むし歯は進行状態によって自覚症状が出にくいことがあり、知らず知らずのうちに進行してしまっていることがあります。
気付きにくいむし歯や、痛みがあるむし歯と痛まないむし歯の違い、初期のむし歯を見つけるための接府チェック法などを詳しく紹介します。
手遅れになる前にこの記事を読んで、早期発見と適切なケアにつなげましょう。
むし歯の進行と自覚症状
- むし歯になっても痛みが出ないことはありますか?
- むし歯の初期の段階では、痛みが出ないことはよくあります。
歯の表面にあるエナメル質には神経が通っていないため、エナメル質の層までしか進行していないむし歯は、自覚症状がほとんどありません。
しかし、痛みが出ていないからといってそのまま放置していると、段々とむし歯は進行していくため、その内に象牙質の層にむし歯が届き、知覚過敏などの症状として痛みが現れる可能性があります。また、初期の状態ではなくても、痛みが出ないことがあります。
それは、過去に根管治療を行った歯がむし歯になっているケースです。
根管治療では、歯の神経を除去するため、もし再度むし歯になっても痛みを感じにくくなります。
痛みがないため再発に気が付かず、いつのまにか重度のむし歯に進行してしまうという場合もあります。
- むし歯はどれくらい進行すると痛みが出ますか?
- むし歯によって痛みを感じはじめるのは、むし歯が象牙質の層まで進行した場合です。
歯の頭(歯冠)は表面側から、エナメル層、象牙質層、歯髄という3層構造になっていて、むし歯はエナメル層からどんどん内側の層へと進んでいきます。歯の痛みを感じる歯の神経は、歯髄にあるため、むし歯が歯髄に近づくほど痛みを感じやすくなります。
むし歯がエナメル層でとどまっている場合は、痛みを感じませんが、象牙質層まで進行すると、歯の神経に近づくため、痛みを感じる可能性が出てきます。ただし、象牙質層のむし歯は、直接神経を刺激するわけではないため、冷たいものをお口に含んだときなどに、知覚過敏のような痛みが出るという状態になることが多いといえます。さらにむし歯が進行して歯髄に達すると、今度は神経が酸による刺激を直接受けて炎症を引き起こすため、日常生活に支障をきたすほどの激しい痛みとなることがあります。
- むし歯は自然治癒しますか?
- 初期むし歯は自然治癒する可能性がありますが、歯に穴が空いてしまうようなむし歯は自然治癒しません。
初期むし歯とは、歯のエナメル層の表面までのむし歯で、歯の表面が変色するという程度の状態になるものです。歯はエナメル層が分解される脱灰と、エナメル層が修復される再石灰化というプロセスを繰り返していますが、この再石灰化が十分に行われていればむし歯は進行しません。そのため、脱灰が起こっている初期むし歯の状態であっても、適切なケアで再石灰化を促進すれば、むし歯の進行を抑えることができます。
しかし、脱灰に対して再石灰化のスピードが遅くなると、エナメル層が完全に修復できないまま脱灰が進み、むし歯が進行することとなります。
そして、歯に穴が空いてしまう状態になると、再石灰化で修復が行えないため、自然治癒はできないということになります。
- むし歯を放置すると痛みがなくなるのは本当ですか?
- むし歯を放置し続けると、痛みを感じにくくなることはあります。
むし歯が進行すると、歯髄という歯の神経に感染し強い痛みと炎症が起こりますが、それを放置していると、歯の神経が壊死し、痛みを感じなくなるためです。
ただし、むし歯の感染が解消されているわけではないため、歯が溶かされていく状態は継続します。
また、この段階になると、歯の大部分がむし歯でダメージを受けて失ってしまっているので、歯を再建することが難しくなってしまい、抜歯が必要となることがあります。
むし歯の初期症状
- 自分では気付かないむし歯を見つけることはできますか?
- 自覚症状のない場合でも、セルフチェックによってむし歯を見つけることができる可能性はあります。
自覚症状のないむし歯は、歯科領域ではCOやC1という段階のむし歯であることがほとんどです。COやC1というのは、エナメル層や、象牙質などの表面に近い層で起こっている浅いむし歯で、これらは神経に直接触れておらず、痛みなどの自覚症状が現れにくいといえます。セルフチェックの方法は、明るいところで、手鏡などを使ってさまざまな角度から歯を一本一本注意深く観察する方法で行います。
COの初期むし歯は、歯の表面がツヤがなく白っぽい、または黄色や茶色っぽく変色しているといった特徴があります。
C1のむし歯は、少し歯がへこんだり、かけたり、茶褐色または黒っぽく変色したりするという特徴があります。いずれも、歯と歯が隣り合っている面や、奥歯(臼歯)の表面、過去に治療して詰め物をしているところの周辺などに現れやすいため、注意して確認しましょう。
- どのようなときに歯科医院を受診するべきですか?
