笑ったときに見える白い歯は見た目の美しさに影響するため、銀歯からセラミックに交換する方が少なくありません。
セラミックにすることで白い歯を手に入れられる一方で、銀歯よりも価格が高くなるのではと不安に思う方もいるのではないでしょうか。
銀歯からセラミックに交換するには、どのようなリスクがあるのかも気になるところでしょう。
銀歯とセラミックスの治療にはそれぞれメリット・デメリットが存在します。選択するためには歯の状態や口腔内全体の治療計画も大変重要になりますので、参考にしてください。
銀歯をセラミックに交換する費用
銀歯からセラミックへの歯の交換は1本当たりの金額は数千円から90,000円(税込)程度と差があります。この価格の差は交換内容や使われる材質、保険適用の有無です。
被せものが大きく、広範囲にわたっている場合は費用が高くなります。また、被せている歯の下の土台部分を白い材料を使ったものに交換する場合も、金属で土台を作るより高価になります。
逆に歯の一部だけ、もしくは表面だけ銀歯からセラミックにするシンプルな交換のときは安価でできるでしょう。
そして使われる材質にも価格差があります。高価になるのは、材料にダイアモンドに近い硬さをもつジルコニア、全てセラミックでできたオールセラミックといわれる人工歯を利用したときです。
安価でできるものでは、主な材料が金属でできて表面だけセラミックの人工歯や一部プラスチックを材料に使ったハイブリッドセラミックなどです。
さらに銀歯からセラミックに交換する費用は、保険を利用するかどうかで変わってきます。
セラミックは基本的に保険適用外となるため、価格が高くなります。しかし、ハイブリッドセラミックの場合保険適用される可能性があります。
保険適用となるハイブリッドセラミックは、CADを用いてコンピューターで設計し自動で作られた人工歯です。厚生労働省で定められた次の基準を満たしている歯科医院であることが条件にあるので、事前に確認しましょう。
- 施設基準を満たしたことを厚生労働省に認可された歯科医院
- 歯科治療の知識と3年以上の経験のある歯科医師が1名以上いる
- 歯科用CAD/CAMがある施設は歯科技工士を配置してある
- 歯科用CAD/CAMがない施設はその装置がある歯科技工所との連携ができている
ほかにも治療費を抑えるなら、医療費控除を利用するのもひとつの方法です。医療費控除の申請は審美性を高めるためでなく、歯の治療を目的にセラミックを利用し高額となったときに適用されます。
このように高価だと思われがちなセラミックへの交換も安価な素材や保険の適用となる素材を選ぶことで価格を抑えることができます。医療費控除を利用することで費用を抑えることもできるので、事前に歯科医師にご相談ください。
銀歯をセラミックに交換するメリット
銀歯をセラミックに交換するメリットはどのようなことがあるのでしょうか。詳しく解説します。
審美性が向上する
銀歯は白い歯が並んだ間にあると目立つため、見た目の印象を気にする方が少なくありません。治療箇所が歯の裏側で、歯の表面は白い歯でもお口を開けたり笑ったりしたときに、銀歯を使った歯は治療の痕が目立ってしまいます。
こうした欠点をなくすためにも、セラミックでできた歯に交換すれば治療の痕が目立ちにくい美しい歯をみせられるでしょう。
セラミックの人工歯は、陶器でできているため白く透明感のある自然な歯をつくることができます。
さまざまな色に対応できるメリットもあるので、もとにある自分の歯と同じような色を保てるのもうれしい特徴といえるでしょう。
金属アレルギーの心配が少ない
銀歯からセラミックの歯に交換する理由のひとつに、金属アレルギーがあります。皮膚粘膜の疾患からほかの病院で受診して金属アレルギーがあることが判明し、交換する方もいます。
金属アレルギーは、銀歯を入れた当初は発症しなくても、時間が経ってからアレルギー症状が出ることも少なくありません。
そのため、金属アレルギーの心配がある方は銀歯をセラミックに交換することがおすすめです。
お口の中の粘膜疾患・かぶれ・目のかゆみ・湿疹などのアレルギーの症状を改善できるメリットがあり、金属アレルギーの心配を軽減してくれます。
むし歯になりにくい
セラミックの歯は、銀歯に比べてむし歯や歯周病になりにくいというメリットがあります。
元の歯との接着剤の融合性が高く、隙間ができにくくなるためです。
歯と銀歯のかぶせ物の間に隙間ができると歯石が溜まりやすくなるため、歯周病やむし歯の原因となります。
