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歯の根元に付着する黒いものの正体は?原因と対処法を解説

歯の根元に付着する黒いものの正体は?原因と対処法を解説

歯の表面は半透明のエナメル質で覆われており、その下に分布している象牙質の黄色味を帯びています。そのため、健常な歯でも真っ白ではなく少し黄色味を帯びています。一方、健全な歯が黒く見えることは通常ありません。それにも関わらず歯の根元が黒く見える場合は、何らかの汚れが付着しているか、歯や歯茎に異常が生じている可能性があります。ここではそんな歯の根元が黒く見える症状の原因や対処法について解説します。

歯の根元に付着する黒いものについて

はじめに、歯の根元に黒いものが付着してしまう原因について解説します。

歯の根元の黒い物体の正体はなんですか?
歯の根元に黒い物体が付着している場合は、歯石かプラークが疑われます。どちらも歯の表面に形成されている汚れで、病気や異常がなくても付着することがあります。
歯石とプラークについて教えてください
プラークは、歯垢と呼ばれる汚れで、約80%が水分で構成され、残りの20%は細菌やタンパク質で占められています。食後4〜8時間くらい程で形成され、むし歯菌や歯周病菌の温床となります。歯垢はその大部分が水分なので、歯ブラシで磨けば簡単に取り除けますが、歯石になると除去は難しくなります。

歯石は、プラークが石灰化を受けて石のように硬くなった汚れで、約80%がリン酸カルシウムで構成されています。リン酸カルシウムとは歯を構成する成分のひとつで、その特徴はとても硬く、歯ブラシで磨くことだけでは取り覗けないことです。プラークが形成されてから2〜3日経過すると石灰化が進み、2週間後には歯石となります。歯石には、歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)と歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)の2種類があります。

2種類の歯石の違いはなんですか?
歯肉縁上歯石は、その名のとおり歯茎(歯肉)のうえに形成される歯石で、色味は黄白色を帯びています。一方で、歯肉縁下歯石は、歯と歯茎の境目にある歯周ポケットに形成される歯石で、血液が混ざっているため黒く変色しています。ですから、今回のテーマである、歯の根元に付着する黒いもののほとんどは、歯肉縁下歯石を指しているといえると考えられます。歯肉縁下歯石は歯肉縁上歯石よりも硬く、除去が困難であるため、歯周病を重症化させる主な原因になっている点に注意が必要です。

歯の根元が黒くなる原因

歯の根元が黒くなる原因 プラークや歯石が付着していないにも関わらず、歯の根元が黒く見える、あるいは黒く変色している場合は、汚れ以外の原因がいくつか考えられます。

歯の根元が黒くなる原因は何がありますか?
歯の根元が黒くなる主な原因は、むし歯と歯周病です。

歯の根元はプラークや歯石がたまりやすく、それを起点としてむし歯が生じやすい部位です。むし歯が進行すると、エナメル質や象牙質が溶かされ、歯質が軟らかくなります。その結果、飲食物の色素が沈着し、歯の根元が黒くなるのです。これは一種の着色ですが、むし歯による黒ずみは、一般的な歯の着色よりも強く、限局的に現れるのが特徴です。

歯周病による歯の根元の黒ずみ発生は、2つのメカニズムに分けられます。
1つ目は、歯茎の退縮による歯根面の露出です。歯根面はエナメル質が存在せず、象牙質がむき出しとなっているため、歯の着色が起こりやすく、むし歯リスクも高くなります。このため、歯が黒ずみやすくなります。2つ目は、歯周病による歯茎の黒ずみです。これは、歯そのものが黒くなっているのではなく、血行不良などで歯茎が黒ずんでいるため、歯の根元が黒くなったように見える状態です。

