親知らずが生えてきたとき、「抜くべきか?」と悩む方は少なくありません。親知らずは生え方によって抜歯が必要な場合があり、一般歯科と口腔外科で対応が異なることもあります。
本記事では親知らずは一般歯科で抜けないのかについて以下の点を中心にご紹介します。
- 親知らずとは
- 親知らずを抜歯する理由
- 親知らずは一般歯科でも抜けないのか
親知らずは一般歯科で抜けないのかについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
親知らずについて
- 親知らずとはどのような歯ですか?
- 親知らずは”智歯(ちし)”や”第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)”とも呼ばれ、上下左右それぞれの一番奥に生える永久歯のことを指します。前歯から数えて8番目に位置し、10代後半〜20代前半にかけて生えてくることが多いといわれています。
しかし、個人差があり、まったく生えてこない人もいます。名前の由来は”親の知らぬ間に生える”という説に基づいています。
人類の進化とともに顎が小さくなり、親知らずは退化傾向にあります。そのため、 すべて生え揃わず歯茎に埋まったままのケースもあります。また、親知らずの生え方によっては隣接する歯に悪影響を及ぼし、むし歯や歯茎の炎症を引き起こすリスクが高まります。
このため、親知らずは基本的に不要な歯とみなされることが多いといわれています。
- 親知らずを抜歯する理由を教えてください
- 親知らずは、その生え方や位置によってはむし歯や歯周病を引き起こすリスクが高いため、抜歯が推奨される場合があります。特に斜めや横向きに生えている場合、歯磨きが難しく汚れが溜まりやすいため、細菌が増殖して炎症や腫れを引き起こすことがあります。
また、隣の健康な歯に悪影響を及ぼし、最悪の場合はむし歯や歯周病に巻き込むこともあります。さらに、親知らずがむし歯になった場合、治療器具が届きにくいため治療が困難で、再発のリスクが高いことから、治療よりも抜歯が選択されることが多いといわれています。また、痛みが繰り返される場合や、上下どちらか一方だけが生えている場合、噛み合わせが悪くなり歯並びや周囲の歯茎に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 抜いた方がいい親知らずを教えてください
- 親知らずは、生え方や状態によって抜歯が必要とされる場合があります。
- 痛みや腫れがある場合
すでに痛みや腫れがある場合、むし歯や歯周病、智歯周囲炎といった炎症が原因となっており、これらの症状を放置すると悪化するため、抜歯が推奨されます。 - 歯ブラシが届きにくい生え方をしている場合
親知らずが斜めや横向きに生えていたり、中途半端に埋まっていると、隣接する歯との間にプラークが溜まりやすく、むし歯や歯周病の原因となります。 - 横向きに生えて隣の歯を押している場合
健康な歯の根が溶ける”歯根吸収”が進行し、隣の歯が抜歯の対象になることもあります。 - 親知らずが歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼしている場合
歯並びが乱れることで全身の健康にまで影響を及ぼす可能性があります。特に、むし歯、歯肉炎、神経圧迫、膿が確認される場合は早めの抜歯が推奨されます。
- 痛みや腫れがある場合
- 抜かなくてもいい親知らずを教えてください
- 親知らずは、状態や機能に問題がない場合、無理に抜く必要はありません。
例えば、まっすぐ生えていて噛み合わせが良好で、歯磨きが問題なく行える場合は、ほかの奥歯と同様に機能しているため、抜歯の必要はありません。ただし、親知らずは奥に位置しているため、プラークが溜まりやすくむし歯や歯周病のリスクがあるため、日常的なケアが重要です。
親知らずがすべて歯茎や骨のなかに埋まっており、周囲の歯や歯茎に影響を及ぼす可能性が低い場合も、経過観察で問題ありません。
また、親知らずは将来的にブリッジの土台や移植用の歯として利用できる可能性があるため、健康で問題がない場合は温存する選択もあります。
抜歯の必要性は親知らずの位置や状態により異なるため、医師に相談し、適切な判断を仰ぐことが推奨されます。
親知らずは一般歯科で抜けない?
- 親知らずは一般歯科でも抜けますか?