特に長い間使用している銀歯では、むし歯にかかるリスクが高まるため、長く歯を利用していくためにもセラミックに交換するのがおすすめです。
ほかにも、セラミックの歯はにおいを吸着しにくいため、口臭が少なくなるともいわれています。
歯茎の黒ずみを予防できる
銀歯は、長年利用していくと加齢とともに下がった歯茎から黒ずみが目立つようになります。
歯茎にできる黒ずみはゆっくりと溶けだした金属であり、メタルタトゥーと呼ばれる症状です。
銀歯をセラミックに交換することで、このメタルタトゥーになるリスクが少なく、歯茎の黒ずみを予防できるのです。
銀歯をセラミックに交換するデメリット
銀歯をセラミックに交換するデメリットはどのようなことがあるのでしょうか。詳しく解説します。
費用がかかる
銀歯からセラミックに交換するデメリットのひとつは、費用が高くなることです。
特にオールセラミックの場合、高額になる傾向があります。しかし、審美性が保たれます。
また、場合によっては保険適用ができたり高額医療の申請ができたりするケースもあります。
事前に歯科医師へ価格の相談もしながら、治療方法や素材を決めていきましょう。
歯を削る可能性
セラミックは割れやすいため、素材に厚みを持たせて作らないといけません。
必ずしも健康な歯を削る必要があるわけではないのですが、歯の状態によってある程度の厚みがないと治療できないケースもあります。
セラミックを利用するときは、健康な歯を削る可能性があることを念頭に入れておきましょう。
割れる可能性
セラミックは衝撃に弱く、歯ぎしりや食いしばりが強いと割れてしまう可能性があります。
また硬い食べ物を噛んだときにも傷つきやすく、破損してしまうこともあるので、気をつけなければいけません。
強い衝撃を受けた場合に割れるケースもあります。
これらのリスクを防ぐためにも、事前のカウンセリングをしっかり行い、定期的な歯科医院の受診と適切なメンテナンスをしていくことが大切です。
銀歯をセラミックに交換するときの注意点
銀歯をセラミックに交換するときの注意点について、どのようなことがあるのでしょうか。詳しく解説します。
しみる可能性
歯がしみるケースとしては、熱いものや冷たいものを飲んだり食べたりしてしみる・噛んだらしみる・治療後しばらくしてから何もなくてもしみる、というようにいくつかあげられます。
熱いものや冷たいものでしみるときは、神経が知覚過敏になっている可能性があります。
知覚過敏で強い痛みがある場合は、神経の治療を行わないといけない場合があるでしょう。
噛んでしみるときは、噛み合わせに問題がある場合があります。その場合は、再度歯の噛み合わせを治療し、症状の改善を行っていきます。
治療後しばらくしてからしみる場合は、歯周病やむし歯になっている可能性があるでしょう。こちらも歯科医師と相談しながら治療が必要です。
銀歯からセラミックへ交換した後、歯がしみたときは早めに歯科医院で受診するのが大切です。
神経の治療が必要になる可能性
銀歯からセラミックへ交換するときの注意点は、神経の治療が必要になる可能性もあることです。
神経の治療が必要になるのは、被せていた銀歯の下の歯がむし歯になっていて、その治療で神経をとらなくてはいけないケースになります。
セラミックを厚くできた方が強度が増すため、歯を大きく削ることがあります。大きく歯を削ると神経に触れてしまうことがあり、こうした場合も痛みが出ないように神経を抜く必要があるでしょう。
このように、セラミックに交換する際は神経の治療が必要となるケースがあるため、不安があれば十分なカウンセリングを行ってから治療にすすみましょう。
歯ぎしり・食いしばりがある場合
セラミックの歯は、歯ぎしりや食いしばりが強いと欠けてしまう可能性が高くなります。
このリスクを避けるため、歯科医院では事前に歯ぎしりや食いしばりの有無を調べます。
歯科医院での診察では、咬筋という噛むときに用いる筋肉の状態をみていきます。この筋肉が強いかみしめを行っていると膨れているため、診察するとわかるのでご相談ください。
ほかにも顎関節症などの症状から、歯ぎしりや食いしばりがあるか判断します。おかしいなと思う症状があるときは、歯科医師に相談してみましょう。
定期的なメンテナンスの必要性
歯は一度被せたら治療が終わりではなく、定期的なメンテナンスが必要です。
特にセラミックの歯は気付かないうちにかけたり割れたりしやすいため、気をつけなければなりません。
