むし歯は放置しておくとどんどん進行し、ひどい状態となると抜歯なども必要となる可能性があります。
の記事では、むし歯の症状によってどのような治療が必要となるのかについてや、治療を受ける際のポイントなどについて解説します。
ひどいむし歯とは?
むし歯は、食べ残しなどに含まれる糖分を栄養として口腔内の菌が活発になり、菌が作り出す酸によって歯が溶かされていってしまうことで引き起こされるものです。
むし歯は風邪やインフルエンザのように、外部から体内に進入してきた菌やウイルスが原因となって生じるものではなく、お口のなかに元々存在している菌が原因です。そのため、免疫機能によって完治することは難しく、放置していると症状が悪化する一方になってしまいます。
た、むし歯は歯の表面にあるエナメル質という部分から溶かしはじめ、少しずつ内側へと進行していきますが、エナメル質は生きた細胞ではないため、一度溶けて穴が空いてしまうと元の状態には戻りません。
まずは、むし歯の症状がどのように進行していくのか、そして、ひどいむし歯といわれやすいような状態について、解説します。
むし歯はどのように進行する?
歯は内側から歯髄、象牙質、エナメル質という構造になっています。
し歯は、このうちエナメル質から歯を溶かしはじめ、時間をかけてゆっくりと内部へと感染を広げていきます。
エナメル質は人体のなかでも特に硬い組織であり、菌によって作られた酸が付着していても、すぐに溶かされてしまうということはありません。
かし、糖分をたくさん摂取して菌が酸性物質をたくさん作り出していたり、歯磨きなどのケアがおろそかになって長い間、酸に触れ続けていると、少しずつエナメル質も溶かされていきます。
ナメル質には痛覚などがないため、溶かされていっても痛みなどの変化を感じることはなく、自覚症状はほとんどありません。
た、むし歯は黒い点ができるというイメージがあると思いますが、エナメル質が溶かされている間は変色するというものでもないため、見た目でも気が付きにくいでしょう。
エナメル質が溶けて貫通してしまうと、今度は象牙質という、エナメル質よりもやわらかい層に感染が広がっていきます。
牙質は着色しやすい性質があるため、ここまでむし歯が進行すると、歯が黒くなったりと見た目での変化が出やすくなってきます。
た、象牙質が露出した状態になっていると冷たい水や甘いものを食べたときにしみるような痛みを感じることがあるため、この痛みでむし歯に気が付くケースもあります。
牙質はエナメル質のように硬くないため、ここまで感染が広がってくるとむし歯の進行速度が早くなっていきます。
象牙質の感染が進んでいくと、今度は歯髄と呼ばれる、歯の神経がある部分にむし歯が到達します。
こまで感染が広がると、神経が炎症を起こして歯髄炎と呼ばれる症状になるため、強く持続的な痛みが生じるようになります。
歯の神経を抜かなくてはならない状態
ひどいむし歯と呼ばれる状態の一つが、歯の神経を抜かなくてはならないような状態です。
し歯の感染が広がり、歯髄と呼ばれる歯の神経がある部分が感染してしまっている場合は、痛みを解消するために感染を引き起こしている神経を除去する必要があります。
かし、歯の神経がある歯髄には血管やリンパ管もあるため、神経を抜く治療をしてしまうと歯が血液から栄養を受け取れなくなり、象牙質の細胞が死んでしまいます。
牙質は適度なやわらかさで歯への衝撃を和らげる役割を果たしている部分で、象牙質が適切に機能しなくなると、歯が割れてしまいやすくなるなど脆い状態となります。
のため、歯の神経はできる限り温存しておいた方がよいのですが、神経まで完全に感染していると、神経を残したままの治療を行うことができないため、ひどいむし歯であるといえるでしょう。
歯を抜かなくてはならない状態
歯の神経を抜く治療が必要になる状態になってもまだ治療を受けないでいると、さらにひどい状態へと症状が進行します。
体的には、むし歯の炎症で作られた膿が歯茎に溜まって大きな腫れとなり、強い痛みを引き起こしたり、周囲の歯をグラつかせるなど、残っている周囲の歯に対しても悪影響を与える状態となります。
のような場合には、むし歯の神経を除去して温存するのではなく、周囲の歯への悪影響を改善するため、歯そのものを抜かなくてはならない可能性があります。
複数の歯にむし歯が広がっている状態
ひどいむし歯と表現される状態は、一つの歯にあるむし歯が重症となっているケースだけではありません。
数の歯が同時にむし歯となり、広い範囲で歯がボロボロになっている状態も、ひどいむし歯といえるでしょう。
述のとおり、むし歯はある程度長い時間をかけてゆっくりと進行していくため、歯のケアが適切に行えていないと、同時に複数のむし歯が進行してしまう可能性があります。
本もむし歯があると、歯医者で怒られるのがいやだといってなかなか診療に足が向かない方もいますが、むし歯は自然に治癒することもないため、できる限り早めに歯科医院を受診することが重要です。
痛みがなくなればむし歯はそれ以上悪化しない?