- 親知らずの抜歯は、一般歯科でも対応可能とされています。ただし、抜歯が可能かどうかは親知らずの状態によります。例えば、親知らずがまっすぐに生えており、周囲に炎症がなく、ほかの歯と同じ条件で抜歯できる場合は、一般歯科での処置がよいでしょう。
一方、親知らずが歯茎や顎の骨に埋まっている、斜めや横向きに生えている、もしくは周囲の組織や神経に近接している場合は、外科的な処置が必要となるため、歯科口腔外科を紹介されることが多いようです。
また、親知らずが埋まっている場合は、レントゲンやCTで根の形や位置、周囲の構造を精査することが重要です。埋没の程度や患者さんの年齢、全身状態なども判断基準となります。
親知らずの抜歯が必要かどうか、自身では判断しにくい場合が多いといわれているため、まずはかかりつけの歯科医院に相談しましょう。
- 親知らずの抜歯を口腔外科で行った方がよい症例を教えてください
- 親知らずの抜歯は、生え方や位置によっては難しい治療や特殊な設備が必要となるため、口腔外科での処置が推奨される場合があります。
例えば、親知らずが横向きや斜めに埋まっている場合、通常の方法では抜歯が困難であり、骨を削る処置が必要になることが多いとされています。
また、顎のなかには重要な神経や血管が通っており、特に下顎では親知らずが太い下歯槽神経に近接しているケースが多いとされ、神経麻痺や感覚異常を防ぐために慎重な対応が求められます。
さらに、親知らずの抜歯後は出血が生じるリスクがあり、特に夜間に出血が止まらない場合、一般歯科では対応が難しいことがあります。
その他、歯肉や骨を切開・削除する処置が必要な場合や、親知らずの位置や根の形状が複雑な場合は、歯科用CTを用いた精密な診断が必要なため、口腔外科での抜歯がよいでしょう。
親知らずの抜歯について
- 親知らずを抜く時期はいつがいいですか?
- 親知らずを抜くタイミングは、20代から30代の若い時期が理想的とされています。その理由として、若い頃は顎の骨がやわらかく、抜歯が容易で侵襲が少ないことが挙げられます。特に、親知らずが生え始めた20歳前後は、歯根が未完成のため、神経損傷のリスクが低く、抜歯による腫れや痛みも回復が早い傾向にあります。
一方、親知らずの抜歯を遅らせると、骨が硬くなることで処置が難しくなり、抜歯後のダメージやリスクが増大する場合があります。また、むし歯や歯周病を発症すると炎症の影響で麻酔が効きにくくなり、腫れが引くまで治療を遅らせなければならないケースもあります。
ただし、親知らずがまっすぐ生えていて上下で噛み合い、特に問題を引き起こしていない場合は、抜歯の必要がないこともあります。親知らずの状態に応じて適切なタイミングを判断するため、歯科医師への相談が大切です。
- 親知らずの抜歯にかかる時間を教えてください
- 親知らずの抜歯にかかる時間は、状態によって大きく異なります。正常に生えている場合は、一般歯科で15〜20分程度で抜歯が可能といわれています。
しかし、親知らずが骨のなかに埋まっていたり、歯の根が複雑な形をしている場合は、時間が長くなることがあります。特に難易度の高いケースでは、30分〜1時間以上かかることもあります。
- 親知らずを抜いた後のリスクを教えてください
- 親知らずの抜歯後には、いくつかのリスクが生じる可能性があります。
痛みや腫れはどちらも2〜3日がピークとなり、1週間程続く場合があります。
また、神経に近い位置での抜歯では、口角や唇、舌に知覚や運動の麻痺が生じることがあります。この麻痺は数ヶ月で回復することが多いといわれていますが、長引くケースもあります。抜歯後に皮膚にあざが出ることや、腫れが1週間以上続く場合もあります。口腔内が不衛生な場合には腫れが悪化したり、治癒が遅れることもあるため、丁寧な歯磨きとうがいが重要です。これらのリスクを軽減するためにも、適切な術後ケアと歯科医師の指示に従うことが大切です。
編集部まとめ
ここまで親知らずは一般歯科で抜けないのかについてお伝えしてきました。
親知らずは一般歯科で抜けないのかについて、要点をまとめると以下のとおりです。
- 親知らずは“智歯”や“第三大臼歯”とも呼ばれる上下左右の奥に生える永久歯で、10代後半から20代前半に生えてくることが多いとされている。進化とともに退化傾向にあり、生え方次第では隣の歯に悪影響を及ぼすリスクがある
- 親知らずは、斜めや横向きに生えている場合、歯磨きが難しく汚れが溜まりやすく、細菌が増殖して炎症や腫れを引き起こすリスクにつながるため、抜歯が推奨される場合がある
- 親知らずは、まっすぐ生えて炎症がなければ一般歯科で抜歯することができるが、斜めや横向きに生えている場合や埋没している場合は外科処置が必要で、口腔外科を紹介されることがある
親知らずの状態によって抜歯の必要性や処置方法は異なります。まずは歯科医師に相談し、自身の親知らずの状態を把握することが大切です。適切な判断で健康な口腔環境を維持しましょう。
本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。