治療をした歯の根元が黒いのですがその原因を教えてください
被せ物の治療で金属製の土台を使用した場合、ブラックマージンという状態が疑われます。ブラックマージンとは、被せ物の適合不良や歯茎の退縮によって金属製の土台が目立つようになり、歯の根元付近が黒く見える現象です。ブラックマージン自体は病気ではありませんが、審美的な問題を引き起こしたり、プラークや歯石がたまりやすくなったりするため、注意が必要です。特に、歯周病による歯茎の退縮が原因でブラックマージンが生じているケースでは、早急に歯周病の治療を受けた上で、ブラックマージンの原因となっている被せ物の変更などの治療を検討することが望ましいでしょう
上記以外の原因で歯の根元が黒くなることはありますか?
銀歯や金属製の土台を使った治療を受けた場合、メタルタトゥーによって歯の根元が黒くなることがあります。メタルタトゥーとは、金属材料から金属イオンが溶け出し、その一部が歯茎に沈着する現象です。メタルタトゥーは主に審美的な問題を引き起こしますが、同時に金属アレルギーのリスクが高まる可能性もあります。

歯の根元が黒くなっている部分を観察して、亀裂や欠けが認められた場合は注意が必要です。歯ぎしりや食いしばり、外傷などが原因で、歯の根元にダメージが加わっています。このまま放置していると、歯の根元が黒く見えるだけでなく、亀裂や欠けた部分に細菌が侵入し、むし歯を引き起こします。

また、歯の根元付近をコンポジットレジンで修復している場合も、同じように亀裂や欠けが生じて黒く見えることがあります。その他、歯の着色汚れが根元の黒ずみの原因となる場合もあるでしょう。

歯の根元が黒いときの対処方法

歯の根元が黒いときの対処方法 歯の根元が黒いときの対処法や予防策を解説します。

歯科医院で受ける治療について教えてください
歯の根元が黒いときの治療法は、原因によって異なります。

◎むし歯治療
むし歯が原因で歯の根元が黒くなっている場合は、むし歯の治療で対処します。むし歯菌に感染した歯質をドリルで取り除き、歯の色に近い素材で修復します。

◎歯周病治療
歯周病の治療で歯茎の血行が良くなり、歯の根元が黒く見える症状が改善されます。歯周病で退縮してしまった歯茎は、歯肉の移植や再生医療でなければ治療が難しくなります。

◎メタルフリー治療
ブラックマージンやメタルタトゥーが原因で歯の根元が黒く見える場合は、金属材料を使用していないメタルフリー素材の治療が推奨されます。

◎ホワイトニング
着色で歯の根元が黒くなっている場合は、漂白剤を使った歯科医院のホワイトニングがおすすめです。エナメル質の内部に沈着した色素を分解して除去することができます。ホワイトニングには、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングの2種類があります。患者さんのライフスタイルに合った施術法を選べるようになっています。

セルフケアで歯の根元の黒いものに対処ができますか?
黒く見える原因がプラークの付着によるものなら、セルフケアで対処できます。一方で、歯石やむし歯、ブラックマージンなどは、歯科医院による治療でなければ改善は難しいです。

セルフケアのみで無理に解決しようとせず、歯科医院の力をかりることも大切です。例えば、市販のスケーラーを使って黒くなった歯石を削り取ることも可能なのですが、素人が行うと、歯や歯茎を傷めてしまう可能性があります。

歯の根元が黒くならないための予防策はありますか?
毎日のセルフケアで、プラークや歯石の形成を予防することができ、むし歯や歯周病の予防にもつながります。しかし、正しいセルフケア方法は、自己流で身に付けるものが難しいため、歯科医院にて、定期的に歯磨き方法の指導を定期的に受けることも重要です。歯科医院の定期検診では、セルフケアでは取り除けない歯石をきれいに除去してくれるだけではなく、歯の根元が黒くなる、その他の原因も早期に発見しやすくなることから、3~4ヵ月に1回くらいの頻度で受けることをおすすめします。

編集部まとめ

今回は、歯の根元が黒く見える原因と対処法を解説しました。歯の根元に黒いものが付着している場合は、ほとんどのケースでプラークや歯石が原因となっています。汚れの付着がないのにも関わらず、歯の根元が黒く見える場合は、むし歯や歯周病、ブラックマージンなどの原因が考えられるため、まずは歯科医院で診察を受けることが推奨されます。歯の根元が黒く見える状態は、原因に応じた治療方法がありますので、ひとりで悩まず歯科医師の意見を求めるようにしましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

長崎大学歯学部卒業 愛知学院大学大学院歯学研究科修了 愛知学院大学歯学部歯周病学講座講師(2020年3月まで) 愛知学院大学歯学部歯周病学講座非常勤講師 ひしかわ歯科 院長

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