費用を抑えることが可能です。透明感や耐久性、耐摩耗性などは向上しており、天然歯に近い硬さがあるため臼歯部にも使用できることがメリットです。
デメリットとしては、経年劣化したり飲食物による着色汚れが発生したりする可能性があります。
ジルコニア
ジルコニアは、人工ダイヤモンドにも使われるほど硬い素材で、強度と耐久性が優れた素材で作製された被せ物です。噛む力の強い奥歯にも使用できるため、食いしばりや歯ぎしりがある方でも適用できる治療法になります。
天然歯に近い白さを再現でき、長期間の使用でも変色しにくいため、審美性にも優れています。金属を使用していないため金属アレルギーやメタルタトゥーの心配がなく、生体親和性の高さや摩耗のしにくさ、汚れが付着しにくいため口臭のでにくさなどもメリットです。
デメリットとしては保険適用外のため、費用が高額になる傾向にあります。また、硬い素材でできているため、ほかの歯に多少のダメージを与えることもあります。
メタルボンド
メタルボンドは、金属のフレームにセラミックを焼き付けて作製する被せ物です。金属の強度とセラミックの天然歯に近い白さを兼ね備えているため、幅広い症例で適用されている治療法になります。
噛みしめる力の強い奥歯に適用されることがほとんどです。唾液の吸水性による変色や口臭がでにくいといったメリットもあります。
しかし、金属を使用しているため、金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクには注意が必要です。また、透過性が少し劣るため、天然歯のような透明感を再現しにくいといったデメリットがあります。
銀歯を白くする治療は保険適用される?
銀歯を白くする治療は、保険が適用される治療法とされない治療法があります。保険適用で銀歯を白い歯にする方法は、コンポジットレジンと硬質レジン前装冠や硬質レジンジャケット冠、CAD/CAM冠です。
小さなむし歯治療や前歯の治療に適用される方法は、保険適用で費用を抑えて白い歯にできます。
一方、オールセラミックとハイブリッドセラミックやジルコニア、メタルボンドなどの治療法は保険適用外です。これらの素材は天然歯に近い硬さと耐久性や摩耗性、見た目の美しさや金属アレルギーとメタルタトゥーのリスクがないなど、さまざまなメリットがあります。
ただし、メリットが多数ある分、治療費は高額になるため注意が必要です。金属アレルギーの有無はもちろんですが、むし歯の大きさと発生している場所、見た目のこだわりや予算などを歯科医師とよく相談して決めることが大切です。
セラミックの歯のデメリット
セラミックの歯は見た目の美しさや生体親和性の高さ、汚れやプラークが付着しにくい、耐久性があるなどさまざまなメリットがあります。その反面、いくつかのデメリットも存在します。
まずセラミックの大きなデメリットは、保険適用外の治療法であるため、種類や本数によっては自費診療で高額な治療費が必要なことです。また、セラミックは耐久性や摩耗性の高い素材ではありますが、強い衝撃を受けたり噛み合わせがあっていなかったりすると割れることがあります。
そのため、食いしばりや歯ぎしりが強い方の場合は、セラミック治療後にナイトガードと呼ばれるマウスピースを着用して歯への負担を軽減することが重要です。ほかにも、セラミックの強度を保つために、天然歯を削って装着しなければならないこともあります。
一度削った天然歯はもとに戻りません。歯並びの状況にもよりますが、慎重に検討する必要があります。さらにセラミックが欠けたり割れたりした場合、修復が難しく再治療が必要になる可能性もあります。その都度、費用と時間がかかることも知っておくことが大切です。
銀歯を白くした後の注意点
これまで銀歯を白くする方法をお伝えしました。ここからは歯を白くした後の注意点について解説します。
治療した歯に負担をかけないようにする
銀歯を白い歯にした後は、治療した歯に負担がかからないよう注意しましょう。セラミックやレジンなどの素材は、衝撃が加わると割れたり傷ついたりすることがあります。
氷やナッツなどの硬い食べ物は、治療した歯で噛まないよう注意が必要です。また、食いしばりや歯ぎしりが強い方はナイトガードと呼ばれるマウスピースを装着することで、治療した歯を保護することができます。
研磨剤入りの歯磨き粉は使用しない
セラミックやレジンなどの素材は、表面に細かい傷がつくと、そこから着色汚れがつきやすくなる可能性があります。特に、研磨剤が多く含まれた歯磨き粉は歯の表面だけでなく、詰め物や被せ物にも傷をつける可能性が高いです。
せっかく歯を白くしても、傷が蓄積すると表面の光沢が失われたり着色汚れが目立ちやすくなったりするため、研磨剤の入っていない歯磨き粉を使用するようにしましょう。
着色しやすい物を飲食した後は歯磨きをする
歯を白くした後は、着色汚れがつきやすい飲食物の影響を受けることがあります。特にコーヒーや紅茶、カレーなどの色が濃い飲食物をお口にした場合は、歯磨きを徹底するよう心がけましょう。
すぐに歯磨きができない場合は、水でお口をゆすぐだけでも効果的です。近年では、小分けにされているパウチ型の口腔洗浄液も発売されています。
治療後のケアを心がけて、きれいな白い歯を維持することが大切です。
セラミック治療以外で銀歯を白くする方法
セラミック治療以外で銀歯を白くする方法は、今のところ確立されていません。銀歯を白くするには、銀歯を取り除いて白い素材の詰め物や被せ物に変える必要があります。
ただし、銀歯をしている天然歯があまり残っていない場合はブリッジやインプラント、入れ歯を使用することで白い歯に変えられることもあります。一般的に天然歯が残っている状態で銀歯を白くしたいのであれば、詰め物や被せ物を白い素材のものに変えることが唯一の方法です。
まとめ
今回は、銀歯を白くする方法と白くしたほうがよい理由や保険適用、注意点について解説しました。銀歯から白い歯に変える方法はさまざまな治療法がありますが、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
天然歯の状況や患者さんが求める歯の性能によって治療法は異なるため、歯科医師とよく相談して決めることが大切です。
銀歯の見た目に悩んでいる方が、白い歯に変えようと決断できるお手伝いができれば幸いです。
参考文献