むし歯による痛みに耐え続けていると、ある日突然痛みがなくなることがあります。
れは、むし歯が治ったわけではなく、歯の神経が死んだために、痛みを感じなくなることで生じる変化です。
だし、歯の神経は死んでいても、歯茎などにある神経はその機能を維持しています。
の神経が死んでも、むし歯の感染が残っているため炎症は起こり続けていて、炎症によって作られた膿が歯茎に蓄積されて腫れると、とても強い痛みを感じる症状になる可能性もあります。
経や歯が完全に溶かされてしまえば、その歯についてはむし歯がそれ以上悪化しない(悪化する歯がない)といえますが、周囲の歯に感染が広がるなどしていくだけですので、痛みがなくなったと思っても、やはり歯科医院を早めに受診するようにしましょう。
歯医者さんで行われるむし歯治療
むし歯になったときに、歯医者さんで行われる治療は下記のようなものがあります。
むし歯を予防するための治療
まだむし歯になっていない、健康な歯の状態であれば、むし歯を予防するための治療が行われます。
体的には、歯の専門的なクリーニングによってむし歯の原因となる歯垢や歯石を除去したり、歯の再石灰化を促進するフッ素を塗布して、むし歯になりにくい歯を目指します。
た、特に歯が生え立ての子どもであれば、むし歯が発生しやすい、歯の表面にある溝を歯科用レジンで埋めてしまう、シーラント処置という治療が行われることもあります。
防のための治療は一回だけではなく、3ヶ月に一度など定期的に通い続けることで、歯の健康を維持し続けやすくなります。
軽度のむし歯に対する治療
歯のエナメル質が溶かされているような状態のむし歯であれば、感染部位を少しだけ削って菌を除去するという治療が行われます。
った場所はそのままにしておくとまたむし歯が発生してしまいやすくなるため、コンポジットレジンという特殊な光を当てると固まる素材で埋めていきます。
ンポジットレジンによる治療はその場ですぐに受けることができる内容のため、軽度のむし歯であれば、何度も治療に通う必要はないでしょう。
歯を大きく削る治療
むし歯が象牙質にまで達してしまうと、感染範囲が広くなるため、大きく歯を削る必要がでてきます。
た、歯を削る量が多くなると、コンポジットレジンのみで塞ぐことが難しくなるため、インレーやクラウンという人工物を利用した治療が行われます。
ンレーやクラウンは、削った部分の型取りをしてから、その情報をもとに歯科技工士が作成していく流れとなるため、治療に1週間などの時間がかかり、複数回の通院が必要になるケースが多いです。
歯の神経を取り除く治療
むし歯が歯の神経にまで到達するようなひどい状態であれば、根管治療といって歯の神経を除去し、歯の内部の細菌までキレイに取り除く治療が行われます。
管とは歯の神経や血管が通っている歯の根っこにある管のことで、根管治療で神経を除去することで、歯の痛みを解消します。
お、根管治療では内部に残った菌を完全に除去しないとむし歯が再発してしまう可能性があるため、物理的に菌を除去するだけではなく、薬を歯の内部に詰める方法での殺菌が行われます。
を詰めた状態で蓋をして、一週間後などある程度時間が経過してから、殺菌が適切に行えているかの確認をする形となりますが、完全に殺菌が完了するまで数回の通院が必要となる場合もあります。
分に殺菌が終わり、むし歯の再発の心配がないと判断されたら、クラウンの治療へと移行していきます。
歯を抜く治療
むし歯による悪影響がほかの歯にまで及ぶような状態の場合は、抜歯が行われます。
歯は麻酔をして歯を引き抜くという形で行われ、必要に応じて膿を排出させるなどの処置も実施されます。
歯をしてしまうとクラウンなどによる治療はできなくなるため、歯の欠損を補うための義歯治療が実施されます。
歯の欠損を補う義歯治療
歯がなくなってしまったときの治療法には、入れ歯やブリッジ、インプラントといった治療があります。
れ歯は人工歯とそれを支える義歯床、そして残っている歯にひっかけていればを安定させるためのクラスプとよばれる金属製のバネでできたもので、食事の際などに口内にはめて使う義歯です。
が数本つながった形状のブリッジと呼ばれるものを、歯がなくなった部分の両隣にある歯に被せて固定する方法で、しっかりと固定させる分、強く噛むことができるようになる治療です。
ンプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込み、そこに白い人工歯を被せることで、天然の歯と同じような構造を実現する義歯治療です。
れぞれの治療にメリットやデメリットがあるため、生活スタイルなどを考慮しながら、自分に合った治療法を選択する必要があります。
ひどいむし歯は歯科医院に行くべき理由
ひどいむし歯になってしまっていても、治療の痛みの心配や、治療を受けると歯を抜くしかなくなるといった考えから、歯科医院になかなかいけないという方もいるのではないでしょうか。
かし、下記のような理由から、むし歯の状態がひどい場合でも、なるべく早めに歯科医院の受診をおすすめします。
まだ歯を残す治療ができる可能性がある
神経までむし歯が到達して強い痛みが生じているようなケースでも、早めに歯科医院での治療をうければ、根管治療などによって歯を残せる可能性があります。
科医院によっては、歯の神経もなるべく温存したような治療を提供しているところもあります。
放置しておくと腫れや痛みを繰り返す場合がある
むし歯を放置していると痛みが一時的になくなることがありますが、これは菌がいなくなって、むし歯そのものが完治しているわけではありません。
のため、その後も膿が蓄積することで強く腫れて痛むといった状態が繰り返されるようになってしまう可能性があります。
科医院で適切な治療を受ければ、こうした繰り返される症状を改善することが可能です。
全身症状につながってしまう可能性がある
むし歯の細菌が血管に入り込んでしまうと、身体のほかの部分に感染が広がり、重大なトラブルへとつながる可能性があります。
合によっては細菌性心内膜炎や敗血症などの全身症状につながることもありますので、早めに歯科医院で治療を受けておくことが大切です。
歯科医院に通いにくい人へ知っておいてほしいこと
むし歯がひどい状態になっても歯科医院に足が向かないという方は、治療に対するさまざまな不安があるのではないでしょうか。
科治療は昔と比べて大きく進歩しています。歯科診療についてぜひ知っておいてほしいことを、ご紹介します。
麻酔の痛みが昔よりも軽減されている
歯医者さんの治療は痛いというイメージが強い方は多いのではないでしょうか。
科診療ではこうした治療への痛みを軽減するためにさまざまな取り組みが行われています。
に、治療において痛みを感じやすい麻酔では、注射針を細くすることや、表面麻酔の使用、麻酔薬の注入速度や温度の調整といったさまざまな取り組みによって、痛みをかなり抑えた治療が可能となっています。
歯をなるべく削らない治療が増えている
歯科医院で治療を受けたら、歯を大きく削られてしまったという苦い経験をお持ちの方もいると思います。
は一度削ってしまうともとに戻らないため、多くの歯科医院がなるべく削る量を少なくするための治療に取り組んでいます。
蝕検知液や拡大鏡ルーペなどを使用して削る量を少なく抑えている歯科医院や、レーザーを使用してなるべく削らずに治療を行っている歯科医院などさまざまですので、削られ過ぎて歯が余計に悪くなってしまうという心配がある方は、こうした取り組みを積極的に行っている歯科医院を選ぶとよいでしょう。
保険診療の範囲が広がっている
歯科医院での治療は、以前は銀歯による治療が主流であり、金属アレルギーなどによって治療が受けにくいという方もいたのではないでしょうか。
在は保険診療の範囲も広がり、さまざまな治療の選択肢ができているので、高額な自費診療などを選択しなくても、自分にあった治療が選びやすくなっています。
まとめ
むし歯は、なるべく早めに治療を行うことが大切です。
どい状態になってから治療をすると、歯を大きく削ったり神経を取り除いたりといった治療が必要になるため、治療が大変になって、身体への負担も大きくなります。
し歯に気が付く、またはむし歯かもしれないと思ったら、とにかく早めに歯科医院での治療を受けることが、できる限り負担の少ない、健康な歯を維持できる治療を受けるためのポイントといえます。
た、むし歯は放置すると膿が筋肉の隙間や皮膚の隙間にどんどん溜まり、気道が圧迫されたり、全身の炎症につながり、最終的には死に至ることもある病気です。
やお口の健康だけではなく、全身の健康のためにも、なるべく早く診てもらうことが重要です。
と比べて歯科診療は痛みも抑えられ、保険診療で白い歯を実現することもできるようになっていますので、まずは一度、歯科医院での診療をうけてみてはいかがでしょうか。
参考文献