口腔内の健康が全身の健康状態に大きく関わり、健やかなお口の状態の維持はとても重要です。
歯や歯茎のトラブルが起きると、どのようなことが考えられるのでしょうか。
トラブルの一つの膿の原因と応急処置、治療法を詳しく解説していきます。
歯茎から膿が出る原因
- 歯茎から膿が出る原因を教えてください。
- 身体部位からの膿の出現に、とても深く関わっているのが身体の免疫機能です。身体には免疫システムが備わっており、その一部を担うのが白血球です。
白血球は細菌やウイルスと戦う役目を持ち、感染部位に集まって防御反応を示します。白血球が細菌と戦った結果、死骸となった白血球や壊死した組織、細菌の残骸、浸出液などが混ざり合い、膿が形成されます。
歯茎の場合は、口腔内が不潔な状態に長期に晒され、炎症を起こし感染した反応が膿の流出です。歯茎の炎症を起こす主たる原因は、歯垢と歯石の蓄積です。口腔には何百種類もの細菌がいますが、歯磨きが不十分だと、細菌が歯垢(プラーク)を作り出します。歯垢のなかにはむし歯や歯周病の原因となる細菌が大量におり、いわば歯垢は細菌の集合体です。歯垢が除去されず放置されると、歯石となり、歯磨きでは落ちなくなります。膿が現れる原因となる主な疾患は以下です。- 歯周病(歯肉炎・歯周炎)
- 歯根膜炎
- 歯髄炎
- 根尖性歯周炎
- 歯根膿疱
- 歯根肉芽腫
歯肉炎は、歯と歯茎の間(歯周ポケット)に溜まった歯垢や歯石によって歯茎が炎症を起こしている状態です。この段階では通常、膿が出ることは少なく、適切な治療によって回復可能です。
しかし、進行して歯周炎になると、歯周ポケットが深くなり、細菌感染によって膿が出ることがあります。
また、根尖性歯周炎が進行すると、歯根の先端に膿が溜まり、「歯根膿疱」や「歯根肉芽腫」といった病態へと移行することがあります。
- 歯茎から膿が出る場合に口腔がんの疑いはありますか?
- 身体の正常な細胞の遺伝子に傷がつき、異常な細胞が発生するとがんになります。口腔粘膜は扁平上皮かはら成り、口腔がんは扁平上皮がんに分類され、以下の種類があります。
- 舌がん
- 下歯肉がん
- 上歯肉がん
- 頬粘膜がん
- 口腔底がん
- 硬口蓋がん
- 口唇がん
上記の口腔がんの初期症状は、口腔粘膜や歯茎の紅斑や白斑、しこりや腫れです。初期の頃は痛みや出血を伴わないことが多く、自覚症状に乏しい特徴があります。
病期が進行すると、痛みや出血の不快な症状が現れます。
口内炎と症状が似ており、口内炎と勘違いして放置してしまうこともあるので、症状が2週間以上に及ぶ場合は病院受診してみるとよいでしょう。
口腔がんの原因は、主に以下が考えられます。- 喫煙
- 飲酒
- 慢性的な刺激
- 口腔内が不潔な状態
喫煙と飲酒は口腔がんの罹患リスクを高める要因です。むし歯や、義歯と被せ物の不具合などで常に口腔内粘膜が刺激を受けると健常な細胞が破壊されがん化するリスクが高まります。
また、歯磨きを怠ったり磨き残したりして不衛生な状態が続くのも、がんの危険な要因です。
歯茎から膿が出る原因には歯周病などから感染を起こしている場合と、口腔がんを発症し病期が進行している可能性が考えられます。進行するとがん細胞の浸潤により粘膜が破壊されたり、がん細胞が原発巣を超えて骨や神経組織、リンパ節へ広がったりします。
口腔がんが進行すると、潰瘍(ただれ)が生じ、感染を伴う場合には膿が出ることがあります。
ただし、がんの組織自体から分泌される滲出液は、細菌感染による膿とは異なります。膿が出る原因が歯周病や根尖性歯周炎なのか、がんによるものなのかを区別するためには、病理検査が必要となります。
歯茎から膿が出た場合の応急処置や注意点
- 歯茎から膿が出た場合の応急処置方法を教えてください。
- 歯茎から膿が出た場合は、易感染またはすでに感染している状態です。
膿を放置すると口腔内が不潔になり新たな感染源を生む可能性があるので、低刺激のうがい薬または生理食塩水で口腔内を洗浄しましょう。
ほかの症状がみられなかったり、膿が一時的に出なくなったりしても、早期の歯科受診が大切です。
- 自分で膿を出しても大丈夫ですか?