- 自覚症状があったときにはすぐに受診するのはもちろんのこと、セルフチェックをして異変を感じたときもできるだけ早く歯科医院を受診しましょう。
特に、以下のような症状がある場合は、むし歯の可能性があるので早めに歯科医院を受診しましょう。- 冷たいものや甘いものがしみる
- 歯に小さな穴や欠けがある
- 歯の表面が白く濁っている、または変色している
- 歯茎が腫れている、または出血する
- 口臭が気になる
- 以前の詰め物や被せ物が取れた、またはぐらついている
また、自覚症状がなくても、歯科医院では3ヶ月に一回程度の頻度で定期検診を受診するのが理想的です。歯科医院の定期検診では、歯と歯の間や、被せ物の中など、肉眼では確認できない箇所のむし歯をレントゲンなどを使って発見できます。
また、むし歯以外にも歯周病のチェックや、むし歯の原因となる歯垢や歯石の除去が可能な専門的な歯科クリーニングなども同時に行えるため、むし歯や歯周病といったお口の中のトラブルの予防に役立ちます。
- 歯科医院ではどのように初期のむし歯を見つけますか?
- 歯科医院では、直接目で見る視診に加え、さまざまな検査器具や技術を使って初期のむし歯を発見します。
歯科医師や歯科衛生士が、歯の表面の色や形、硬さなどを丁寧に確認し、必要に応じて、レントゲン撮影を行うことで、肉眼では確認できない歯と歯の間や、歯の内部のむし歯の状態を把握します。
歯科医院によっては、むし歯の活動性を調べる検査や、レーザーを用いたむし歯診断装置を使用することもあります。
むし歯のセルフチェックやケア方法
- むし歯のセルフチェック方法を教えてください
- 自宅でできるむし歯のセルフチェックのポイントは以下のとおりです。
- 鏡を使って、歯の表面全体を明るい場所でよく観察する。
- 歯と歯の間、歯と歯茎の境目を意識して見る。
- 歯ブラシの毛先が引っかかるような小さな穴や、ざらつきがないか確認する。
- 歯の表面に、白く変色した部分や、茶色や黒く変色した部分がないか確認する。
- 舌で歯の表面を触ってみて、気になる凹凸がないか確認する。
ただし、セルフチェックだけで完全にむし歯を発見することは難しいため、定期的な歯科検診を受けましょう。
- むし歯のケアや予防として行うべきことはありますか?
- むし歯のケアと予防には、毎日の適切な歯磨きが重要です。
フッ素入りの歯磨き粉を使用しての歯磨きを行うことと、歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも併用して、歯と歯の間や歯周ポケットの汚れを丁寧に除去することがポイントです。食生活にも注意しましょう。むし歯は糖分を細菌が分解した際に作られる酸が原因であるため、甘いものや炭水化物の摂取回数、時間を減らすことが大切です。
唾液にはむし歯菌の活動を抑える働きがあるため、唾液の分泌を促進するためによく噛んで食事をすることも有効です。そして、歯科医院での定期的な歯科検診と、専門的なクリーニングを受けることで、むし歯を効果的に予防できます。
- 歯科検診とは何ですか?
- 歯科検診とは、歯科医師や歯科衛生士が、歯や歯茎の状態、噛み合わせなどについて問題ないか総合的にチェックするものです。むし歯や歯周病の早期発見と早期治療が主な目的ですが、同時に予防のためのアドバイスや、正しい歯磨き方法の指導なども行われます。
定期検診の際に、歯科衛生士による専門的な歯科クリーニングも行われることが多く、歯石で隠れて見えなかったむし歯を発見することができたり、むし歯や歯周病の原因となる歯垢を除去することができるため、お口の中のトラブルを改善して、むし歯や歯周病の進行を食い止めることができます。
自分の歯の健康を守るために、定期的な歯科検診はとても重要です。
編集部まとめ
むし歯は、初期には痛みがないことが多く、進行すると歯に穴が空いたり、冷たいものをお口に含むとしみるような痛みが出るようになります。
自分で気付かないむし歯を発見するためには、毎日の丁寧な歯磨きはもちろんですが、それに加えて定期的な歯科検診が不可欠です。
大切な歯を守るために、少しでも気になることがあれば、歯科医院に相談してみましょう。
参考文献