欠けてしまった部分からばい菌が浸蝕して、炎症を起こしたりむし歯になったりする可能性もあります。
また歯肉炎や歯周病の予防、そして歯の白さを保つためにも、定期的なメンテナンスが必要です。
治療が終わったからと安心せず、歯科医師の指示のもと診療を受けましょう。また、お口の中を清潔に保ち、セルフケアを欠かさないことも大切です。
銀歯をセラミックに交換する治療の流れ
銀歯からセラミックへの交換は3回の治療で完了します。どのような流れですすんでいくのか、詳しく解説します。
1回目の治療
1回目の治療では、まずカウンセリングで歯科医師と相談しながら、歯・顎・口腔内の状態とアレルギーの有無を調べます。
特に金属アレルギーがある場合は、なかに使われる土台(歯を被せるために支える部分)もセラミックを利用するのが理想的です。
カウンセリング後は、被せてある部分にむし歯の有無や神経の状態などの検査を行います。神経に触れて痛みが出るときは、麻酔を利用して治療することになるでしょう。
そして歯の状態を見ながら仮歯用の型を取り、銀歯の除去をします。銀歯が大きく深い場合や痛む場合は、神経の治療も行うでしょう。
神経の治療には、周りの血管や歯を削ることで痛みがでるため、麻酔を利用します。こうした治療の後に仮歯を作成します。この一連の流れは、1日から数日かかることを念頭に入れてください。
2回目の治療
2回目の治療は、被せた仮歯と歯肉の状態の確認です。歯は噛み合わせが重要なので、人工歯を入れる前にしっかりとチェックしなければなりません。
そして歯肉に痛みや腫れなどがなければ、型を取り歯の土台を調節していきます。全体の歯の状態をみるため、上下の歯すべての型を取ります。
一部の銀歯からセラミックに交換するのであれば全体の型は必要ありませんが、広範囲であったり数か所あったりする場合には必要です。
取った型に石膏を流し、模型を作り、その模型をもとに人工歯を作ります。歯型を作る作業には1週間程度かかるため、次の治療まで少し時間がかかります。
3回目の治療
3回目の治療では、できあがった人工歯を入れて噛み合わせを調整します。前歯は一度はめてしまうと修正が難しいため、完成前に試し入れを行うこともあるでしょう。
最終的に接着剤でつける前に、何度か入れたり外したりしながら噛み合わせをみていきます。
噛み合わせは人工歯を削りながら調整するため、一般的に麻酔は利用しません。ただし、患者さんが痛みを感じる場合は麻酔を使うこともあるため、痛みが不安な方は事前に相談してみましょう。
歯の調整は、歯と歯の間に色のつく紙を挟み、左右に噛み合わせながらチェックしていきます。
こうした微調整を行いながら、問題がなければ歯をセットします。治療が終われば、銀歯からセラミックへの交換は完了です。
セラミックの寿命はどのくらい?
一般的に銀歯の寿命が2~5年であるのに対して、セラミックであれば10~15年程度もつといわれています。
セラミックは耐久性があるといわれていますが、メンテナンスをして長持ちさせた場合でも、大体20年で作り変えが必要になってくる材質です。
またオールセラミックはすべてがセラミックで作られていますが、ジルコニアやハイブリッドセラミックなど一部にガラスや金属、プラスチックなどほかの素材を混ぜて作ったものもあります。
セラミックといっても人工歯に使われる材質の配合によって強度や耐久年数が変わるため、寿命には差が出てくるでしょう。
例えばジルコニアを利用したセラミックは、オールセラミックよりも硬くダイアモンドのような性質をもっているため、輝きも増し耐久性もあります。
なおセラミックの寿命を縮めてしまう原因は、歯ぎしりや食いしばり、そして硬いものを噛んでしまうことなどです。
定期的なメンテナンスを怠り、むし歯や歯周病に感染してしまうなど、歯のケアを怠っていたことによるケースが少なくない傾向です。
また、強い衝撃でぶつけて欠けてしまうこともあるでしょう。
セラミックの歯に交換して長持ちさせるためにも、しっかりと歯磨きなどのセルフケアを行い、定期的に歯科医院で受診しましょう。
まとめ
健康で美しい歯を保つために、銀歯から白く輝きのあるセラミックの歯に交換した場合の費用やメリットとデメリット、治療の流れなどを解説してきました。
セラミックの寿命は、10年以上と銀歯よりも長くなっていますが、セルフケアを怠ると寿命を縮めてしまう原因となります。
長く美しい歯を保つためにも定期的なメンテナンスを欠かさず、歯科医師と相談しながら歯科治療を行っていきましょう。
参考文献