- 膿が出ていると出し切ったほうがよいのではないかと迷われるかもしれませんが、ご自身での排膿は避けましょう。
先に原因を説明したように、膿が出るのは炎症または感染が起きているサインです。自己判断で口腔粘膜や歯茎を押したりつねったりして排膿をすると、炎症が拡大し症状が悪化する可能性があります。
また、手にも細菌がいるので、手で触るなどして不衛生な状況を作ると感染を悪化させ治りを遅らせるかもしれません。
- 歯茎から膿が出た場合の注意点を教えてください。
- 膿の出ている部位をなるべく刺激しないことが大切です。手などで触らず、できる限り噛み合わず負荷をかけないようにして早期に歯科受診しましょう。
また、アルコール摂取や運動は毛細血管を拡張し血行をよくします。血流の増加により、歯髄神経を圧迫するため痛みが出現するかもしれません。飲酒や運動など血行がよくなる行動は避けましょう。
- 歯茎から膿が出ているときの歯磨きの注意点を教えてください
- 歯茎から膿が出ている状態であれば、歯や歯茎に歯ブラシが接触するだけでも痛みを感じるかもしれません。飲食できない場合や痛みを伴う場合でも、細菌による炎症の悪化を予防するため口腔ケアは必要です。
歯ブラシは膿の出ている部位や口腔粘膜を傷つけないよう、毛先のやわらかいものを選びましょう。
膿の出ている歯茎は直接磨くことを避けて、歯と膿のない周りの歯茎を優しく丁寧に磨きます。
強い痛みを伴い歯磨きができない場合は、ぬるま湯に浸したスポンジブラシやガーゼで膿を拭い取りましょう。
歯茎から膿が出た場合の治療方法
- 歯茎から膿が出ても自然に治ることはありますか?
- 歯茎から膿が出る状態は、進行した歯周病や感染が関与している可能性が高く、放置すると悪化するリスクがあります。
軽度の炎症であれば適切なプラークコントロールで改善することもありますが、膿が出るほど進行した状態では自然治癒は難しく、早期の歯科受診が必要です。
- 治療せずに放置していたらどうなりますか?
- 歯周病が進行すると、歯を支える歯槽骨が溶け、最終的に歯が抜ける可能性があります。
さらに、細菌が血流に乗って全身へと広がると、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病の悪化、誤嚥性肺炎などのリスクを高めることが知られています。
そのため、早期に適切な治療を受けることが重要です。
- 診断のためにどのような検査を行いますか?
- レントゲン撮影をして歯槽骨の状態を検査します。そして歯周プローブ(メモリの付いた器具)で、歯茎の出血と歯周ポケットの深さ、プラークの付着を調べます。
また、ピンセットで歯の動揺度(ぐらつき)を検査し、患者さんの意思と総合して治療方針が考慮されるでしょう。
- 歯茎から膿が出た場合の治療方法を教えてください。
- ご自身で日々行う正しい方法での歯磨き(プラークコントロール)と、歯科医院で行う歯垢と歯石の除去が基本の治療です。
しかし、膿の流出がある場合は基本治療のみでのケアが困難な場合があるでしょう。
基本治療での治癒が見込めない場合、以下のような治療法があります。- 抗菌薬投与
- 排膿
- 歯根端切除術や膿疱摘出の外科治療
- 抜歯
殺菌するために抗菌薬の内服をしますが、症状が重い場合は入院して抗菌薬を点滴投与するでしょう。
膿瘍の診断の場合は、切開して膿を排出させます。根尖性歯周炎や歯根膿疱、歯根肉芽腫など根幹治療では治療が難しく歯髄に膿の原因がある場合、外科的手術が適応になるでしょう。手術には歯根端切除術や膿疱摘出術などがあります。
しかし、手術後も病状が進行する場合は残念ながら抜歯になることもあるでしょう。
編集部まとめ
歯茎から膿が出る原因には歯周病や根尖性歯周炎、歯根膿疱、歯根肉芽腫など病状が進行している場合があります。
膿の原因として、口腔がんの可能性も否定できないでしょう。
歯茎から膿が出たときは、生理食塩水などでうがいをしたり、刺激にならないような歯磨き方法を工夫して口腔内を清潔に保つことをおすすめします。
また、症状の悪化を防ぐため、血流増加につながるアルコール摂取や運動は避けましょう。
歯茎から膿が出たら早期に受診し検査を受け、適切な治療を受けましょう。
参考文献